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デジタル広告で増加!?“今”問題視されている不正広告とは?
Media & Advertising Advisoryサービスコラム(1)
デジタル広告の拡大に伴い、不正広告の種類や被害額が増加しています。具体的にどのような不正広告があるのでしょうか?また不正広告に対してどのように取り組むべきでしょうか?Media & Advertising Advisoryサービスコラムの第1回では、この不正広告についてフォーカスを当て、仕組みや問題点だけではなく対応方法について事例を交えてご紹介します。
不正広告の背景
デジタル広告では不正広告の種類や被害額が増加傾向にあり、各種メディア等でも問題視されています。ユーザーが広告を閲覧できないにも関わらず効果をカウントされるビューアビリティ問題、広告主が意図せずアダルトコンテンツや暴力的なコンテンツを扱う媒体に掲載されることによるブランド毀損問題、ボット等により広告費用に対する成約件数や広告効果を不正に水増しするアドフラウド問題などがあります。今回のコラムでは、事例を交えて、不正広告の仕組み、問題点のほか、不正広告の分析、対応についてご紹介します。
不正広告の仕組み
不正広告の事例をご紹介します。
■広告流入と自然流入:
不正広告の仕組みをご紹介する前に、前提であるデジタル広告効果指標の軸となる「広告流入」と「自然流入」の定義をご説明します。
「広告流入」とは、デジタル広告のクリックをきっかけにサービス利用(インストール、DL登録〈ダウンロード登録〉、購買等)に到るユーザーの動きを指します。ウェブサイトやアプリケーションに掲出されるデジタル広告は、ユーザーによるサービス利用を目的に行われるケースが多く、その場合、広告によってサービス利用に至るユーザーの増加量がKPI(Key Performance Indicator)となります。
一方「自然流入」とは、広告をクリックせずに、友人からの勧め等がきっかけで、ユーザー自ら検索しサービス利用に至る動きを指します。オーガニック流入とも呼ばれます。
一般的にサービス利用者内で、「自然流入」のユーザーのアクティブ度合は「広告流入」ユーザーと比較して高くなる傾向にあります。
■不正広告の仕組み:
本記事で事例とする不正広告は、ユーザーの「自然流入」を「広告流入」としてカウントし、広告効果を水増しすることで、不正に広告費を課金します。具体的には、ウェブサイトやアプリケーションに潜む不正な広告が、ユーザーが広告をクリックしていないにもかかわらず、あたかもクリックしたかのように振る舞います。この挙動により、ユーザーのサービス利用が「広告流入」と見なされ、当該ユーザーがサービス利用に至った際、「その広告を踏んだことでサービス利用に至った」、という状態(広告効果)を偽装します。
この種の不正広告は、自然流入が多く見込まれるサービスの広告が被害の対象となるケースが多いのが特徴です(自然流入数が少ないと不正者側にメリットがないため)。
■不正広告による問題点:
不正広告における問題は様々ですが、本事例の不正における問題点は4つあります。
- 広告費の水増し
本来は広告費が課金されない自然流入に対して、広告費が不正に水増しされます。広告の出稿者にとっては、支払う必要のない広告費が発生します。企業にとっての宣伝広告費を圧迫することになるため、本来の広告活動の阻害に繋がります。 - 不正への対処の難しさ
デジタル広告配信は、アドネットワークが複雑に絡み合っているため、広告主や広告代理店、全ての広告掲載媒体まで把握するのは非常に困難です。また、広告配信を止めるとしても特定の配信を止めることはできず、一部のアドネットワーク全体(DSP〈Demand-Side Platform、効果の高い広告配信先を自動的に選択するシステム〉事業者などの単位)で広告配信を停止しなくてはならないため、大規模な広告活動の見直しが必要となります。 - 不正の把握の難しさ
不正広告による広告効果は、一見すると問題視するほどの異常値ではないため、不正に気付かず素通りしてしまう可能性が高いです。 - 広告媒体の不適切な評価
不正広告が掲載されている媒体が、広告効果が高い媒体であると判断されることで、継続的に被害が発生するおそれがあります。不正広告が掲載されているサイト経由のユーザーは、本来は自然流入が中心となっているため、他の広告媒体より効果が高い媒体となります。そのため、DSP によって、不正でない広告が掲載されている媒体でなく、不正広告が掲載された媒体が、より広告効果の高い配信先として誤って選択されます。
このように、不正広告は一見すると高い広告効果をもたらすこともあり、見過ごされてしまうケースが散見されます。しかし、その影響は自社のみならず、媒体そのものや広告業界にも及ぶため、問題視されています。
不正広告への対応
上記の不正に対して、この企業が行った対応についてご紹介します。
この企業は、自社が出稿しているデジタル広告に不正広告が含まれている可能性をもとに、広告出稿先の分析を行いました。最終的に、広告代理店との連携からDSP事業者への配信停止に至り、不正広告の悪影響を最小限に留めることに成功しました。
■仮説と分析: 不正広告の可能性を“不自然な数字の動き”から探る
不正広告の可能性を感じた広告担当者が最初に実施したのは、数十~数百に上る配信先から不正広告と思われる配信先の有無に関する調査でした。
不正広告からサービス利用に至ったユーザーの特徴について様々な仮説を立て、定量的に調査しうるものをピックアップし、以下の2つの仮説をもとに不自然な数字の動きがないかを優先的に検証しました。
- 仮説1: 不正広告を通じたサービス利用時の課金度合は、自然流入のユーザーと同程度であり広告流入より高い
- 仮説2: 不正広告をクリックしてからサービス利用開始に至るまでの時間が他広告と比較して、異常に長い
仮説1は、前述のとおり、自然流入の方が“自らの意思でサービス利用開始しているため比較的アクティブである”という事実が背景です。仮説2は、TV広告等が日々目に触れさせて想起させるのとは異なり、デジタル広告は広告をクリックするとそのままサービスに誘導されるという前提にたったものです。そのため、もし利用開始に至るのであれば、広告をクリックしてからせいぜい1日以内のサービス利用開始が正常な数字と言えます。
この2つの観点で実際のデータから不自然な数字の動きを検証した結果、不正広告と思われる特定の配信先が浮かび上がりました。
■対応: 広告代理店との連携で、DSP事業者の配信を停止
特定のDSP事業者のアドネットワークについて、広告代理店に調査を求めたところ、一部の配信先が海外サイトに流れていることから、不正広告の可能性が認められました。当該DSP事業者への配信を停止したところ、配信を停止した分の広告流入数がほぼそのまま自然流入数の増加分となっていました。一部の広告媒体において、前述の不正広告が判明したということになります。
■振り返り: 不正広告の被害拡大を現場で防ぐKSF (Key Success Factor)
本事例において特筆すべきはそのスピード感です。この種の不正広告の内容共有時から対応まで、わずか1日程度でした。迅速な対応を可能にした要因は、日々の効果検証体制の整備および広告代理店との密な連携でした。代理店より報告される広告データと、サービス利用に関するデータを連携、および分析を自動化することで、媒体別の効果指標をデイリーでチェック可能な体制が構築されていました。この体制により、広告主自らが効率的なマーケティングや不正検知に対して先手を取っての対応が可能となります。また、広告代理店と適切な信頼関係を構築することで、広告に関する追加データの共有依頼や配信先調査の協力依頼等を非常にスムーズに行うことが可能です。
多様化を続ける不正広告に日々対応し続けることは、現実的ではありません。しかし、以下のような対応策で、被害拡大を最小化できると考えられます(対応の仕方としてはPMP〈Private Market Place、メディアと広告主が限定される手法〉やホワイトリストの作成等の大規模な対応と、現場レベルで日々行う予防策がありますが、今回は現場でできる予防策を紹介します)。
- 定期的な広告レポートから、不自然な数字の動きを監視する
- 日々アンテナを張り、不正広告の最新情報を取り入れる
- 不正広告の兆候に関する情報を共有⇒調査⇒対応できる環境・体制を構築する
- 定期的に第三者による検証を実施する
本稿により、不正広告へご興味をお持ちいただき、貴社の広告効果向上のお役に立てれば幸いです。
次回は「海外での広告不正の対応事例」について解説します。
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