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年金資産消失とSSAE16への影響

年金資産を守る内部統制

2012年2月、投資顧問会社が受託していた年金資産のうち1,000億円をはるかに超える資産が消失していることが明るみになり、改めて資産運用会社の内部統制への関心が喚起された。

2012年2月、投資顧問会社が受託していた年金資産のうち1,000億円をはるかに超える資産が消失していることが明るみになり、改めて資産運用会社の内部統制への関心が喚起された。
内部統制の適切性を評価する基準のひとつとしてSSAE16、ISAE3402および86号(以下総称して「SSAE16等」)の保証報告書に注目が集まり、「もし当該投資顧問会社がSSAE16等の検証を受けていれば、このような事件は未然に防止できたのか、またはより早期に発見できたのか」といった議論が交わされた。
もとよりSSAE16等は、受託会社の内部統制のデザインの適切性とその運用の有効性を評価するものであり、不正の発見が主題ではない。しかし、当該投資顧問会社のような不正を働きながら、その一方でSSAE16等の検証に耐えるだけの内部統制を構築・運用することは相当に難しいことと思われるので、もし当該投資顧問会社がSSAE16等の検証を受けていれば、こうした事件を起こすことはできなかった可能性が高い。換言すれば、SSAE16等の検証を受けている投資顧問会社であれば、こうした不正を起こす余地は相当程度限られるものと考え易いだろう。
こうした一定の効果を念頭に、2013年7月には「金融商品取引業等に関する内閣府令」が改正され、投資顧問会社はその発行する契約締結前交付書面や運用報告書等において、SSAE16等を含む外部監査の状況を記載することが義務付けられた。本来、SSAE16等の保証報告書は委託会社及びその監査人に対する情報提供ツールであり、その取得状況を広く開示するものではないが、年金基金等の投資家にとって非常に重要な情報として位置付けられたものと解される。
年金基金等がその資金の委託を検討するうえで、投資顧問会社がSSAE16等の検証を受けているか否かは、今後も大きな判断基準のひとつとして認識されるだろう。 

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