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業種別 税務調査の対策ポイント
【第7回】その他サービス業

『旬刊経理情報』 2016年11月20日号

第7回目はその他サービス業を取り上げ、一般調査で重点的に調査されるポイントと移転価格調査への対応を検討するとともに、業種問わず経理担当者として気をつけておきたいことを紹介する。(中央経済社『旬刊 経理情報』 2016年11月20日号)

はじめに

 
本連載では、税務調査において指摘されやすい項目を業種別にみていく。税務調査手法そのものは業種が違えど変わるものではないが、やはり、業種固有の論点があり、調査において指摘されやすい項目がある。本連載では、業種ごとによくある否認事例を取り上げていくことにより、その対処法を考えていきたい。あわせて、年々重要度が増している移転価格調査についても同様に、対処法を考える材料を提供できればと考えている。

第7回目はその他サービス業を取り上げ、一般調査で重点的に調査されるポイントと移転価格調査への対応を検討するとともに、業種問わず経理担当者として気をつけておきたいことを紹介する。

その他サービス業に対する一般法人税調査

その他サービス業の射程は広いが、ここでは最近増えている専門的サービスを提供するデザイン業やコンサルタント業の場合を取り上げてみたい。

コンサルタント業の特徴としては、原価に占める人件費の割合が高いことと、収益の計上基準が会社によってまちまちであり、さらに複雑な場合が多いことである。調査も必然的に売上および原価項目に重点が置かれることになる。

売上の調査

成果物を引き渡すこととなっている契約の場合は請負契約となり、納品が完了して初めて売上が計上される。

一方、アドバイスを提供するような、いわゆるコンサル契約の場合は業務委託契約となり、提供した役務に応じた売上の計上が必要となる。この売上の集計・計上方法はまちまちであるが、工事進行基準に準じた方法で計上している会社が多い。業務委託契約の場合は、売上見込金額が確定していないことも多く、また総原価の工数が流動的なことも多い。したがって、売上金額の計上に際して会社側担当者の主観の入る余地が多々あるため、税務調査ではよく問題にされるポイントである。

労務費の調査

(1) 作業コードの付替えによる利益調整成

案件ごとに利益率に差が出るため、会社側担当者としては、赤字案件を出さないために、利益率のよい案件の作業コードを使って赤字見込案件の作業を行いがちである。そこに租税回避の意図はまったくないとしても、期末をまたぐと仕掛計上漏れとなる案件が出るおそれがあり、また、仮装取引として重加算税対象となるおそれもあるので、要注意である(製番付替えによる仕掛品の過少計上の事例は、本連載第5回を参照されたい)。

(2) 源泉所得税

コンサルタント業界では、有能な専門職のコンサルタントと顧問契約を締結して活動してもらうこともよくあり、顧問に支払う報酬に対する源泉所得税が問題となることがある。事業所得として報酬を支払っている場合に、給与所得としての源泉徴収が必要ではないかと指摘されることがある。給与所得と認定されると乙欄適用(扶養控除申告書を提出していないため)がなされるため、源泉税率も高いものとなり、注意が必要である。

給与所得と事業所得を区分する指標1はいくつかあり、その総合判断で決定されるものであるが、主要な指標としては、次のようなものが挙げられる。

  • 代替性・・・業務遂行にあたり、本人の自由な判断で補助者の使用が可能であり、当該補助者に支払う報酬を本人が負担しているような場合には、事業所得となる可能性が高い。逆に代替性がない場合には、給与所得の可能性が高い。
  • 業務遂行上の指揮監督・・・業務遂行にあたり、監督者からの指揮監督がないか弱いと認められる場合には、事業所得の可能性が高く、逆に指揮監督が強いと認められる場合には、給与所得の可能性が高い。
  • 危険負担・・・業務遂行上で発生する危険または損失を本人が負担していない場合には、給与所得の可能性が高く、本人が専ら負担している場合には、事業所得の可能性が高い。
  • 費用負担・・・業務上必要な機械設備等の生産手段を支給されている場合には、給与所得とみなされる可能性が高く、本人が所有している場合には、事業所得の可能性が高い。


1  昭和56年4月24日最高裁第二小法廷判決では、給与所得を「雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付」、事業所得を「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」と定義している。
 

その他サービス業に対する移転価格調査

一般の法人税調査においても指摘事項となることが多い移転価格関連事項として、親子間貸付金利率と価格調整金について解説する。

貸付金利率

国外関連者に対する貸付金利率については、一般の法人税調査においても「簡易な移転価格調査」という形で調査対象になる。「簡易」とは、事実認定が容易で、簡易な算定方法も通達で定められているため、本格的な移転価格調査に至ることなく調査することができることである。

算定方法に関する指針として、国税庁の移転価格事務運営要領3-7がある。それによれば、金銭の貸付を業としない会社の独立企業間貸付金利率は、次の3つの利率を(1)、(2)、(3)の順序で適用して算定することとされている。

(1) 借手が独立の金融機関等から通貨・時期・期間が同様の状況のもとで借りたとした場合の利率
(2) 前記(1)の情報が入手できない場合、貸手が独立の金融機関等から通貨・時期・期間が同様の状況のもとで借りたとした場合の利率
(3) 前記(2)の情報も入手できない場合、通貨・時期・期間が同様の状況のもとで国債等により運用した場合の利率


独立の第三者から資金を借りる場合には借手の信用力を加味した利率になるはずだから、前記(1)が独立企業原則を最も忠実に反映しているといえる。しかし、海外子会社が仮に銀行から資金を借りた場合の利率に関する情報が入手できるケースは少ないと思われ、前記(1)の方法が使えるケースは限定的であろう。実際に適用される例が多いのは、前記(2)の貸手の銀行調達利率であろう。親会社に銀行との取引があれば、子会社の信用力に応じたスプレッドを教えてもらえる場合も少なくないからである。

移転価格調査でよく問題になる例は、外貨建てで貸しているにもかかわらず低い円資金調達利率をそのまま適用している結果、貸付金利率が独立企業間貸付金利率に比べて低過ぎる場合である。外貨建てで貸すのであれば、その通貨の金利に変換しなければならない。通貨の同一性も比較可能性の要素だからである。円金利を外貨の金利に変換するときには、同外貨の期間に応じたレートを用いる。たとえば、バーツ建てで1年満期で貸し、前記(2)の貸手の調達コストによる場合、独立企業間貸付金利率は、1年物バーツ金利プラス貸手の信用力に応じたスプレッドとして計算される。

なお、前記事務運営要領は、貸手の調達利率に関する情報も入手できない場合には、最後の手段として貸付資金を日本の国債等で運用したとした場合の利率でもよいとしている。あくまでも貸手の調達利率が入手不可能な場合の特例的取扱いであるから、取引銀行に聞いてみる努力はしたうえで入手できない場合でないと認められない可能性がある点に、注意する必要がある。

〇 保証料

ローン金利に関連して保証料の独立企業間対価を請求すべきか、請求すべきとして保証料率はどのように算定すればよいかという問題がある。

わが国の移転価格関連の法令・通達には国外関連者に対する保証を行った場合に独立企業間保証料を請求すべきかどうかという点について特段の指針は示されていない。しかし、一般論としては、独立企業間で保証をした場合には保証料を請求するのが通例であることから、関連者間においても請求すべきものと考えられており、実際に移転価格調査において、子会社債務に係るキープウェル契約に関して徴収していた保証料が、独立企業間価格に満たないとして更正された例がある。

保証料率の算定方法についても特段の指針は存在しないが、実務では、保証提供者の信用格付けを基準として、格付等級の1ノッチまたは2ノッチ程度の差に相当する利率の低下分の約50%を請求することが多い。

保証料については公的な指針はない状態であるが、課税の実例もあることから、不意の課税を避けるために、請求の要否の判断を含めて、移転価格ポリシーの対象取引の1つとして考え方を整理したうえで、文書化しておくことが望ましい。

価格調整金

移転価格を遡及して調整する方法の1つとして年度末調整がある。たとえば、国外関連者に対して商品を輸出している場合、取引単位営業利益法(TNMM)を子会社の利益率に適用する方法として選択しているとする。価格調整金による年度末調整とは、なんらかの事情で結果的に海外子会社の利益率がTNMMの利益幅の下(または上)に外れてしまった場合に、価格調整金を一括送金する(または返金を受ける)ことで、子会社の利益率を幅のなかに入れてしまうという移転価格の世界に特有のしくみである。わが国では、国税庁の移転価格事務運営要領3-20に価格調整金の支払を寄附金とは判断しない要件に関する指針が示されている。(図表1)

(図表1) 移転価格事務運営要領3-20

(価格調整金等がある場合の留意事項)

法人が価格調整金等の名目で、すでに行われた国外関連取引に係る対価の額を事後に変更している場合には、当該変更が合理的な理由に基づく取引価格の修正に該当するものかどうかを検討する。

当該変更が国外関連者に対する金銭の支払または費用等の計上(以下、「支払等」という)により行われている場合には、当該支払等に係る理由、事前の取決めの内容、算定の方法および計算根拠、当該支払等を決定した日、当該支払等をした日等を総合的に勘案して検討し、当該支払等が合理的な理由に基づくものと認められるときは、取引価格の修正が行われたものとして取り扱う。

なお、当該支払等が合理的な理由に基づくものと認められない場合には、当該支払等が措置法66条の4第3項の規定の適用を受けるものであるか等について検討する。


移転価格税制の適用に当たっての参考事例集の事例26には、価格調整金が認められる場合として2つのパターンが示されている。1つは独立第三者でも遡及して価格調整が行われる場合に同様の価格改定を行う場合である。もう1つは当事者間の契約で各事業年度の利益率を取り決めている場合、実績の利益率をあらかじめ定めた利益率に合わせるために行う調整である。

後者の場合、当該事業年度の開始前までに覚書を交わすなどして、価格調整金の支払条件を明確に定めておく必要がある。覚書の締結が事業年度開始に間に合わず、実際には事業年度開始後にずれ込んだ場合には「事前の取決めによる」という要件を満たさないことになるので、注意が必要である。

また、寄附金にはならないが移転価格の問題として移転価格調査の対象にはなるということである点も注意が必要である。

なお、価格調整金を認める国と認めない国があるので注意する必要がある。たとえば、中国は理由が明確でない送金として、送金を受けることも認めていないようである。支払う場合も理由がないとして認められないようである。また、遡及の価格改定は認めるが、あくまでも個々のインボイス価格と紐付きの価格改定であることが必要とする国もある。

価格調整金は移転価格管理上便利なツールであるが、取引相手国によっては使えない場合もあり、わが国が支払側である場合には、寄附金とならない要件を充足しているかどうかが調査で厳しくチェックされるので、くれぐれも慎重に準備したうえで行う必要がある。
 

業種を問わず、経理担当者として気をつけておきたい10カ条

これまで全7回にわたり業種別で税務調査の狙われやすい点と対処法について述べてきた。

業種によって調査の重点ポイントが異なることはもちろんであるが、業種に関係なく経理担当者として調査の際に気をつけておきたい点を述べておきたい。

【気をつけておきたいこと】その1

調査の連絡があってからでは間に合わないため、日頃から資料の保管に気をつけ、整理しておくこと


取締役会に提出した資料や稟議書に添付した資料等は調査の際に提出を求められる可能性が高い。その保管がないと調査官に変に勘ぐられるおそれもあるため、「役員に説明したら終わり」ではなく、きちんと保管しておくことが重要である。また、経理担当者としては、調査官目線で資料の確認をしておきたいものである。

【気をつけておきたいこと】その2

調査官がロッカー、金庫等も確認する可能性のあることを念頭に置いておくこと


調査の進展によっては現況調査が行われる可能性もあるので、その時ばたばたしなくていいように、机の中や、書類の保管ロッカー、金庫の中などを常日頃から整頓しておくことが重要である。調査前には整理状況を再度確認しておくことが望ましい。

【気をつけておきたいこと】その3

曖昧な回答、推測による答弁は後のトラブルのもととなるため、調査官に質問された時は、確認してから答えること


調査官から質問を受けた時には、すぐ答えなければならないと考えて、不確かなまま答えてしまうことがありがちである。しかし、のちにそれが間違いだったことがわかると、調査官との間でトラブルになるおそれがあるため、不確かなことは必ず確認してから回答するようにしたい。調査官の質問に即答する必要はなく、時間をおいてでも正確な回答をすることが重要である。

【気をつけておきたいこと】その4

営業担当者等のヒアリングに際しては、経理担当者も必ず同席して、調査の状況を把握しておくと同時に、不用意な発言がないように気をつけること


調査官も経理担当者から間接的に聞くよりも、直接聞いたほうが正確な話が聞けるので、関係部門の担当者に対するヒアリングを依頼されることがよくある。その際、気をつけなければいけないのは、経理部門以外の人は自分が知っていることをなんでも話してしまいがちだということである。経理担当者は調査官が何を調べているのか、調査官に積極的に説明すべき事柄かどうかの判断ができるが、経理部門以外の者はそのような観点でヒアリングに臨まないので、ややもすると聞かれていないことまで話をして、調査官に新たな関心を持たれてしまうことがある。

望ましいのは、関係部門の担当者に対するヒアリングを要請された場合には、事前に経理部門のほうから関係部門の担当者に調査官から聞かれるであろうことを説明して、関係部門の担当者の回答を確認しておくことである。関係部門の担当者にはくれぐれも聞かれたことだけを答えるように気をつけてもらうことが重要である。そして、調査官のインタビューの際には経理担当者も必ず同席して、どんな質問と回答がなされたかを確認するとともに、関係部門の担当者の回答がぶれないように気をつけることが必要である。

【気をつけておきたいこと】その5

調査官から資料の提出を求められた場合には、必ず提出前に内容をチェックして提出すること


調査官から事前に依頼された資料も含めて、さまざまな資料の提出を依頼されることになるが、提出前には、必ずその中身をチェックしておくことが重要である。数字の合わない資料を提出することは調査官を混乱させるだけでなく、会社の提出する資料に対する信頼も損なうことになる。

【気をつけておきたいこと】その6

資料のコピーを渡す場合には、控えを取っておくこと


理由は2つある。1つは、調査官が何を調べているか、何に関心を持っているかが十分把握できないことである。控えを取っていれば、そのコピーを確認することにより、調査官の関心を推測することができる。もう1つは、後日、調査官から税務上の問題点を指摘されたときに控えを取っていないと、調査官がどの資料を根拠に話しているかがわからなくなるおそれがあるためである。

【気をつけておきたいこと】その7

調査官と会社間の認識相違や会社側担当者の記憶違いを避けることができ、また、次回調査への申送り書類とすることができるため、調査議事録(日報)を記しておくこと


調査議事録を記しておくと、調査官がどこに関心を持っているか、調査官にどう答えたかを整理することができ、調査官の指摘に対しても的確に対応することができるので重要である。

また、もう1つの目的は次回調査のためである。調査の連絡があり、前回調査の際の状況をみてみようとすると、修正申告書しか残っていなかった、というケースが結構多い。経理担当者も変わっている可能性があり、前回の調査で指摘されたけど指導に留めてもらった事項など、事情が一切わからないことは案外多い。しかし、調査官は前回調査からの申送り事項でその内容を重点調査項目にしている可能性がある。事前にこの対応ができるかどうかの違いは大きい。

【気をつけておきたいこと】その8

調査官と良好な人間関係を築くことがよい結果のために重要であることに留意すること


調査対応と直接関係なさそうだが、これは重要である。調査官と信頼関係を持てるようになれば、調査官も会社の説明を信用するようになり、必要以上に執拗な調査は行わなくなるものである。

【気をつけておきたいこと】その9

よい結果のために誠意ある対応をすること、調査に協力している姿勢をみせること


調査官に会社が精一杯調査に協力している、包み隠さずすべてみせていると思われることもよい調査結果のために重要である。調査官は会社が何か隠していると思っている場合にはなかなか調査をやめないものである。これ以上やっても重加算税などの追及ができないと判断したら、調査の手を緩めるものである。

【気をつけておきたいこと】その10

納得できる指摘事項は素直に応じ、納得できないことは応じないこと


納得できないことは調査官と議論すればよく、そのことは決して税務当局側の会社に対する評価を下げることにはならない。これが一番重要である。調査官の指摘に何でも反論することはあまり得策ではない。会社が、調査官の指摘に納得できるのなら、無用の反論はしないほうが賢明である。

一方で、納得できない事柄まで、修正申告をする必要はないので、調査官ととことん議論すればよい。そして、税務当局側と最後まで合意点がみつけ出せなかったときは、更正処分をしてもらい、不服申立てをすればいい。不服申立てをしたからといって、次回の調査が厳しくなるわけでもなく、むしろ、「この会社は考え方がしっかりしているから、筋の通った課税をしなければだめだ」と思われ、ある意味、会社の評価を上げることにもなる。

もちろん、種々の政治判断が働くことも考えられるので、そのうえで、会社が納得して修正申告を提出することはあるだろうが、納得しないまま、調査官に指摘されるがままに修正申告を出すのはやめたほうがよい。

(図表2) 税務調査対応心得10カ条

1

日頃から資料の保管に気をつけ、整理しておくこと。調査の連絡があってからでは間に合わない

調査官がロッカー、金庫等も確認する可能性のあることを念頭に置いておくこと

調査官に質問された時は、確認してから答えること。曖昧な回答、推測による答弁はあとでのトラブルのもとになる

営業担当者等のヒアリングに際して、経理担当者も必ず同席して、調査の状況を把握しておくと同時に、不用意な発言がないように気をつけること

調査官から資料の提出を求められた場合には、必ず提出前に内容をチェックして提出すること(数字の合わないような資料は誤解のもとになる)

資料のコピーを渡す場合には、控えを取っておくこと

調査議事録(日報)を記しておくこと。調査官と 会社の間の認識相違や会社側担当者の記憶違いを避けることができ、また、次回調査への申送り書類とすることができる

調査官と良好な人間関係を築くことがよい結果のために重要であることに留意すること

よい結果のためにも、誠意ある対応をすること。調査に協力している姿勢をみせること

10 

納得できる指摘事項は素直に応じ、納得できないことは応じないこと。納得できないことは調査官と議論すればよく、そのことは決して国税サイドの会社に対する評価を下げることにはならない

 
 
 
 
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