最新動向/市場予測

企業における実務的な新型ウイルス対応

新型コロナウイルス感染症が国内外に拡散するなか、企業の事業活動にも大きな影響を及ぼし始めている。パンデミック(世界的大流行)に対応した事業継続計画(BCP)を策定しているものの、その実効性について不安を抱く企業は少なくない。そこで本稿では、企業の実務的な対策を①初期対応、②社内外コミュニケーション、③自社対応の監視・見直し─の三つの観点に分けて解説する。

求められるパンデミック対策

2019年12月、新型コロナウイルス感染症による肺炎患者が中国の湖北省武漢市で最初に発見された。感染者数は日々増加し、3月10日時点で感染が確認された国は100カ国超、感染者数11万人超、死者数は4,000人弱となった。国際機関および各国当局は、海外渡航情報の発出、都市の封鎖、世界保健機関(WHO)の緊急委員会の招集といった対応を取っている。

WHOは1月30日、緊急事態を宣言し、2月28日には新型ウイルスの世界的な流行の危険性の評価を「高い」から「非常に高い」に引き上げ、各国に一層の対策を強く求めた。新型ウイルスのパンデミックへの脅威が高まりつつあるなか、各企業は自社のパンデミック対策を検討する必要に迫られており、実用的な対策を迅速に立案・実行していくことが求められている。

 

初期対応の重要ポイント

新型ウイルスの影響が出始めた初期段階における対応として、重要なポイントは大きく4点ある。第一に、脅威に対する組織への影響度を見極めることである。例えば販売、製造、外部委託等において中国に依存している組織は、企業活動を一定程度抑制する、製造・販売において本国への依存度を高める、または代替手段を検討するといった措置が考えられる。

第二に、既存のパンデミック対策および危機管理計画を見直すことである。インフルエンザの大流行に備えたパンデミック対策計画は多くの組織で策定されているが、新型ウイルスにおいてはさらなる対応が必要となる。例えばインフルエンザ対応の場合、本部あるいは支店等の特定拠点での発生を前提とするものが多いが、新型ウイルス対応においては、全拠点において発生した場合の対応を検討する必要がある。また最低2週間の隔離期間の必要性や、マスク・消毒薬といった公衆衛生上の備品調達がこれほど困難になることを前提としていなかった。パンデミック対策および危機管理計画が、その時々の状況・目的に適合しているかを適宜に確認することが不可欠である。

第三に、状況に合致した対応を行うことである。パンデミック対策計画は、感染拡大のレベルに応じて、組織として意味のある計画発動事由(または停止事由)でなければならない。さらに、事業継続手続きを見直し、自社の重要な従業員、機能および業務上の重要な連結点を十分に把握する必要がある。

第四のポイントは、グローバルレベルでの移動および出張規定を見直すことである。人が移動することによって人から人への感染範囲が拡大する。組織は、影響を受けているすべての地域に関する最新の出張・渡航指針を積極的に監視し、これに応じて出張・渡航規定等を見直す必要がある。第三者プロバイダー(例えば旅行会社)との連携や、出張者と迅速に連絡を取ることが重要となる。また、国内外の出張の原則停止等の措置を講じたり、出勤時における物理的な移動に付随するリスクを減らしたりするために、時差勤務やテレワーク等を活用した在宅勤務等の対策を行うことが求められる。

 

社内外コミュニケーション

早期対応と同時に、社内外のコミュニケーションを強化すべきである。まず、従業員と早期かつ頻繁にコミュニケーションを取るための体制構築が重要である。従業員は最新の動向について組織からの正確かつ信頼できる情報提供を期待する。組織は、従業員の安全を最優先することを宣言した上で、パンデミックへの意識向上を社内での通常業務内のコミュニケーションに組み込むべきである。また当局から発表された情報や解説を共有し、講じるべき措置や注意すべき症状について従業員を指導することが必要となる。

重要サプライヤーと密に連携することも重要である。企業は、自社の重要サプライヤーのパンデミック対策を把握するとともに、脅威が現実化した場合に備えなければならない。また、地域および当局との連携や、投資家や顧客等からの信頼を維持するために、それらステークホルダーとのコミュニケーションがカギとなる。

 

自社の対応の監視および見直し

早期対応を実施し、社内外のコミュニケーションを確立した後は、パンデミックを見据えた自社対応が適切かどうか検討し、必要に応じて体制を見直したい。第一に、先を見据えたシナリオプラン・テストを行う。広範にわたる従業員不在や地理的な閉鎖、サプライチェーンの混乱などを考慮しながら、業務上の混乱が将来的に企業の経営戦略にどのような影響を与えるか、ストレステストを含めたシナリオを策定し、影響を試算する。この場合、いくつかの想定されるイベントや影響を与える変数を念頭に、複数のシナリオと対応するアクションプランを策定することも重要である。

最新の情報や専門家からのアドバイスを継続的に入手するための体制構築も必要である。WHOおよび各国当局からは情報や助言が今後も継続的に提供され、脅威を追跡するための有益な指標となる疑わしい症例に関する最新の統計も発表される。これら情報の即時入手、企業活動への影響分析、経営陣への適時な提言を行える体制を整えることが必要である。

また、クライシス対応を常時積極的に見直すことが重要となる。新たな脅威に適応できる柔軟な計画、方針および手続きを定め、自社の人材、評判、戦略、および最終的な利益を守らなければならない。

デロイト トーマツ グループでは、現在、国内における更なる感染拡大防止の瀬戸際にあることに鑑み、社内外への感染被害抑止と当グループ法人各拠点に勤務する社職員並びにステークホルダーの皆様の安全確保の観点から、対応を講じています。詳細は以下のページをご覧ください。

新型コロナウイルスに対する当社の対応について

 

パンデミック対応に関するご相談、お問合せは以下からお進みください。

≫ お問合せフォーム ≪

お役に立ちましたか?