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ナレッジ
DX投資促進税制の概要と適用要件
DX投資促進税制とは
概要
- DX投資促進税制は令和3年度税制改正の目玉の一つであり、全社規模でデジタル技術を活用した企業変革に取組む企業への税務面での優遇措置である
- 1部門ではなく、経営層を巻き込み取締役会等で承認を得た全社規模でのDXへの取り組みが対象となる
- 恩恵を受けるには、デジタル要件(D要件)、企業変革要件(X要件)を満たした事業適応計画を提出して認定を受ける必要がある
- 計画が認定された後、23年3月31日までに取得し、事業の用に供した適格投資に対して3%、グループ外の他法人ともデータ連携する場合は5%の税額控除、もしくは30%の特別償却を受けることができる
※事業適応計画に記載されていれば良いわけではなく、計画認定後、遅くとも23年3月31日までに事業の用に供する必要があることに注意
金額基準/控除額:
- 投資額下限は連結会計ベースの国内売上高0.1%以上で、投資額上限は1社300億円である
※投資額下限の売上高は、連結法人である場合には連結会計単位で0.1%以上である必要があり、対象となる投資額についても連結法人のものを合算してよい。また、輸出を除く国内売上高でよい - 税額控除額は、令和3年度税制改正で導入されたカーボンニュートラル投資促進税制と合わせて、当期法人税額の20%までが対象となる
対象資産:
- ソフトウェア、繰延資産、機械装置、器具備品が対象となる。
(繰延資産はクラウドシステムの導入におけるカスタマイズなどの初期費用が想定されている) - 機械装置、器具備品は、ソフトウェア・繰延資産と連携して使用するものに限る
適用要件
適用を受けるには:
- 上記の通り、計画認定を受けるにはD要件、X要件の両方を満たす必要がある
- それぞれにおいて最も重要なポイントは、D要件においては、「DX認定」を受けることであり、X要件においては、「全社の意思決定に基づくものである」ということである
※DX認定は「事業適応計画」の認定とは別ステップである(「事業適応計画」認定の前提である)ことに注意 - 税制適用に当たっては、DX認定を取得し、その後事業適応計画の認定を受ける2段のステップとなっている
デジタル要件(D要件)について:
- X要件の前提条件であるDX認定は、20年5月に施行された改正情報処理促進法の認定制度で、デジタルガバナンスコードに定められた各基準をすべてクリアし、DX Readyの状態であることを情報処理推進機構(IPA)に申請する必要がある
- 申請書を提出してから認定までは標準で60営業日(3か月)ほど期間を要するため、DX認定を受けてない企業は、まずは一刻も早くDX認定を受ける必要がある
- また、DX認定は同じグループ内の法人であっても税制適用する個社ごとに取得する必要があることに注意する
企業変革要件(X要件)について:
- 1部門での取り組みではなく、経営層を巻き込んだ全社の意思決定に基づく取り組みである必要があり、全社の意思決定に基づくものであることを示すための、取締役会等の決議文書が計画認定時に必要になる
- また、X要件の一つである、KPIの数値については、「計画期間内で商品の製造原価が8.8%以上削減されること」等が示されており形式上KPIの数値を満たす必要があり各社自由に設定することはできない
適用までのタイムライン
タイムライン:
- 適用対象は、23年3月31日までに、事業適応計画が認定され、事業の用に供した資産が対象となる
- つまり、事業適応計画が認定されても、令和5年3月31日までに事業の用に供してなければ税制対象とならない(計画書に記載のみでは対象とならない)
- DX認定には、実態として60日を要しているが、申請書類の準備期間も考慮すると、さらに期間を要するため、DX認定未取得の場合は、取得に向けて今すぐにでも動き出す必要がある
(現時点では、事業適応計画の認定にどれくらいの期間を要するか不明であるが、認定が遅れれば遅れるほど、適用期間が短くなることに留意)
社内での推進:
- 投資を実行するDX推進部門が税制適用期間である23年3月末までの投資を棚卸ししたうえで、税務部門と連携して、認定申請の対応が必要となる