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内部通報制度

組織の法律違反等の早期発見及び未然防止に向け

社内に不正等の受付窓口を設けることにより法令違反を減らす仕組みが内部通報制度である。本制度の目的は、「組織の法律違反等の早期発見及び未然防止を行う」ことにある。企業リスクの低減に重要となる本制度について、現状の整備状況や導入するための前提や導入時のポイント等を説明する。

企業内部における情報伝達ルートの重要性

内部事情に通じた従業員や取引先等による告発が会社の不正を暴き、経営者を退陣に追い込んだ事件をニュース等で目にすることがあるだろう。このような告発が社内の浄化を進めたという面も否定できない。法令違反、社内規程(内規)違反等について、現場の事情に通じた関係者からの情報伝達ルートを企業内部に確保することが企業リスクを低減する上でも重要であると認識されている。このような内部制度を内部通報制度という。 

内部告発と内部通報制度

トーマツ企業リスク研究所では、従業員等の内部者が行政機関等の企業外部に会社の不正を告発することを内部告発として、内部通報を区別している。最近の不祥事の発見は内部告発が元になっている場合が多いと思われる。内部告発について、社会全体の利益を鑑み、内部告発者を法的に保護するための公益通報者保護制度の法整備が検討されている。個別法の分野でも、談合問題を解決するための1つの手法として独占禁止法を改正し、内部告発者を保護しようとする動きもある。英国、米国等の海外においては、すでに内部告発者保護のための法律の整備が行われている。 

内部通報制度の整備状況

社内に不正等の受付窓口を設けることにより法令違反を減らす仕組みが内部通報制度である。内部通報制度の目的は、「組織の法律違反等の早期発見及び未然防止を行う」ことにある。

内部通報制度の整備状況について、消費者庁が2012年度に事業者、労働者及び行政機関を対象として実施した調査結果を以下に示す。

 

【内部通報制度についての内閣府の調査結果】
(出所:2013年6月25日に消費者庁消費者制度課から発表された、2012年度に実施した公益通報者保護制度に関する実態調査の結果)

 

《法の認知度》
大企業(事業者)・・・94%
中小企業(事業者)・・・61%
大企業労働者・・・37%
中小企業労働者・・・20%
※中小企業(事業者)及び労働者で法の認知が進んでいない

 

《内部通報制度の導入割合》
大企業・・・97%
中小企業・・・40%
※中小企業で「内部通報制度」の導入が進んでいない
(内部通報制度:不正を知る従業員等からの通報を受け付け、通報者の保護を図りつつ、適切な調査、是正及び再発防止策を講じる事業社内の仕組みをいう。主に通報窓口の設置、内部規定の整備及びそれらの運用からなる。)

 

《内部通報窓口の設置場所》
社内外いずれにも設置・・・56%
社内にのみ設置・・・8%
その他・・・6%
(社外の通報受付窓口とは、事業者があらかじめ定めた弁護士事務所や通報受付専門会社等に設置された窓口をいう。)

 

内部通報制度は、情報のコミュニケーション・ルートの一つだが、一方、モニタリングの一種とも考えられる。モニタリングはマネジメントが期待しているリスク対策が有効に機能しているかを確認する重要なプロセスである。モニタリングは、上司が部下に対して営業目標を達成しているか、法令や内規等を遵守しているかをチェックする「日常的監視業務」、内部監査人が外部専門家の視点で業務の有効性や法令や内規等の遵守性をチェックする「独立評価業務」が代表的である。これらに続く3つ目のモニタリング手法が内部通報制度といえる。これら3つのモニタリング手法についてはそれぞれ長所、短所があるので、うまく組み合わせてお互いの長所、短所を補いながらモニタリングの効果を最大限発揮するように構築することがポイントとなる。

内部通報制度の導入の前提およびポイント

内部通報制度を導入するために不可欠な前提は以下のとおりである。

•経営者が法令遵守の重要性を認識し、従業員等に周知していること
•遵守すべきルールが明確になっていること
•各担当者が守るべきルールを認識していること

また内部通報制度の導入の秘訣は、次のとおりである。

•信頼される制度であること
•安心して利用できる制度であること

それらを踏まえ、内部通報制度導入の3原則を以下に示す。

(1) 織の公式な制度として、経営者が周知していること
(2) 通報された内容は適切に処理され、対応結果を通報者に伝えられること
(3) 通報者が適切に保護されること

内部告発者(公益通報者)の保護が法的にも明確におこなわれるようになると、企業内でこのような法令違反等を早期に発見し、自浄作用が働くように、内部通報制度を社内に整備し、企業リスクの低減に努めることが重要となると思われる。

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