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監査手続:実証手続

勘定科目における重要な虚偽記載の検出

実証手続(subsitantive test)とは会計監査における用語であり、勘定科目における重要な虚偽記載を検出する目的で行う検証のことをいう。会計監査では段階的なリスクアプローチ手法が採用されており、最終段階で実施される、各財務諸表項目に対する直接の検証のことを実証的検証と呼ぶ。実証手続の種類、進め方、詳細テストの種類等を含めて説明する。

実証手続とは

実証手続(subsitantive test)とは会計監査における用語であり、勘定科目における重要な虚偽記載を検出する目的で行う検証のことをいう。

会計監査ではリスクアプローチ手法が採用されており、1)固有リスク(下記※1)を評価する、2)内部統制の検証を実施し統制リスク(下記※2)を評価する、3)固有リスクと統制リスクの2つの要素を結合したリスクを重要な虚偽表示リスクして評価し(ただし、固有リスクと統制リスクを別々に評価することもできます。)、発見リスク(下記※3)とを勘案して各財務諸表項目に対する検証を行う、という流れで進められている。このうち3)の段階で実施される、各財務諸表項目に対する直接の検証のことを実証的検証と呼ぶ。

※1 固有リスク:関連する内部統制が存在しないとの仮定の上で、重要な虚偽記載が取引記録および財務諸表項目に生じる可能性をいう。経営環境ならびに取引記録および財務諸表項目が有する特性に影響を受ける。
※2 統制リスク:重要な虚偽記載が会社の内部統制によって防止または適時に発見されない可能性をいう。
※3 発見リスク:会社の内部統制によって防止または発見されなかった重要な虚偽記載が、(実証的)監査手続を実施してもなお発見されない可能性をいう。 

実証手続の種類

実証手続には大別して、分析的実証手続(subsitantive analytical procedure)と詳細テスト(test of details)の2つの種類がある。

 

分析的実証手続とは、期待値と帳簿金額とを比較し、帳簿金額に重要な虚偽記載がないことを確かめる検証手続のことである。また、詳細テストとは、母集団に重要な虚偽記載がないかを確認するために、母集団を構成する個々の項目の分類や金額などを確かめる検証手続のことである。

 

一般に、損益計算書項目を検証する場合には分析的実証手続が適しており、貸借対照表項目を検証する場合には詳細テストが効果的であると言える。

分析的実証手続の進め方

分析的実証手続は、次のような手順で実施される。
•関連する財務または非財務データに基づいて、帳簿金額に対する期待値を算出する。期待値の算出に使用するデータは、例えば公表された統計資料などのように、監査対象金額から独立し、合理的に妥当と認められるデータでなければならない。そうでない場合にはそのデータを別途検証することが必要となる。
•期待値と帳簿金額の差異で理由の説明なしに受け入れてよい最大値、すなわち「許容金額」を決定する。
•算出した期待値と帳簿金額を比較し、その差異につき調査が必要か否かを決定する。言い換えれば、許容金額を超える差異であるか否かを判定する。
•許容金額を超える差異について、追加の分析・質問、または、関連書類を調査し、その差異の理由を検討する。
•検証された勘定科目に関し重要な虚偽の表示があったかどうかの結果を評価する。 

詳細テストの種類

詳細テストの具体的な監査技術には、1)観察、2)確認、3)再計算、4)記録や文書の閲覧(またはその中の証憑突合)などがある。

1) 観察が効果的なのは、計上されている資産の実在性を検証する場合である。例えば棚卸資産の実在性を確かめる場合に、観察(立会)が実施される。
2) 確認は、外部の企業等から適切な証拠の入手が期待でき、かつこのような証拠を入手する方が、被監査対象企業で利用可能な立証資料を調査するよりも効率的である場合に実施される。確認は、一般に預金勘定や売掛金勘定などの実在性と期間帰属の妥当性を検証する場合に効果的と言えるが、状況によっては、ある種の負債(例えば、長期借入金)の網羅性を検証する場合にも実施される。
3) 再計算は、主に掛算の検証(例えば、実在数量×単価あるいは原価、作業時間×賃率)、会計記録の集計や未経過勘定(例えば、未払利息)などの検証に適しているが、データ量が膨大となる場合には監査ソフトウェアの使用を考慮する必要もある。
4) 記録や文書の閲覧(またはその中の証憑突合)は、最もポピュラーな監査技術であり、領収証、請求書、契約書、往復書簡等の立証文書との突合のことを指す。この場合、監査人が外部の企業等から直接入手した文書は、通常、被監査対象企業が外部の企業等から入手した文書よりは強力な証拠となる。同様に、被監査対象企業が外部の企業等から入手した文書は、被監査対象企業が独自に作成した文書よりは証拠力が高くなる。 

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