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インパクトボンドの本質的意義および本格的なスキームの導入に向けて

社会変革のためのIBの本質理解と活用ロードマップ

少子高齢化・人口減少に伴い財政が逼迫するなか、効果的な事業の創造とそれを実施するための効率的な財源の使用、それらを通じ施策効果の最大化を図ることが急務となっています。そこで、インパクトボンドという社会変革を起こすための官民連携のパートナーシップが注目されています。本レポートでは、同スキームの本質的意義を明確にし活用意義の理解を促すとともに、日本文脈における活用、発展に向けたロードマップを提示します。

概要:新しい官民連携パートナーシップ「インパクトボンド」とは

自治体を取り巻く課題は、日々複雑さや深刻さを増しています。経済・健康衛生・環境問題が複雑に絡んだ地域もしくは国全体の課題など個別部署や特定地域内だけでは対応できないような“広域連携が必要な社会課題”や、人口減少・高齢化の結果、公共サービスへのリーチが難しくなりサービスの選択肢も限られてくる一方で、質の高いウェルビーングへの個別ニーズの増加による“多様で質の高いウェルビーイングの希求”など、既存の方法では太刀打ちできない社会課題やニーズに直面しています。

 

そこで、これら自治体の課題に対し、民間団体のノウハウを活かした部署横断的なサービスの提供や成果連動型委託契約により、ステークホルダーでコスト・ベネフィットを共有することで、効果的な解決策を導くアプローチが世界的に発展しています。

社会課題・地域課題の解決を図ることを目的に、民間事業者が投資家等から調達した資金で行政サービスを提供し、行政が事業成果に応じて成果を支払う仕組みをインパクトボンドと呼びます。通常、インパクトボンド(Impact Bond、以下IB)は成果連動型委託契約の一つとして位置付けられますが、そのうち、民間の資金提供者がスキームに参加している場合を指します。

同スキーム活用上の重要な点は、資金提供者からインパクト創出に十分な資金を調達すること、つまり、それだけ意義のある、しかし革新的で成果創出の不確定要素がある事業を、民間の資金提供者にリスク移転して実施することにあります。

 

IBは2010年に英国で実施されて以降、世界に拡散し、2021年には276件、745百万USD規模に急成長しています。また、IBが活用されている政策領域は就労支援、家族支援などの社会課題から環境課題にまで広がりを見せています。

 

<図1>

インパクトボンドの本質的意義および本格的なスキームの導入に向けて (2.7MB)

財政が逼迫している状況下で成果の見えない非効率な公共サービスを改善し、より質の高いサービスを提供するために、IBを含む成果連動型の委託契約が着目されています。実際に、中央省庁の様々な成果連動型委託事業組成支援や助成金の提供により、令和3年度時点では100件もの事業が組成されたと言われています(うち、IBと認識されるものは18件程度)。しかし、財源を有効的に活用し、民間のノウハウを通じて社会課題を解決しようとするために実施された事例の多くは、実証政策領域が狭く、短期的で、事業規模が比較的小さい傾向にあります。

加えて、これまでのIBの導入上の課題として、硬直的なIBの考え方やプレイヤーのキャパシティの限界、視野狭窄的なIBの活用など様々な課題が表面化しています。

<図2>

上記を踏まえ日本のPFS/IBの活用状況の現状を評価すると、量重視のスキーム自体の実証を行うフェーズ1に位置づけられます。このフェーズ1では、社会課題の解決を目指す一方で、主としてIBスキーム自体の導入を実証的に行う目的が強く、IBの実施自体にどのような課題が存在するのかを事例創出を通じ発見してく段階です。

フェーズ1の成果としては、日本においてIBを活用とする場合、英国モデルやその価値観をそのまま輸入するだけでなく、IBの活用意義を理解し、日本の文脈に合わせてIBスキームやその考え方を発展させていく必要があるということが明確になったと言えます。次フェーズでは、日本文脈へとIBスキームを昇華させ、成功事例を1件でも創出していくことがが求められます。そこで、フェーズ2に向けて、再度IBがどのように活用されているか、どのようなプレーヤーが参加しているか、IBスキーム自体をどのように解釈しているかを整理することが必要です。

<図3>

本レポートでは、フェーズ2へ向かう準備として日本のIBの在り方を検討するにあたり、海外ではどのようなことが起きているか、これまでの進展を振り返りながら「IB定義の見直し」「ストラクチャーの変形」「IBの本質理解」の3つの観点でヒントを得ます。そして、それらを踏まえ、日本の文脈において今後どのように同スキームを活用し発展させていくべきかについて、アクションとそのロードマップを提示します。

全文はレポート(PDF)をご覧ください。

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