最新動向/市場予測

TCFDの動向と企業価値向上に向けた各企業の取り組み

2019年3月22日「TCFDフォーラム 気候変動に対応した企業価値向上~100年先の社会と企業のために~」開催レポート

2019年3月22日「TCFDフォーラム 気候変動に対応した企業価値向上~100年先の社会と企業のために~」を開催しました。気候変動課題への取り組みが国内外の投資家から注目される昨今、企業はTCFDの提言への対応を通して、どのように企業価値を向上させていけばよいのか等をテーマに、官庁(金融庁、経済産業省、環境省)、投資家、企業、それぞれの立場から、TCFDの最新動向やシナリオ分析の実践をふまえて語っていただきました。

企業・投資家の対話とTCFD

企業や投資家を取り巻く環境が大きく変化する中で、⾦融庁としては、資本市場の機能の発揮を通じて、国全体の資⾦フローを最適化し、企業価値の向上と収益の果実を家計やアセットオーナーにもたらしていくという好循環の実現が必要であると考えている。そのために必要な「投資家による適切な投資判断と、投資家と企業との建設的な対話」を促すツールとして、TCFDは有⽤である。

金融庁は、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの改訂を進めるなど、財務情報及び財務情報をより適切に理解するための記述情報の開示の充実を促進してきた。記述情報の開示に関しては、形式的な対応にとどまらないよう、プリンシプルベースのガイダンスを策定するとともに、記述情報の開⽰の好事例集も公表している。

気候変動に関するリスク・機会に関する開示については、民間組織であるTCFDが主体的に取組みを進めているが、単なるCSRとしての環境問題と捉えるのではなく、気候変動がもたらす影響を経営戦略・経営課題と関連付けて開⽰するよう求めていることに、パラダイムシフトと⾔えるほど大きな意義がある。現在、TCFDへの賛同企業は増えているが、皆が望ましい開示に向けて試⾏錯誤している状況にあるので、是⾮躊躇せず、このTCFDへの賛同やTCFD提言に沿った開示の充実に向けて前向きに検討いただきたい。

金融庁 総合政策局総務課国際室
課長補佐 桑田 尚 氏

 

TCFDに関する経済産業省の取り組み

10年以上前、京都議定書が発効した頃と現在とでは、企業を取り巻く環境が⾦融の関わり⽅という点で⼤きく変化した。経済産業省としては、過去のオイルショックや公害対策で培ってきた⽇本企業の持つ⾼い技術⼒やソリューションを強みとして、外部に情報発信し、海外の⾦融機関や評価機関にアピールしていくための共通⾔語としてTCFDが有効だと考えている。これまで、気候変動は環境部⾨に閉じた課題であったが、今や経営・財務の課題であり、気候変動に取り組むことは⾦融機関や取引先に対する差別化戦略となりつつある。

そこで経済産業省では、投資家が企業の積極的な気候変動への取り組みに資⾦を提供し、リターンを得ていくという「環境と成長の好循環」を実現するためにTCFDガイダンスを策定した。是⾮このガイダンスを活⽤いただき、事業会社からの発信を強化し、事例を増やしていただきたい。事業会社側の開示が充実していくことにより、⾦融機関による活⽤や評価の⼿法も洗練されていくと考えている。

また、事業会社と⾦融機関の対話の場として、TCFDコンソーシアムが設立される予定。是⾮、参加いただきたい。

経済産業省 産業技術環境局環境経済室
室長 亀井 明紀 氏

 

環境省 TCFDに対応したシナリオ分析支援事業について

環境省からは、2018年度に実施したシナリオ分析の支援事業について報告する。

TCFDの開示要請の中で戦略に含まれるシナリオ分析では、2℃以下を含む複数の気候変動シナリオに基づき企業のレジリエンスについて説明することが求められるが、シナリオ分析は企業にとって長期で不確実な将来に対する戦略策定のツールとして有用と考えている。

しかしながら国内ではまだシナリオ分析についての認知度が低く、参考となる事例がほぼない、という課題認識があり、環境省としても事例と知見を蓄積し、各企業が自立してシナリオ分析を実施できるようになることを狙って、公募した6社に対して支援した。

その結果を先般、「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」と題するシナリオ分析の実践ガイドを発表したので是非、ご活用いただきたい。来年度以降も事例を積み上げるとともに、実用的なパラメータの整理、実践ガイドの改定、経営陣とシナリオ分析実務サイドとの対話の促進などによって、気候変動対応と企業経営とのより良い融合を支援していく。

環境省 地球環境局 地球温暖化対策課
課長 奥山 祐矢 氏

 

欧州の気候変動情報開示の現状

世界経済フォーラム グローバルリスク報告書2019年版によると、気候変動は世界経済に最も緊要なリスクになると認識されている。

気候変動の物理的影響はすべての事業に影響を及ぼすと考えらえているが、その影響範囲の特定は難しく、バリューチェーンに及ぼす影響が多様であることが適応策を構築する難易度を上げていると考えられている。

では欧州でのTCFDへの取り組みはどうか。

フランスの企業は気候変動の課題を特定し、戦略レベルで取り組み始めているが、現時点ではシナリオ分析を利用している企業はほとんどない。

企業にとっての今後の課題は、シナリオ分析を実施し、その結果に基づき戦略的な意思決定を行うことが重要になる。

デロイト フランス パートナー/TCFDメンバー
エリック・ディジュレイ

 

企業価値向上に向けた経営とTCFD提言への取り組み

企業価値向上戦略と紐づけたTCFD対応(シナリオ分析の実践)について、企業、投資家およびデロイトのプロフェッショナルによるパネルディスカッションを行った。それぞれの立場からのサステナビリティの取り組みやTCFD提言に基づいた情報開示についての実例を紹介いただいた。

TCFD対応において考慮した事項

  • 炭素価格の導入、排出目標、ZEB導入規制の影響、顧客の行動変化、ステークホルダーのレピュテーションの変化など
  • シナリオ分析をするうえで規制の影響が大きい2℃目標と、自然災害の激甚化につながる4℃目標でのリスクを想定
  • インテグレーションとエンゲージメントの体制の強化

TCFD対応を進める際のポイント

  • 気候変動リスクと伝統的なリスクとの間の特性の違いを理解する
  • サステナビリティの部署とリスクマネジメントの部署の対話をし、理解を深める
  • リスク、リターン、インパクトの3本軸で考える
  • 不確実性と可能性に対する構えをすることで想定外をなくす
  • BCP等身近な問題と関連させると社内に浸透しやすい
  • リスクを網羅的に把握しその重要度を評価したうえで、社内で最も重要なリスクが何なのかを決める
  • リスクと機会を示したうえで経営層と対話をする
     

(パネリスト)

MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社
理事
総合企画部
部長 兼 財務企画室長 中島 圭一 氏

株式会社 商船三井 新規・環境事業推進部
副部長 島 裕子 氏

東急不動産ホールディングス株式会社
グループ企画政策部 サステナビリティ推進G
グループリーダー 松本 恵 氏

ブルームバーグL.P.
佐藤 円裕 氏

有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター
ディレクター 後藤 茂之

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
CG&Dユニット サステナビリティチーム
シニアマネジャー 丹羽 弘善

(モデレーター)

デロイト サステナビリティ日本統括責任者
有限責任監査法人トーマツ パートナー 
デロイト トーマツ サステナビリティ株式会社
代表取締役社長
達脇 恵子

開催概要

当日のプログラム等、開催概要はこちらをご覧ください。 

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