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日本企業のグローバルな成長の実現に向けて

日本企業がグローバル化していく上で直面する課題への対処のポイント

グローバル経営管理体制の強化には、グローバル本社と海外事業拠点の連携が重要である。本稿では2015年に開催したデロイトトーマツビジネスセミナーにてお伝えしたグローバル経営管理体制強化の推進方法について、当該セミナーの内容を振り返りつつ、日本企業がグローバル化していく上で直面する課題への対処のポイントをお伝えする。

はじめに

グローバル経営管理体制の強化というと大きく2つの視点で検討すべきといえる。ひとつはグローバル本社における経営管理の仕組みの強化、もうひとつはグローバルに点在する海外事業拠点における経営管理の仕組みの強化である。
多くの日本企業はすでに前者のグローバル本社における仕組みの強化は着手済みまたは完了した状態と言える。にもかかわらずグローバルなビジネスの実態が見えない、成長をかけてリスクテイクしているだけのリターンを獲得できているのか把握できない、といった悩みを抱えていることが多い。それはまさに実態情報を保有しているはずの海外事業拠点の経営管理体制が脆弱であり、グローバルトップマネジメントが満足できる情報を担保できていないことがひとつの大きな要因となっている。
本稿では、こうしたグローバル本社と海外事業拠点の連携に焦点を当て、攻めのガバナンスを実現するために必要な海外事業拠点における経営管理体制強化のポイントを述べることとしたい。

グローバル経営管理体制の構成要素と海外事業拠点における典型的な課題

グローバル経営管理体制に必須の構成要素は「(1)マネジメントによる効果的なレビューと意思決定の実行」、「(2)意思決定を担保する適切な機能・インフラの整備」、「(3)現場での正確、効率的な業務遂行」、ならびに、「(4)適時・適切なエスカレーションによるマネジメントへの情報提供」の4つである。この4つの要素と実際によくあるギャップを図示すると図1のようになる。

図1: グローバル経営管理体制の構成要素とギャップ

海外事業拠点での経営管理体制強化のポイント

前項のような海外事業拠点でのギャップを埋めて経営管理体制を強化していく必要があるが、いままさに成長をかけて活動しているアセアン、インド以西といった新興国地域でのビジネスや、欧米での大型買収による急拡大においては、究極的には人財をいかに確保して経営管理を定着させるかが重要なポイントとなる。そのためには、一足飛びに高度な経営管理体制を求めるよりも、地に足着いた現場密着型の業務改善を積み重ねた「現場にとって納得感ある」水準での取組が必要である。

そのため成功要因としては以下のような点を挙げることができる。

・経営管理体制を強化すべきポイントの明確化のために拙速にグローバル本社の常識のみで課題を決め付けず、目的に整合した現状調査によって課題を体系的に整理することから着手すること

・一足飛びに100点満点の高度な体制を追求せず、今ある現状の仕組みを最大限に活かした仕組みの達成を成果として位置づけること

・仕組みの定着を念頭に、当初からナショナルスタッフのリーダークラスを巻き込んだ活動としつつも、目指すべき改善後の姿の定義は日本人含むマネジメントがしっかりと定義すること(図2)

・その上で、当初から関与したナショナルスタッフ中心に、日本人の介在しない世界で納得のいくまで浸透活動を実行すること(図2)

・結果を急ぎすぎず、海外ならではの事情を考慮した時間軸でプロジェクトを遂行すること

・相対的に経営資源の豊富なグループ本社からヒト、モノ、カネ、情報を海外事業拠点へ移す一方で、日本人間でのコミュニケーションに過度に依存した体制から脱却し、ナショナルスタッフから直接情報を入手して実態を見極める習慣を常態化すること

このようなポイントに基づく経営管理体制の強化は、「(1)いままさに成長をかけて活動しているアセアン、インド以西といった新興国地域でのビジネス安定化のためのリージョン管理強化」や、「(2)世界中でのM&Aによる事業の急拡大に関連してPMIを通じた経理機能強化による経営情報の安定化」といった形で実践されていることが多い。

図2: 仕組み定着のための現場主導の浸透活動

まとめ

本稿の最後にこれら2つの場合における日本企業の取組をまとめたPDFファイルを紹介することをもってまとめに代えたい。これらの取組は成長をかけてビジネス規模を拡大したりM&Aをしかけた場合に生じるひずみへの対応策として何が求められるかの理解に資することを意図して掲載するものである。

・グローバルリージョン管理体制強化による攻めのガバナンス
・PMIおよび地域モニタリングの強化

末筆になるが本稿が皆様の取組の一助になれば幸いである。

コラム情報

著者: 有限責任監査法人トーマツ グローバルグループ 
パートナー 柳澤 良文
※上記の役職・内容等は、執筆時点のものとなる。

グローバルリージョン管理体制強化による攻めのガバナンス

日本企業の取組をまとめたPDFファイルを左記ダウンロードファイルにて紹介する。

(667KB,PDF)

PMIおよび地域モニタリングの強化

日本企業の取組をまとめたPDFファイルを左記ダウンロードファイルにて紹介する。

(790KB,PDF)
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