最新動向/市場予測

商社業界における「リスクアペタイト・フレームワーク」活用の可能性 

『企業リスク57号(2017年10月号)』掲載記事

有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター長の大山剛が、三井物産株式会社 リスクマネジメント部長 金澤赴弘 氏、カントリーリスク統括室長 首藤賢典 氏と、リスク管理の新たな考え方である「リスクアペタイト・フレームワーク」について意見を交わしました。金融機関のように規制業界ではない商社において、どのようにリスク情報の把握や発信による現場支援強化に取り組んでいるか、実効性のあるリスク管理を目指す同社の取組みについてインタビューを行いました。

対談記事サマリ(役職はインタビュー当時のものとなります)

2000年年代前半の商社業界におけるリスク定量化の動き

バブル経済以降、日本の金融危機、アジア危機なども経験した1990年代から2000年代前半の時代、大手商社においては金融機関と同様の取組みが行われていました。
商社業界においては、全社リスクの定量化手法が各社多様であり、監督当局のいる金融機関のように統一されていなかったことが特徴です。リスク定量化のニーズは銀行以上に強かったと言えるかもしれません。
三井物産株式会社においても金融機関の手法や、資本コスト、EVA(Economic Value Added)等の手法を参考にしながら、全社リスクを定量化する仕組みを構築し、業績評価等への活用を開始しました。

 

バックワード・ルッキングな手法の限界から、フォワード・ルッキングな手法の誕生へ

過去のデータに縛られ、戦略的に後手に回ってしまうといった問題が顕現化したのがリーマンショックだったと想定しています。
この時の反省から導入が進んだのが、新たなリスク管理の枠組みである「リスクアペタイト・フレームワーク」です。 

 

ストレスシナリオを中期経営計画に反映させる試み

中期経営計画の分類を改め、攻め筋の事業分野を7つ(3つの中核分野と4つの成長分野)特定し、徹底強化していく方針に変えました。そうした中、各分野におけるストレスシナリオやストレステストの作成を試みたが具体例に落とす際にハードルが高くなります。ステークホルダーの期待をどうくみ取るのか、それをどうリスクアペタイトに結びつけるのかが意外に難しい部分です。

 

リスクアペタイトの導入で、リスクコミュニケーションの活性化を図る

「リスクアペタイト」の考え方は、「成長のためにリスクを敢えて取ろう」というものであり、これまでは経営企画や業務推進の部門が担っていたことを、リスク管理部門が発信するようになります。ついては、「リスクアペタイト・フレームワーク」を導入することで、組織内におけるリスクコミュニケーションの活性化にもつながることが期待できます。また、社外取締役への説明責任の役割も果たすため、社内外の共通認識を持つことにも繋がります。「リスクアペタイト・フレームワーク」の導入はガバナンス改革にほぼ匹敵するようなことと言えます。

 

エクスポージャーの期間の違い

金融機関と商社では「アペタイト」に対するアプローチが若干異なります。
商社においては非常に長いスパンで事業投資をします。長い場合は事業期間が数十年になるため、その間に景気は循環し、為替も大幅な変動を繰り返し政権も交代する、そうした時代の大きなうねりを乗り越え、しっかりと継続できる様な長い視野で事業を展開していくことが求められます。ついては、「アペタイトがあるから、リスクを取ろう」というアプローチが容易にできるものではないと感じています。

 

有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター センター長 パートナー 大山 剛
有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター センター長 パートナー 大山 剛
三井物産株式会社 リスクマネジメント部長 金澤 赴弘 氏
三井物産株式会社 リスクマネジメント部長 金澤 赴弘 氏
三井物産株式会社 カントリーリスク統括室長 首藤 賢典 氏
三井物産株式会社 カントリーリスク統括室長 首藤 賢典 氏

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