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米大統領選に伴う影響(速報)
多国間リベラルから米リアリズムへの回帰へ

海外事業を推進する日本企業への考慮点~

米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が選出され、米国のレジーム転換を位置付ける形となった。これに伴う影響について国際ビジネスインテリジェンスチームが海外事業を推進する日本企業への考慮点について、金融、通商の観点ならびに欧州、中国、ASEANといった他地域への影響の観点からまとめた。(2016年11月10日)

概要

米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が選出されたことは、米国のレジーム転換を位置付ける形となった。国際関係上は、オバマ大統領の多国間リベラリズム(価値観の共有を重視)から、新現実主義(力の均衡論)ないしは孤立主義(対外関与限定、軍事介入の限定化)になるとみられる。外交、経済ともに内向き化の加速は不可避だろう。オバマ政権からの巻き直し路線を念頭においた政策が進展。社会保障等の対内政策の見直し、融和積極的な対外政策の減退が想定される。日本への影響は、日米安全保障体制を基軸としつつも、日本の応分負担と責任が争点となることは確実である。

個別論点

金融

世界経済の不確実性は向上しているが、米国株式及び為替市場の反応は、開票当日に海外市場で起こった懸念を拭うものとなった。現実路線への期待と受け止めれば過度な悲観論は適切ではない。他方、金融政策では、政策方針への不確実性が起きた場合は、ネガティブシナリオとして年内利上げ見送りの公算を排除できない。短期のワーストシナリオでは90円台の円高も想定できる。中長期的には、2017年の独仏の選挙動向や中国経済状況次第では、相対的な安全資産の円買いに向かう公算もありえる。

 

通商

レームダック議会(2017年1月まで)でのTPP批准の可能性は消えていないが蓋然性は薄い。中国だけでなくメキシコに対する貿易障壁の必要性を強調するトランプ氏は、NAFTA・TPPともに反対している。NAFTAメリットを享受してきた自動車産業の米国現地生産が強化される可能性がある。TPP参加国の中で最も自由化率が低い日本にとっては、TPPが米国の離脱でなく、再交渉になればリスクになる。今次の臨時国会でTPP関連法案を可決すれば、再交渉リスクを軽減できる。TPPを否定した後の代替策が無い米国は確実にグローバル通商リーダーシップを喪失する。この機に、求心力を維持強化したいEUが(独仏の選挙や英国の離脱交渉本格化の前に)日本との日EU EPA交渉を妥結し切れるかが次の岐路となる。

 

他地域への影響

欧州

米ドルに対するバックアップ通貨としてのユーロは年内再評価されるものの、2017年の独仏選挙や英国のEU離脱(BREXIT)の影響もあり、ユーロ上昇は限定的とみられる。結果、有事における安全資産としての金の価格と相対的な安定通貨である円の為替が上昇に向かう。

中国

米国の保護主義が高まった場合、輸出者としての中国への影響力は大きい。WTO体制が維持される限り、米国が個別国(中国)の産品に対する差別的な関税賦課をすることはできないことから、トランプ氏の言う中国製品への高関税(45%)措置は現実的ではない。しかしながら対中国貿易に対する保守的な姿勢は一定程度避けられないとみる。為替政策に対しても米国の厳しい対応が予想される。他方で、内需主導型及び高付加価値型二次、三次等の産業においては中国における内需を見越し堅調に推移するとみられる(沿岸部発展地域、デジタル産業等)。安全保障上は、対中への牽制・封じ込め策が弱まると見られ、中国の地域覇権路線が進展する。

ASEAN

ASEAN域内での産業内製化が進展しており米国経済の不確実性に対する耐性はある。個別国でみれば、ドルペッグのベトナムはドル安の場合は、それに伴うドン安により、輸出競争力が向上する可能性がある。他方、シンガポール、マレーシアはBREXIT時と同様、世界経済の不確実性が高まる場合は、成長見込みを下方修正する可能性がある。

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