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国際カルテルの経済的インパクト 第1回

規制当局による制裁金決定プロセスと合理的解決のための留意点

近年、国際カルテル事案が複雑化、大規模化する中、当事者の企業や弁護士にとって、制裁金(我が国では課徴金)や損害が過大とならないよう、合理的な解決を目指すための留意点を解説する。 (Business Law Journal 2016年8月号掲載)

我が国企業にとって、国際カルテル事件は、レピュテーションや幹部人材への刑事罰だけではなく、当局からの制裁金支払や民事訴訟における損害額など、企業経営にとり多大な経済的インパクトを伴う。近年の事案が複雑化、大規模化する中、当事者の企業や弁護士にとって、制裁金(我が国では課徴金)や損害が過大とならないよう、合理的な解決を目指すにはどのような点に留意すべきか、国際カルテル事案における専門家として活躍するデロイトトーマツ ファイナンシャル アドバイザリーの池谷誠と岸谷暁が対談を行った。

 

カルテル制裁金は裁量制がグローバルスタンダード

池谷:近年、報道等で明らかなように、自動車部品、コンデンサ、海運等、我が国企業がカルテルの容疑で当局からの調査を受ける事例が連続しましたが、これら事案の多くは最近になって調査プロセスが完了し、刑事・行政処分として多額の制裁金や罰金が課されています。当局、特に欧米の当局による制裁金はどのように決定されるのでしょうか?

岸谷:欧米諸国においては、カルテルなどの調査に対する企業の協力度合いによって、制裁金額を増減させる裁量が規制当局に大きく認められています。例えば、EU当局は制裁金計算についてのガイドラインを2006年に制定しています。制裁金は、カルテル対象の直近取引額に重大性を加味した係数(最大30%)を乗じ、さらに違反年数を乗じて基礎額を出します。価格設定や市場分割といった悪質なカルテルについてはエントリー・フィー(15%~25%)を基礎額に加算し、最後に後述する支払い能力の観点を含む増額・減額事由を調整して制裁金を算定します。当局は、増額、減額事由の有無、どのような点が減額事由になるのかついて広範な裁量を有しています。米国でも同様に、米国市場が影響を受けた取引額をベースとする「基礎額」を算定し、過去の犯罪歴や調査への協力度合い等を勘案した有責性スコアによって基礎額を調整しますが、調整のサジ加減は相当程度、担当官に裁量の余地があるといえます。対照的に、我が国では課徴金の水準は高くはなく、当局による増額・減額の調整余地もありませんが、2016年2月、事業者の調査への協力・非協力の程度等を勘案して、当局の裁量により課徴金額を決定する仕組みの導入を検討するための研究会が公正取引委員会に設置されました。

  • 制裁金の基礎額推定は専門家の活用が有効
  • 支払能力に基づく減額の可能性
  • カルテル制裁金交渉における専門家の役割


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(Business Law Journal 2016年8月号掲載)

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