最新動向/市場予測

緊急対談「2017年のリスク予測シナリオ」

有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター長 大山剛(写真左) × デロイト トーマツ 企業リスク研究所長 奥村裕司(写真右)

市場の予想に反し、共和党候補ドナルド・トランプ氏が次期米国大統領に選出された。不確実性が高い同氏の政策に、今後どのようなリスクが想定されるのだろうか。さらに、Brexit(英国のEU離脱)などによる影響も含め、2017年に予測されるリスクについて、有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター長の大山剛と、デロイト トーマツ 企業リスク研究所長の奥村裕司が意見を交わした。(2016年11月25日)

「トランプ相場」は巻き戻しが起こるリスクも高い

 対談の冒頭で奥村は、現在世界で懸念されるリスクとして「大統領選の結果が出た米国、Brexit(英国のEU離脱)をはじめとする欧州、ロシア、中国やエマージング諸国など、それぞれの地域でリスクが生じています。2017年の予測は難しいが、いくつかの方向性があると思われます。また、それによって日本経済と日本企業にどういった影響があるのかを議論したいです」と語った。

 大山はまず、米大統領選の結果と市場の反応について「大幅な円安・ドル高、株高に加え、長期金利も上昇しています。規制緩和や財政支出の拡大に対する期待だと思われますが、トランプ氏は不確実性が高く、楽観的と言わざるを得ません」と話す。「トランプ相場」の巻き戻しが起こる可能性も高いというのだ。

 トランプ氏は現在、閣僚の人選を急いでいる。2017年1月には新政権が発足するが、国務長官、司法長官、財務長官、連邦最高裁判事など主要人事がその成否の鍵を握る。

 奥村は「大統領選と同時に実施された議会選では、共和党が上下両院の過半数を維持した。大統領と議会とのねじれは解消しましたが、共和党主流派とは対立する政策も多く、うまくいくかどうかは不透明です。引き続きウォッチし続ける必要があります」と語る。

 大山はさらに、トランプ氏の大統領選出にともない、これまでのリスクシナリオに新たな要素が加わったと指摘する。それは、「インフレリスク」との事だ。

 これまで、グローバルなリスクとして注目されていたのはデフレの深刻化だった。Brexit、イタリアの金融システム危機、中国のバブル崩壊など、いずれもデフレが大きな要因の一つである。「トランプ氏の政策により財政支出を拡大すると、賃上げが起こり、金利も上昇します。ある程度であれば経済を活性化することができますが、これが行き過ぎるとかつてのように大幅なインフレになります」と大山は説明する。日本では円を売ってドルを買う動きが加速し、急速に円安が進むことになる。「もっとも怖いのは、円安、株安、インフレのトリプル安のリスクです」(大山)。

有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター長 大山剛

有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター長 大山剛

日本企業にとって、リスクは非連続的な成長をとげるチャンスにもなり得る

 トランプ次期米大統領選出のリスクは金融だけにとどまらない。

 奥村は「世界の貿易への影響も大きいでしょう。環太平洋経済連携協定(TPP)を脱退する一方で、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を行うと言っています。また、中国やメキシコからの輸入に高い関税をかけると公言しています」と話す。

 大山は、安全保障など地政学的なリスクも生じると語る。「米軍が撤退するかどうかはわかりませんが、プレゼンス(存在感)を下げると言っています。日本、韓国、東ヨーロッパなどのリスク不安は高まることになります」。ロシアや中国にとっては、比較的自由度の高い戦略や軍事的な攻勢を仕掛けることができるようになるわけだ。

 米国大統領選における大きなうねりが注目されているが、その発端と言えるのが英国のBrexitだった。最近になって、ロンドンの高等法院が離脱通知には議会の承認が必要との判決を下し、離脱の遅れが懸念されている。

 大山は「英国経済にマイナスの影響が出るのは必至です。実は私がBrexit以上に心配しているのはイタリアです」と語る。金融不安が再燃すれば、欧州の金融危機にもつながりかねないという。

 対談ではこのほか、エマージング諸国を支えてきたグローバル化の流れの変化や、欧州でポピュリズムが台頭する中で2017年には複数の国で大型選挙が行われること、秋に共産党大会を控える中国での習近平総書記(国家主席)の権限集中の課題など、さまざまなリスクについて議論が交わされた。

 大山は「日本企業にとって、ある意味で、ピンチはチャンス。リスクが高まるということは、非連続的な成長をとげるチャンスにもなり得ます。この変化に乗れるかどうかが、一つのポイントです」と結んだ。

デロイト トーマツ 企業リスク研究所長 奥村裕司

デロイト トーマツ 企業リスク研究所長 奥村裕司

本対談の詳細は『企業リスク第54号(2017年1月号)』に掲載予定

 

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