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パートナーシップを活用したDigital時代におけるIT機能改革

DXを加速化させるためのIT組織とは?外部の活用で推進力強化と効率化を実現させる方法論-

DXが迫られる中、中核となるべきIT組織の変革に苦戦している企業は多い。IT機能の強化・トランスフォーメーションを着実に実現するため、既存の組織に縛られない外部パートナーと一体となった変革が重要となる。

DXを実現するためのIT組織の抱える課題

平成30年の経済産業省によるDXレポートが提示される以前より、多くの日本企業は自社が抱えるIT機能に対して「コスト抑制」「事業部門との連携強化」「品質の向上」といった課題を抱えていた。加えて、先述のDXレポートが発表されたことをきっかけに、更なるIT機能への変革の要求が高まりを見せ多くの企業にとってIT機能の改革が急務となっている。一方で、本改革の要となるIT機能そのものの質的転換がうまく測れずその好機を逃している企業は少なくはない。本稿においては、各企業の変革が進まない要因を「3つのギャップ」で示し、それらを解消するためのソリューションの一つとしてパートナリング(IT機能の外部化)を提唱させていただきたい。

変革を阻む3つのギャップ

  • 第1のギャップ『転換の軸足』
    多くの企業がDXの加速化にあたり第一手として検討に着手するのが、自社が保有しているIT部門および点在するIT機能の変革だが、ここに第1のギャップが存在する。DXにおいて重要なことはビジネスもしくは業務プロセスの変革を意味するものであり、IT機能の変革の前に本来は自らの戦略やビジネスをどのように変革させたいかという像がなければ、IT機能だけの変革では空転してしまう。
  • 第2のギャップ『転換の主体』
    次に生じるギャップはまさに戦略やビジネスの変革の方向性が決まった後に、だれが主体的に変革を実現していくかという点である。IT部門の長や担当がDXを行うための施策やアイディアをIT起点で出してほしいといわれ頭を抱えている姿を見ることは少なくない。これまでの歴史の中で、多くの企業ではIT機能が一種の社内下請けに近い形で様々な要求をシステムとして実現してきたという流れが定着化しており、突如とした社内IT人材を中心にした推進は想像以上に難しい。
  • 第3のギャップ『求められるCapability』
    最後に一番発生していると思われるのが人材に求めるCapabilityのギャップである。自社のIT人材ではCapabilityがマッチしないのでどうすれば良いかといった話は必ずと言っていいほど取り沙汰される課題である。しかし、本質的なギャップは志向するDX施策ごとに求めるIT人材の特性は異なっているにもかかわらず、一律に自社のIT部門、人材に要求してしまっている点である。即ち、自社リソースで実施すべき領域と外部も含めたリソースで実施すべき範囲を明確にすることが重要となる。

ソリューションとしてのパートナリングと外部化

前章で述べた3つのギャップを乗り越え、企業としての変革を推し進める一つの有効な手段としてパートナリングを目的としたIT機能の外部化が挙げられる。元来IT機能においては、BPOが多く実施されている領域でもあり、実際に多くの外部パートナーと連携しながらプロジェクトを進めることが常である。直近、これらのBPOのフォーマットから一歩踏み込み戦略的なアウトソーシングを実施している企業が増えてきている。戦略的なアウトソーシングにおける3者の関係性は下図のとおりである。既存のアウトソーシングと大きく異なる点は、IT機能の下請けとして外部パートナーが効率性を追求することが命題ではなく、あくまでDXパートナーとしてIT機能の変革やDX知見の提供を行う事が命題となっている点である。即ち、3つのギャップのうち『転換の主体』と『求められるCapability』を補うため、自社のIT機能を外部化することで加速度的に変化を推し進めていくことが可能になるのだ。但し、これらを正しい方向で進めていくためにも必ず経営や事業が軸足となって自社がどのようにDXを行っていくかということを決めていくことが重要である点は忘れてはいけない。

【図:戦略的アウトソーシングにおける3者の関係】
 
戦略的アウトソーシングにおける3者の関係】
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一筋縄ではいかない外部化の推進

IT機能の外部化を伴うパートナリングの有効性については前章で述べたとおりであるが、一方でIT機能の外部化は一筋縄ではいかない難しさがある。IT機能の特有なものとして挙げられるのが、圧倒的なノウハウの内外格差である。他の間接機能と比較し、IT領域においてはアウトソーシングが活発に活用されてきた歴史がある。そのため、アウトソーサーとして多数のIT部門業務を受託する業界の主要プレイヤーの知見は高まっているが、一方で外部化を新たに検討するユーザ側はパートナリングが初の試みとなるケースが多い。故に、これまでの関係性があるベンダーが主導となり成り行きでのIT機能外部化を実施してしまい、気が付くと既存の延長でベンダーがロックされてしまっているという事態になりかねない。

ここで重要なことは、これまでも述べてきた通り必ず自社が主体となって『戦略的に』外部化を実施するという事である。そのためには、外部化までのプロセスや実現したい姿、これに適う要件を定め、適切にパートナー候補と交渉を行っていくことが求められる。これにより、パートナー側も外部化により何を求められ、何を実現することが重要なのかを認識し、双方にとってのミッションを達成するための緊張感が生まれ良いパートナリングを実現できるのである。

デロイトのIT機能改革おけるソリューション

デロイト トーマツでは多くの知見を活用し、IT機能改革に関してパートナリング戦略の立案から機能配置検討、プロセスの実行支援までを一貫して提供させていただきます。サービスの特徴として、他ITコンサルティング会社と異なり自社でのアウトソーシングソリューションをもたないため、第三者の目線で本取り組みの意義や有効性を検証し、実施や特定ベンダーの結論ありきではない検討を実施可能です。また、過去の実績の中ではM&Aに係る契約のみならず、アウトソーシング契約や外部化後の運用プロセス設計の支援も行っており、実務観点からのきめ細やかなアドバイスも実施させていただきます。

著者

緑川 祐哉/Yuya Midorikawa
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー

製造業、サービス業、金融業の幅広い業界において、バイサイド/セルサイドの両面のM&Aの構想策定からディール実行、PMIを一貫したアドバイザリー経験を有す。
近年においては、M&Aを活用したグループ組織再編やIT機能を中心とした間接機能改革の案件に多数従事しており、構想から実行までの伴走型のサポートに強みを持つ。

 

(2021.6.11)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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