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繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 第3回 SDGsと国際ルール

繊研新聞連載

近年世界的に認識が高まり、日本でも取り組む企業が増えている「SDGs(持続可能な開発目標)」。国際的な目標は、日本企業に課せられた「責任」であると当時に新たな「機会」と捉えることもできます。SDGsが繊維・ファッション業界にもたらす影響やビジネスチャンスについて解説します(全16回)

SDGs(持続可能な開発目標)は法律や条約ではありません。国連が定めた「目標」です。法的拘束力がないSDGsには、その実現のための方策に解釈の余地が大きく与えられてきました。

しかし、2030年まで残り10年となり、変化が生まれてきています。SDGs関連のルール形成が加速していることに注目してください。企業が独自の判断でウェブサイトにSDGsロゴを貼ってアピールするだけの時期は過ぎました。これからはルールを熟知しなければなりません。

SDGsの策定より前にも、社会課題対応や企業の責任を問うルールは存在しました。廃棄物や悪燃費を取り締まる各国「規制」や気候変動対策の多国間「協定」だけでなく、企業や社会のあるべき姿を示した「規格」も作られてきました。最も有名なのは、ISO(国際標準化機構)が発行したISO26000という企業や組織の社会的責任を規定した国際ガイダンスでしょう。

2015年に策定されたSDGsは、これらに関連するルール形成を更に加速させました。2017年には持続可能な調達のガイダンスであるISO20400が発行され、ISO26000とともに経団連の「企業行動憲章」とその手引きにも反映されています。同年に採択された2020年東京オリンピック・パラリンピックでの「持続可能性」に配慮した調達ガイドラインでは、フェアトレード・ラベルなどの国際認証スキームの活用も明示されました。

そして今年からいよいよ、ルールによってSDGs貢献の巧拙が「見える化」されると見られています。国連開発計画(UNDP)はSDGsに貢献するファンドや事業を認証するための「SDGインパクト」という基準を策定し、2020年に正式発表する予定です。SDGsに貢献する投資機会がどこの国にあるかを把握できるマップづくりもこれに関連し進められています。ほかにもISOでの「サーキュラーエコノミー」や「シェアリングエコノミ―」「サステナブルファイナンス」などの国際規格化に注目が集まります。


また、日本国内では今年、「人権」の分野でルールの変化が始まるでしょう。国連の原則に沿って、日本でも官民が2016年から「ビジネスと人権に関する国別行動計画」(NAP)の検討を進めてきました。ついに2020年半ばにこれが完成し、公表される予定です。NAPを策定した海外諸国では企業に人権デューディリジェンス等の実施を求める法令が多く作られており、日本でも経団連や各業界団体から人権に関する具体的なルールが発信される可能性があります。ファッション業界のように発展途上国の生産拠点を活用しながら多くの店舗人材が忙しく働くビジネスでは、特にルール形成の影響は大きなものになるでしょう。

SDGsに関するルールの多くは、何かを「取り締まる」のではなく、取り組みを「加速させる」ことに狙いがあります。ゆえに、ビジネスチャンスも見つかるでしょう。

繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 第3回 [PDF: 586KB]
国連開発計画(UNDP) 「SDGインパクト」
※クリックまたはタップして拡大表示できます

繊研新聞(2020年2月17日付)
繊研プラス:https://senken.co.jp
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繊維・ファッション業界の指針となるSDGs 
(繊研新聞連載 全16回)

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