通商政策を経営戦略に活用するために

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国際通商ルールを経営戦略に活用するために

デロイト トーマツ グループのプロフェッショナルによる知見

米中間の貿易戦争、英国のEU離脱などこの数年の通商環境は劇的に変化しています。同時に日EU EPA、TPP11の発効、中国、インドを含むRCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉の進展など新たなFTAも構築されています。 企業は、FTA・EPAを有効活用し関税減免効果を享受しつつあります。しかしながら、グローバル化の進展、水平分業化の推進によって企業のサプライチェーンは複雑化しており、環境変化に応じた最適化を迅速に進めるのは容易ではありません。企業は国際通商ルールをどう活用すればよいか、デロイトのプロフェッショナルによるこれまでの知見をまとめました。

昨今の流通キーワード
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「不確実性」の常態化

企業の中国離れとアジア通商秩序の行方

企業の「中国離れ」が意味するところが変わりつつある。
中国の機能を他国に移す動き自体は、2000年代前半の「チャイナプラスワン」から幾度か経験してきた。但し、その理由はまさに重層化の一途だ。目下の関心は新型コロナウイルス対策としての中国拠点の稼働判断だろう。影響の長期化に備えて他拠点の最大活用を検討するのが経営企画部門の特命事項になっている。いずれこれが落ち着いたとて、中期経営計画に際しては、いまだ先行きの見通せない米中貿易摩擦が中国拠点の競争力の認識を曇らせる。根底にある知財のリスクや人件費の高騰なども最新の状況把握が必要だ。まずはいま、冷静に「中国離れ」の実態を把握しよう。すべての中国案件を「危機対応」の名のもとでヒステリックに判断してはいけない。〔世界経済評論2020年5・6月号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2020.02)

米欧貿易摩擦と貿易協議の行方

米国による鉄鋼・アルミ製品への関税措置を発端に米国とEU はお互いの輸入品に対して高関税を発動し合っている。解決を探るため、米国とEU は貿易協議を開始した。協議の最中にも米国が新たな関税措置を発動する等、先行きは不透明だが、EU が米国から大豆やLNG を大量に購入する等の変化も見られる。米欧で連携したルール形成や、中国をはじめとする第三国の不公正な貿易慣行の是正に向けた取組みも実施している。日本企業はこれらの動きを他人事と捉えず、クロスボーダーでの連携も含めて最大限に活用することが2020 年の新たな戦略のひとつとなり得る。〔一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI)の2019年度「トランプ大統領の保護主義下における日本の米国事業戦略」報告書に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2020.01)

国際ルール無視の米関税引き上げ 懸念高まる保護主義の連鎖

米国のトランプ大統領は3月8日、通商拡大法第232条に基づき、鉄鋼製品とアルミニウム製品の輸入に高関税をかけることを決めた。同23日には、実際に輸入関税措置を発動している。国際社会で保護主義の連鎖が懸念される中、日本はどのようにリーダーシップをとればよいのか。デロイト トーマツ コンサルティングの通商専門家である羽生田慶介が解説する。〔週刊エコノミスト2018年4月10日号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2018.05.09)

通商拡大法はトランプ氏の焦り 鉄・アルミ輸出国への影響大

米国のトランプ大統領は通商拡大法232条に基づき、鉄鋼製品やアルミニウム製品の輸入が米国の安全保障に与える影響の調査を米商務省に指示した。是正措置が発動されれば貿易相手国に与える影響は大きい。果たして是正措置は発動されるのか。そもそも232条とはいかなる条文か。デロイト トーマツ コンサルティングの通商専門家である羽生田慶介が解説する。〔週刊エコノミスト2017年9月5日号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2018.02.14)

Brexit(英国のEU離脱)による影響分析

英国のEU離脱は、経済統合や貿易・投資の自由化の進展に大きな不安要因をもたらすとともに、政治・安全保障面でも欧州情勢や日英・日EU関係に留まらず、我が国として適時適切に対応するための外交戦略を可及的速やかに策定・実施していく必要がある。英国・EU関係の展開について、利害関係者から情報収集の上、日EU間及び英国間の法的関係の影響、貿易・投資等の実体経済への影響、関連する課題等について総合的・多角的な分析を行った。(2017.3.31)

巨大な原価低減・MA機会誕生

FTAによる輸出拡大の進化

FTAによる関税コスト削減は、日本企業が執念のように続けた「原価低減」の最後の余地だ。FTAの使い漏れをなくすことで短期的な企業競争力の改善が見込まれることは論をまたない。過去のFTAも輸出拡大に貢献してきた。自由貿易が果たしてきた役割に疑いはないだろう。しかしながら、情勢は大きく変わりつつある。各国での保護主義政策によるリスクが顕在化し、なにより大きな変化が「GDP競争」の終焉だ。今、自由貿易協定はどう進化すべきなのだろうか。〔世界経済評論2019年11・12月号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2019.09)
 

FTA活用による関税削減可能額は年間約1.1兆円

当社が提供する「Trade Compass®」を用いて、日本が締結し発効しているFTA(自由貿易協定)およびEPA(経済連携協定)により日本からFTA・EPA締結国へ輸出する場合に削減可能な関税額を試算しました。試算の結果、MFN税率(WTO(世界貿易機関)加盟国に課される税率)とFTA特恵税率の差分により得られる、関税削減可能額は2019年に最大で年間約1.1兆円、関税削減・撤廃がさらに拡大する2025年には年間最大1.9兆円となることが分かりました。(2019.08)
 

NAFTA 改定が日本企業に与える影響
~工業製品を中心に~

NAFTAの改定には米国トランプ政権の自国第一主義が色濃く反映されている。特に自動車分野において顕著だ。自動車のNAFTA域内での現地調達率は62.5%から75%に引き上げられ、複雑な労働賃金要求も導入された。一方、デジタル貿易や国有企業などNAFTAを「近代化」するルールも導入された。これらは台頭する新興国へのけん制効果があると捉えられる。米国議会が「ねじれ」の状態にあるなか、新NAFTAの発効は依然として不透明だ。新NAFTA、通商拡大法232条、米中貿易摩擦など米国を取り巻く環境は日々変化している。日本企業の北米事業は難しい舵取りを迫られている。〔世界経済評論2019年5・6月号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2019.01)
 

日EU・EPA交渉のビジネス影響

2013年4月から開始された日EU経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)交渉が、2017年7月6日に大枠合意を迎えた。世界のGDPの約28%を占める日本とEUという大国同士が自由貿易の旗手として足並みを揃え、困難な交渉を合意に漕ぎづけた意義は大きい。本稿では、日EU・EPAのビジネス影響について考察する。(2017.08.17)
 

『日本企業はTPPをどう活用すべきか』 ~経営戦略に与える影響を協定文から読み解く~
第1回 (物品市場アクセス、原産地原則)

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加国は、現在、個別の条文の精査などの専門的な作業を進めており、2016年2月にも協定本文とその附属書に署名する見通しとされる。本シリーズでは、TPP協定文を読み解き、経営戦略に与える影響と具体的な活用方法を紹介する。第1回目となる今回は、物品市場アクセスと原産地規則について解説する。(2015.12.16)

第2回 (投資・サービス)

TPP協定が発効すれば、世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める、人口8億人の巨大な自由貿易圏が実現する。本シリーズでは、TPP協定文を読み解き、経営戦略に与える影響と具体的な活用方法を紹介する。第2回目となる今回は、投資・サービスについて解説する。(2016.01.25)

第3回 (政府調達・国有企業・競争政策)

2016年2月4日、TPPは、交渉に参加した12ヵ国によって署名された。世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める、人口8億人の巨大な自由貿易圏がその実現に向けた一歩を踏み出した。本シリーズでは、TPP協定文を読み解き、経営戦略に与える影響と具体的な活用方法を紹介する。第3回となる今回は、政府調達・国有企業・競争政策について解説する。(2016.02.19)

 

TPPの産業別インパクト(自動車)

「TPPの自社への影響は」という問いを企業にかけたとき、「不明」や「軽微」という回答が少なくないことは、TPP交渉の結果が不成功だったからではありません。理由は、難解な協定文書を読み解いてビジネスへの示唆を出す「通商とビジネスの間の翻訳」ができていないからに他なりません。このシリーズでは産業別に「TPPで何が変わるのか」「TPPをどうビジネスに活かせばいいのか」を解説します。(2016.04.19)

 

国際通商ルール(TPP・FTA)対応戦略
第1回 ~なぜいま国際通商ルールが経営課題とされるのか~

TPPをはじめとする世界的なルール環境の変動により、グローバルに展開する企業はもちろん、国内に事業主軸を置く企業も、自社の競争力に決定的な影響を受けることとなる。一方で、新しい通商ルールを自社の競争力の源泉として戦略的に活用できている企業は、多いとは言えない。本シリーズでは、最新の国際通商ルールの動向とビジネスが認識すべき環境変化について、4回にわたって解説する。(2014.08.27)

第2回 ~TPPにおける各国思惑と主要論点~

TPP/RCEP/AECなど、かつてない広範かつ高インパクトの広域経済連携枠組みによって、ビジネス上看過できないほど、世界の通商・産業ルールが激変する可能性がある。「国際通商ルール(TPP・FTA)対応戦略」シリーズ第1回では、このような世界経済連携の潮流と重層化・複雑化する世界の経済連携網を概観し、「なぜいま国際通商ルールが経営課題とされるのか」について解説した。第2回となる今回は、TPPの成り立ちから、TPPをめぐる各国の思惑、そして主な論点について解説する。(2014.09.29)

第3回 ~TPP以外で経営戦略上「最も注目すべき」経済連携~

「国際通商ルール(TPP・FTA)対応戦略」シリーズ第1回・第2回では、世界経済連携の潮流と重層化・複雑化する世界の経済連携網を概観し、TPPの成立や論点について解説した。シリーズ第3回となる今回は、RCEP、日EU EPAなど、その他経営が「最も注目すべき」経済連携について解説する。(2014.12.17)

最終回 ~国際通商ルールを経営戦略に活かす:関税コスト削減およびルール変化への対応~

「国際通商ルール(TPP・FTA)対応戦略」シリーズでは、通商・産業ルールの変化による世界経済連携の潮流と重層化・複雑化する経済連携網を概観し、「なぜいま国際通商ルールが経営課題とされるのか」について、TPP、RCEP、日EU EPAなどの経営戦略上「最も注目すべき」経済連携枠組みを中心に解説した。最終回となる今回は、国際通商ルール対応戦略について解説し、激変するルール環境において、経営陣はどのような対応策をとりうるのかを提示する。(2015.02.03)

 

新たなコンプライアンスリスク

【月刊アイソス 2018年10月~2019年3月連載】
JIS法改正の狙いと企業への影響を読み解く

本年通常国会において、不正競争防止法等の一部を改正する法律(法律第33号)が可決成立した。これにより工業標準化法(以下、JIS法)が一部改正され、「産業標準化法」(以下、新JIS法)となった。また従来の「日本工業規格(JIS)」が「日本産業規格(JIS)」となることが決定した。JIS法は1949年の公布・施行以来数回の改正を経ているが、今回は約70年ぶりの大幅改正となる。〔月刊アイソス2018年10月号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2018.10)

グローバル通商動向を標準化と適合性評価の観点から読み解く

通商動向は「EU産のワインやチーズが安くなる」「日本からEUへ輸出する自動車やテレビの関税がなくなる」といったように日々の報道を賑わせている。だが、その効果は「関税」面だけに留まらない。本稿では、昨今の通商動向が標準化や適合性評価に与える影響について考察する。〔月刊アイソス2018年11月号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2018.11)

SDGs実現の求心力となり得るコンセプト規格

国連は2018年6月、SDGsの進捗をまとめた最新報告書「持続可能な開発目標(SDGs)報告2018」を公式発表した。調査結果によると、掲げられた目標に対する取り組みは部分的に進んでいるものの、十分な食料が得られない人の数(目標2:飢餓)は十数年ぶりに増加傾向に転じる等、2030年のゴールに向けて進捗が思わしくないことが判明。アントニオ・グテーレス国連事務総長は報告書の序文で、「2030年の達成期限まであと12年しか残されていない今、私たちは緊迫感を持って取り組まねばならない」と述べている。〔月刊アイソス2018年12月号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2018.12)

宇宙産業における民生品活用の可能性を読み解く

2017年5月、「宇宙産業ビジョン2030」が内閣府主導で策定された。宇宙産業を「第4次産業革命を推進させる駆動力」と位置づける本政策は、宇宙産業の市場規模を現在の1.2兆円から、2030年代早期に倍増となる2.3~2.5兆円に拡大させると意気込む。〔月刊アイソス2019年1月号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2019.1)

イノベーションとルール形成

新たなマーケットを「ルール形成しながら」開拓するのは、欧州にとっては特段新しいアプローチではない。彼らにとって、世界は100年以上前から「新興市場」一色。自らに有利なルールのもとで市場を創造することに長けて当然だ。過去にないスピードで勝敗が分かれるイノベーション競争において、日本がルール形成で勝つには何が必要か。〔月刊アイソス2019年3月号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2019.3)

デジタル経済の新ルール

欧州・中国を中心とするデータ保護主義の現状と通商ルールの展望

国境を越えたデータの流通量が爆発的に増加し、データ資本主義の時代に突入した。欧州のGDPR、中国のサイバーセキュリティ法などが相次いで施行され、自国内にデータを囲い込もうとするデータ保護主義の動きが加速するが、これらの動きは、企業のイノベーションの阻害、消費者の利便性を低下させる危険性を含んでいる。また、デジタル貿易にかかる国際的に統一されたルールがなく、各国が異なるルールを導入している状況は企業にとって負担が大きい。〔世界経済評論2019年1・2月号に寄稿した内容を一部変更して掲載しています〕(2019.01)

書籍『稼げるFTA大全』 絶賛発売中!

FTAを活用すれば支払わずに済むことにもなる関税。その「関税3%は法人税30%に相当する」ことをご存知ですか?

そして、FTAの活用で得られるのは来期の利益ではなく、まさに今期の日々の利益です。また、FTAはコスト削減に加え、海外M&Aの機会や政府調達の入札機会の拡大にもつながります。ただし、大きなメリットがある反面、活用方法に不備があればコンプライアンスリスクにもつながります。

本書では、経済産業省でFTA交渉を担当した経験を持つデロイト トーマツ コンサルティングレギュラトリストラテジーリーダーの羽生田慶介が、単なる「お勉強」ではない「稼ぐため」のFTA活用について徹底的に解説します。

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