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デラウェア州LPSの法人該当性が争われた事案~平成27年7月17日最高裁判決~

Japan Tax Newsletter:2015年9月29日号

平成27年7月17日に最高裁判所で注目の判決が下された。これは、米国デラウェア州改正統一リミテッド パートナーシップ法に準拠して組成されたリミテッド パートナーシップが、我が国租税法上の「法人」に該当するか否かが争われていた事案の最高裁判決である。(Japan Tax Newsletter:2015年9月29日号)

1 はじめに

平成27年7月17日に最高裁判所で注目の判決(平成25年(行ヒ)第166号)が下された。これは、米国デラウェア州改正統一リミテッド パートナーシップ法に準拠して組成されたリミテッド パートナーシップ(Limited Partnership:以下「LPS」)が、我が国租税法上の「法人」に該当するか否かが争われていた事案の最高裁判決である。同様の事案が、東京、大阪、名古屋において並行して進行し、各地方裁判所および各高等裁判所においてそれぞれ異なる判決が下されていたことから、最高裁判所の判断に大きな関心が集まっていた。

判決において、最高裁はLPSは権利義務の帰属主体であり、我が国の租税法上外国法人に該当するとの判断を下した。本ニュースレターでは、判決の概要とそれが日本企業および海外投資家に惹起しうる潜在的な課税上の問題点について述べてみたい。なお、ここでの意見に関する部分はあくまでも筆者の個人的な見解であることに留意されたい。

2 平成27年7月17日最高裁判決

1.本件事案の概要

原告ら投資家は、信託銀行を受託者とする信託契約(導管型のもの)を介して各LPS(以下「本件各LPS」)にLimited Partnerとして出捐し、当該LPSを通して行った米国所在の中古集合住宅の貸付けに係る所得が自らの不動産所得に該当するとして、その所得の金額の計算上生じた損失の金額を他の所得と損益通算して所得税の申告等を行った。

これに対して、処分行政庁は、当該所得は不動産所得に該当せず、損益通算を行うことはできないとして課税・通知処分を行い、原告ら投資家は各処分の取消しを求めて提訴していたものである。

本事案の主たる争点は、LPSが行う本件不動産賃貸事業により生じた所得が本件各LPSそれ自体または本件投資家らのいずれに帰属するかという点である。具体的には、本件各LPSが所得税法上および法人税法上共通の概念として定められている外国法人に該当するか否かが争われたものである1

1 この他、本件各LPSの租税法上の人格のない社団該当性、本件各不動産賃貸事業から生じた損益の不動産所得該当性および国税通則法第65条第4項の「正当な理由」の有無が争われている。
2.下級審における判断

先に述べたとおり、本件と類似の複数事案が、大阪、東京においても争われ、これまでLPSの日本の租税法上の法人該当性に関して各裁判所において異なる判断が出されていたことから、最高裁判所の判断が待たれていたところであった。なお、同様の事案であるにもかかわらず、各下級審の判断が分かれた理由は、法人該当性の判断のために採用される基準およびその比重が各裁判所において異なっていたことに因るところが大きいと思われる。

裁判所

大阪

東京

名古屋(本件)

地裁

法人該当
(平成22年12月17日)

法人非該当
(平成23年7月19日)

法人非該当
(平成23年12月14日)

高裁

法人該当
(平成25年4月25日)

 法人該当
(平成25年3月13日)

法人非該当
(平成25年1月24日)


3.最高裁判所における判断

本判決において最高裁判所は、外国法に基づいて設立された組織体が我が国租税法上の外国法人に該当するか否かは、当該組織体が日本法上の法人との対比において我が国租税法上の納税義務者としての適格性を基礎付ける属性を備えているか否かとの観点から判断することが予定されているものとし、ある組織体が権利義務の帰属主体とされることが法人の最も本質的な属性であり、この属性の有無に即して、当該組織体が権利義務の帰属主体とされているか否かを基準として判断することが相当としている。

その上で、法人該当性の判断を行うに当たっては、下記の判断基準に従い、まず1)を検討し、これができない場合には、次に2)を検討して判断すべきであるとし、結果として、本件各LPSは日本の租税法上法人に該当するものというべきであると判示している。

(1) 法人該当性の判断基準

1) ステップ1: 準拠法における法的地位の付与の有無

「より客観的かつ一義的な判定が可能である観点」として、組織体に係る外国の設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、当該組織体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていることまたは付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討する。

2) ステップ2: 権利義務の帰属主体としての属性

「組織体の属性に係る観点」として、当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断する。具体的には、当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から、当該組織体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が当該組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討して判断する。

(2) 判断基準の本件各LPSへの適用

1) 準拠法における法的地位の付与

  • デラウェア州LPS法は、同法に基づき設立されるLPS(以下:「DLPS」)がその設立により「separate legal entity」となることを定めているが、「legal entity」が日本法上の法人に相当する法的地位を指すものであるか否かは明確ではない
  • 「separate legal entity」であるとされる組織体が日本法上の法人に相当する法的地位を有すると評価することができるか否かについても明確ではない
  • デラウェア州一般会社法における株式会社(corporation)については、「a body corporate」という文言が用いられ、「separate legal entity」との文言は用いられていない

最高裁判所は、上記のことから、DLPSが「separate legal entity」となることが定められていることのみをもって、本件各LPSに日本法上の法人に相当する法的地位が付与されているか否かならびにデラウエア州LPS法や関連法令等の他の規定の文言等を参照しても、本件各LPSがデラウェア州法において日本法上の法人に相当する法的地位が付与されているか否かは明白であるとはいい難いとしている。

2) 権利義務の帰属主体

  • デラウエア州LPS法は、DLPSは、営利目的か否かを問わず、一定の例外を除き、いかなる合法的な事業、目的または活動をも実施することができる旨を定めている
  • デラウエア州LPS法は、DLPSは、同法もしくはその他の法律または当該DLPSのパートナーシップ契約により付与されたすべての権限および特権ならびにこれらに付随するあらゆる権限を保有し、それを行使することができる旨を定めている

最高裁判所は、上記のことから、DLPSは、自らの名義で法律行為をする権利または権限を付与されており、DLPS名義でされた法律行為の効果がDLPS自身に帰属することを前提とするものと解される2とし、このようなデラウエア州LPS法の定め等にかんがみると、本件各LPSは、自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が本件各LPSに帰属するものということができるから、権利義務の帰属主体であると認められるとしている。

そして、上記の検討を行った結果、最高裁判所は、本件各LPSは日本の租税法上の法人に該当するものというべきであると判示している。

2 さらに、最高裁判所はこれと整合するものとして以下の点を挙げている。

  • DLPS持分がそれ自体として人的財産と称される財産権の一類型であるとされ、かつ、構成員であるパートナーが特定のDLPS財産について持分を有しないとされていること
  • 本件各LPS契約において、本件各LPSが本件各建物およびその敷地の購入、取得、開発、保有、賃貸、管理、売却その他の処分の目的のみのために設立され、当該目的を実施するために必要または有益な範囲で上記の処分の権限を有すると定められていること(なお、構成員である各パートナーが本件各LPSのLPS財産につき各自の出資割合に相当する不可分の持分を有すると定められていることもパートナーがDLPSについて持分を有しないとする州LPS法の上記規定の定めと齟齬するものではない)

3 外国事業体に関する我が国の課税上の取扱い

1.LPSに関する従来の取扱い

これまでLPSは、現行法令上明文規定はないものの、実務上、構成員課税(ある事業体が行う取引から生じる損益をその事業体の段階では課税対象とせず、あたかもその事業体の構成員が当該取引を直接行ったものとして当該構成員に対してその持分に応じて課税する方式)が適用されるいわゆるパススルー型の事業体として取り扱われてきたと言える。これは、LPSが、我が国の課税上パススルー課税が適用される民法上の組合(いわゆる任意組合)や投資事業有限責任組合に擬制されることにより、これらと同様の我が国課税上の取扱いを適用してきたものである。

2.LLCに関する国税庁のガイドライン

海外の事業体に対する我が国の課税上の取扱いについての指針としては、平成13年6月に国税庁がそのホームページで示した、「米国LLCに係る税務上の取扱い」と題したガイドライン(以下「ガイドライン」)がある。当該ガイドラインでは、米国のリミテッド ライアビリティー カンパニー(Limited Liability Company:以下「LLC」)3の我が国の課税上の取扱いとして、以下を論拠として、米国の税務上、LLCが前述の法人課税またはパススルー課税のいずれを選択したかにかかわらず、原則として、「外国法人(内国法人以外の法人)」として取り扱うのが相当であると結論付けている。

  • LLCは、商行為をなす目的で米国の各州のLLC法に準拠して設立された事業体であり、外国の商事会社であると認められること
  • 事業体の設立に伴いその商号等の登録(登記)等が行われること
  • 事業体自らが訴訟の当事者等になれるといった法的主体となることが認められていること
  • 統一LLC法(Uniform Limited Liability Company Act)において、「LLCは構成員(Member)と別個の法的主体(a legal entity)である。」および「LLCは事業活動を行うための必要かつ十分な、個人と同等の権利能力を有する。」と規定されていること

3 LLCは、“Limited Liability Company(有限責任会社)”と表示されるが、米国の会社法(各州法)上、「法人」(Corporation= Incorporated Entity)ではない。しかしながら、通常の法人とほぼ同様の法的権利行為能力が与えられているとともに、メンバーと呼ばれるその出資者は一律に有限責任を享受できるという、法人に極めて類似した性質を有している。その一方で、米国の税務上は、一定の要件を満たすことまたは所定の選択を行うことにより、LLCごとに、1) 法人課税(LLC自体が納税義務者となる)、2) パススルー課税(LLCの各メンバーが各々の出資割合等に基づき当該LLCの所得について納税義務者となり、LLC自体は何らの納税義務を負わない)または3) LLCのメンバーの支店・部門(Disregarded Entity)としての取扱いのいずれかの適用を受けることになる。このように、LLCは、米国において、パートナーシップに適用されるパススルー課税という税制上の有利性(LLCの損益のすべてが出資者に直接帰属するため、法人段階と出資者段階における二重課税の回避やメンバーにおける損失の取込み)と、法人に認められる有限責任制(LLCの債務に対する責任はメンバーの出資額に限定)という、パートナーシップと法人のそれぞれが有する利点を同時に享受することが可能となる非常に独特な事業体であり、これが、LLCがHybridな事業形態といわれるゆえんともなっている。

3.国税不服審判所の審査請求事例

上記に関連し、平成13年2月26日付の国税不服審判所の裁決事例(名裁(所)平12第49号)では、日本の居住者である会社役員が、自己が出資して米国に設立したLLCが行う不動産賃貸業に関連して生じた損失の金額を、その者が有する他の不動産所得と合算し、かつ給与所得の金額と損益通算したことにつき、国税不服審判所は、当該LLCを我が国の課税上外国法人として取扱い、当該LLCにおいて生じた上記損失の当該会社役員の他の所得との合算および損益通算を否認した原処分庁の取扱いを支持し、請求人である会社役員の審査請求を棄却している。

注目すべきは、この裁決事例がLLCを我が国の課税上外国法人として結論付けた論拠が、既述のガイドラインの内容と実質的に同一のものとなっていることである。すなわち、本裁決事例が所得税法上のみの判断に関するものであることを考慮しても、その後のガイドラインの発遣に大きな影響を与えた可能性があると言える。

4.平成19年5月16日さいたま地裁判決および平成19年10月10日東京高裁判決

これらは、上記のガイドラインおよび審査請求事例の後、同様に日本の居住者が、米国LLCを通して行った不動産賃貸業に係る収支および本件LLC名義の預金利息収入を不動産所得および雑所得として行った所得税の各確定申告に対し、原処分庁が、LLCが行う不動産賃貸業により生じた損益は法人としてのLLCに帰属するもので、控訴人の課税所得の範囲に含まれないとし、また、当該LLCが控訴人に対して送金した分配金は配当所得に該当する等として行った更正処分が争われた事案である。これら判決においても、上記のガイドラインおよび審査請求事例と類似の判断基準により、地裁および高裁のいずれもLLCは法人に該当すると判示している。

5.LPSの法的性質

米国のLLCは、米国の各州が制定するLLC法(Limited Liability Company Act)に基づいて設立される事業体(Entity)であるが、その歴史は比較的浅く、1977年に米国ワイオミング州で制定されたLLC法が最初といわれている。

この、事業体としては比較的新しいLLCに対し、LPSの歴史は極めて古く、その普及の度合いはLLCと比べ物にならない(各州におけるパートナーシップ法の規範となるべき、統一パートナーシップ法および統一リミテッド パートナーシップ法が制定されたのは、それぞれ1914年および1916年である)。従来から、上述のガイドラインや審査請求、地裁および高裁判例が、LLCを我が国の課税上外国法人であると判断した際論拠としたことの多くが、LPSを含むパートナーシップ全体に包括的にあてはまる可能性があるという点が問題視されていた。すなわち、米国のパートナーシップと一口に言っても、現在、General Partnership、Limited Partnership、Limited Liability PartnershipやLimited Liability Limited Partnership等、その形態は様々であるが、その多くが、多かれ少なかれ以下の特徴を有しているからである。

  • パートナーシップは、2名以上の者が営利を目的に共同所有者として事業を遂行する団体であること
  • コモン ロー上は、パートナーシップが訴訟の原告または被告となる場合、通常パートナー全員の名において訴訟が追行され、訴状が当事者であるすべてのパートナーに送達されることが原則とされる。しかしながら、多くの州において、各々のパートナーシップ法における立法措置により、パートナーシップ自体に訴訟の当事者能力が付与されているのが実状となっていること
  • パートナーシップは、自らの名において不動産等の財産権を取得または譲渡することが認められており、パートナーシップの名義で登記を行うことも可能であること

過去にデラウェア州LPSに対する課税処分が報じられた際、これらの特徴は、当該課税処分においても実質的に引用されており、また、既述のガイドラインや審査請求、地裁および高裁事例の論拠とも近似していることから、当該課税処分が、歴史的に見ても極めて広範囲に普及しているLPSおよび他の形態のパートナーシップ全体に拡大適用された場合、課税上内外の投資家に著しい影響を与える可能性があることが懸念されていた。

6.本件最高裁判決の影響

本件最高裁判決は、まさに、これらの懸念を具現化したものとなった。すなわち、本件最高裁判所における判断の主眼は、特定のLPSや個別のパートナーシップ契約ではなく、その「準拠法」に置かれており、当該「準拠法」において定められる「法人格の付与」や「権利義務の帰属主体」といった組織体の属性に基づき、本件各LPSを日本の租税法上の「法人」に該当すると判示しているのである。結果として、同じ準拠法に基づき設立された別のLPSについて、今回最高裁が判示した基準に基づいて同様の検討を行った場合、そのすべてが同様の論拠により、日本の租税法上「法人」に該当するものとされる可能性がある。

さらに深刻なことに、これまでパススルー課税を適用してきた、米国デラウェア州改正統一リミテッド パートナーシップ法と近似する法律に準拠して設立された米国の他州のLPSや他国の事業体についても、同様の判断基準が適用され、結果、日本の租税法上「法人」に該当するという判断がなされるのではないかという懸念が生じる。

なお、同様に、外国の事業体の日本の租税法上の法人該当性が争われている事案として、英国領バミューダ諸島の法律に基づき組成されたLPSに関する事案がある。平成26年2月5日の東京高裁の判決で、当該LPSは日本の租税法上の法人に該当しないとする判示がなされ、それに対して原処分庁が最高裁に対して上告していたが、最高裁は平成27年7月17日に国側の上告受理の申し立てを退け、納税者勝訴の高裁判決が確定している。

また、英国領ケイマン諸島の法律に基づき組成されたLPSについて日本の租税法上の取扱いが争われた事案(平成19年3月8日名古屋高裁判決、平成20年3月27日最高裁上告不受理決定)で、当該LPSは、日本の民法上の組合に該当する旨の判示がなされている(当該事案は、法人該当性が直接争われたものではなく、民法上の組合に該当するか否かが争点となったものである)。

4 LPSを法人として取り扱った場合の課税上の問題点

以下に、今回の最高裁判決を受け、LPSに代表される米国のLPSを我が国の課税上法人として取り扱った場合に生じる問題点を述べてみたい。

1.米国におけるLPSの課税上の取扱い

米国のLPSは、課税上パススルー課税を選択することが一般的であり、その場合、出資者である各パートナーが当該LPSが稼得する所得を分配割合に応じて自らの損益として認識し、各々が申告納税等を行うことになる。日本の投資家の場合、一般に、LPSが稼得する所得の種類により、自らが米国の税務申告書を作成の上、申告納税するか、または、米国における源泉徴収により課税関係が終了する。いずれにせよ、その出資者であるパートナーが納税義務を負うことになり、LPS自体が米国において所得(法人)税の課税主体となることはない。

2.従来の日本におけるLPSの課税上の取扱い

従来、米国のLPSは、我が国の課税上任意組合と同様にパススルー課税の適用を受けており、LPSに投資した我が国投資家の日本における課税関係は、基本的に法人の場合は法人税基本通達14-1-1~2、個人の場合は所得税基本通達36・37共-19~20の規定に従い、おおむね以下のとおりとなっていた。

1) 損益の認識

LPSが行った取引は、任意組合等の場合に準じて、パートナーたる投資家自らが行ったものとみなし、そこで生じた損益は、実際の利益分配や損失負担の有無にかかわらず、それぞれの分配割合に応じて自らの損益として認識されていた(なお、平成17年度の税制改正により、特定組合員に該当する法人および個人に対して、組合事業から生じた損失の損金不算入や損益通算を制限する規定が導入されている(措法67の12、41の4の2等))。

2) 外国税額控除

上記1)で認識した損益は、通常、我が国の法人税または所得税の申告上、外国税額控除を適用する際の国外源泉所得を構成し、米国において自ら申告納税する米国の所得税(法人所得税を含む)やLPS側で源泉徴収された所得税は投資家において直接外国税額控除の対象となっていた。

3.日本企業に係るLPS課税の問題点

今回の最高裁判決に従い、米国のLPSを課税上パススルー事業体ではなく(外国)法人として取り扱った場合、実務上、日本企業に対して以下のような問題が生じる可能性がある。これらは、主としてLPSの設立地国である米国におけるLPSの取扱い(パススルー課税)と、そのパートナーである投資家の居住地国である日本における取扱い(法人課税)が異なることから生じるものである。

1) 損益の認識

投資対象であるLPSが法人として取り扱われる以上、当該LPSが稼得する損益は、利益の分配(すなわち配当)が行われるまで投資家において認識されることはない。したがって、LPSで生じた所得は、実際に配当が行われるまで投資家において課税されない反面、投資家がLPSにおいて生じた損失を自らの損失として取込み他の所得と通算することも認められない。

LPSの損失を法人投資家が認識するためには、当該LPSに対する出資持分について、法人税法に規定する評価損の規定(法法33②、法令68①二)を適用する等の他はないが、当該評価損の計上は極めて特殊な場合に限定されており、実務上その適用は困難なことが多い。

2) 外国税額控除/外国子会社配当等益金不算入

既述のとおり、LPSが米国でパススルー課税を選択する以上、源泉税を除き、米国でLPS自身が納税主体となって所得税等が課税されることはなく、あくまでも、その出資者であるパートナーが自らの名において申告納税義務等を負うこととなる。このため、各投資家が納税義務者等として米国で納税した各種の税金は、本来当該各投資家自らが直接納付した外国所得(法人)税として直接外国税額控除の対象とすべきものである。

しかしながら、LPSを法人として取り扱うと、実際にLPSで発生した利益を配当等の形で日本に還流させ益金として認識しない限り、外国税額控除の限度額を計算するために必要な国外所得を認識できず、結果として、税額控除が適用できなかったり、あるいは、その適用時期が翌期以降にずれ込む恐れがある。

また、この場合、自らの名前で課税された米国所得(法人)税について、果たして、(i)自らが直接課税された外国所得(法人)税として直接外国税額控除を適用すべきなのか、また、(ii)投資家が内国法人の場合、投資先のLPSを外国子会社として取り扱い、LPSの利益を当該外国子会社からの配当として取り扱うことで外国子会社配当益金不算入の適用が可能なのかといった疑問が生じる。

この点、米国ではパススルー課税の適用を受け、日本の課税上は外国法人として取り扱われる外国の事業体(従来は米国LLC等が該当)に係る取扱いとして、当該事業体の所得のうち構成員である内国法人に帰属する所得は、実際に利益の分配が確定したときに剰余金の配当等として認識し、(所定の要件を満たす限りにおいて)外国子会社配当益金不算入制度(法法23の2)の対象となり、また、こうした事業体に係る所得の分配額が確定した段階で構成員に対して課される外国法人税の額は、損金不算入となる外国源泉税等の額として取り扱われることとなる(法法39の2、法令78の2②、法基通9-5-5)。したがって、LPSを法人として取り扱った場合、LPSについてその出資者が自らの名義で米国で納税した外国法人税等は、LLC同様上記の取扱いを受ける可能性がある。

また、外国子会社配当益金不算入制度は法人に対してのみ適用が認められており、個人の納税者の場合、LPSを法人として取り扱う以上、LPSから実際に利益の分配を受けた時にその金額を配当所得の金額として認識し、原則として通常の累進税率で所得税等の課税を受けることになる。

3) タックス ヘイヴン対策税制

設立国である米国においてパススルー課税が適用される以上、LPS自らが納税義務者として米国で納税すべき税金は生じない。このため、法人として取り扱われる当該LPSの米国における実効税率は20%未満となり、その出資者たるパートナーの50%超が我が国の投資家(個人および法人を問わない)で占められている場合、現行法令の文理解釈上、LPSはタックス ヘイヴン税制上の特定外国子会社等に該当し、所定の適用除外規定(措法66の6③)を満たさない場合、当該LPSに対して10%以上の持分を有する投資家は、LPSが稼得する所得に対して、利益分配の有無にかかわらず我が国の法人税法上合算課税の対象とされるのではないかという懸念が生じる。また、LPSが特定外国子会社等に該当する限りにおいて、適用除外規定の判定は当該LPSの事業活動等に基づき行うこととなる。これらは米国LLCが我が国の課税上法人とされて以来長らく様々な議論の対象とされてきた点でもあり、実務上明確な取り扱いが待たれるところである。

4) 租税条約の適用

LPSにパススルー課税を適用した場合、我が国が締結した租税条約の適用上、あくまでも、当該LPSのパートナー(租税条約上相手国の居住者に該当する者)をその適用対象とし、我が国と当該パートナーの居住地国(複数のパートナーが異なる国の居住者である場合には当該複数の国々のそれぞれ)との間の租税条約を適用すべきことになる。

しかし、LPSを法人課税の対象とした場合、パススルー課税の場合のように、各パートナーの各居住地国との条約をそれぞれ適用することはない。では、各パートナーに代わってそのようなLPS自体が租税条約の適用対象になるかと言えば必ずしもそうではなく、あくまでも、日本が締結している各租税条約の規定(特に租税条約の適用対象者となる相手国(一方の締約国)の「居住者」の定義)に応じてその適用関係を判断することになり、場合によっては、LPSが租税条約の締結国に設立されたものであっても、租税条約が一切適用されないことも起こり得る。

現に内国法人が、米国においてパススルー課税を受ける米国LLCを通じて米国子会社の株式を100%所有し、当該子会社から当該LLC経由で配当を受領する場合、LLCは我が国の課税上法人として取り扱われることから、日本の課税上子会社から支払われる配当はLLCが所得として認識すべきものとなり、日米租税条約上、第4条第6項(e)に規定する「日本の租税に関する法令に基づき当該LLCの所得として取り扱われるもの」に該当し、そのような配当については日米条約の特典は一切与えられないこととなり、結果として、米国の国内法の規定に従い30%の税率による源泉徴収の対象となる(日米租税条約に係る米国財務省のTechnical Explanation Page 19-20)。そして同様の取扱いがLPSを通した米国投資の場合にも適用される可能性がある。

5) 移転価格税制

LPSは外国法人として取り扱われるため、日本の投資家の出資比率が50%以上となる等の場合、当該LPSは移転価格税制上の国外関連者に該当することになり、理論上、我が国の移転価格税制の対象となる。

この場合、LPSが近年のBEPS(税源浸食と利益移転)における取組みの一環であるCBCレポート(多国籍企業のグループ各社に関する国別の所得、納税額、経済活動のグローバルな配分に関する情報を設立国ごとに記載した報告書で、親会社が所在する国の課税当局に一括して提出することが求められるもの)における報告対象となる可能性がある。

4.外国人投資家に係るLPS課税の問題点

上記に加え、投資家が外国法人・非居住者である場合、以下のような問題が生じる可能性がある。

1) 外国法人・非居住者の日本における課税関係の判定

従来、LPSの財産・稼得する所得は、原則として、各パートナーがそれぞれの持分に応じて保有・稼得するものとして、恒久的施設の有無や国内源泉所得の種類等に応じて、非居住者・外国法人に係る日本での課税関係が決定されていた。しかしながら、LPSが日本の租税法上法人として取り扱われる場合、かかる課税関係は、LPSの財産はLPSが外国法人として保有するものとし、LPSの所得はLPS自身の所得として取り扱った上で決定されることになる。

2) 事業譲渡類似株式の譲渡

日本に恒久的施設を有しない非居住者・外国法人が内国法人の株式等の譲渡を行った場合、当該株式の譲渡が、事業譲渡類似株式の譲渡(法令187①三ロ、所令291①三ロ)または不動産関連法人株式の譲渡(法令187①四、所令291①四)等に該当する場合、日本で課税関係が生じることになる。ここで、外国法人・非居住者が投資ファンド等が組成したLPSを通じて保有する内国法人株式の譲渡が、事業譲渡類似株式の譲渡や不動産関連法人株式の譲渡に該当するか否かの判定(保有割合や譲渡割合等)を行う際、原則として、LPSの他のパートナーを特殊関係株主等としてそれらの者の持分を合算して判定することとされているところ、その者のLPSに対する出資割合やLPSの運営への関与度合等一定の要件を満たす場合には、当該他のパートナーの持分を合算せずに自らの出資持分のみで当該判定を行うという特例の適用が認められている(措令39の33の2、26の31)。しかしながら、LPSが日本の租税法上の法人として取り扱われる場合、外国法人・非居住者がLPSを通じて保有する株式等はすべてLPS自身が保有するものとされることから、すべてのパートナーの持分を合算したところでかかる判定が行われ、結果として、当該特例は適用されない可能性がある。

3) 外国組合員に係る恒久的施設の特例

投資事業有限責任組合契約に類する外国の投資組合契約を締結している組合員である外国法人・非居住者で、当該投資組合契約に基づいて行う事業につき日本国内に恒久的施設を有する外国法人・非居住者に該当する者のうち、一定の要件を満たすものは、日本に恒久的施設を有しないものとして取り扱われることが特例として認められている(措法67の16、41の21)。しかしながら、LPSが日本の租税法上の法人として取り扱われる場合、LPSはもはや上記の対象となる投資組合契約には該当せず、本特例は適用されない可能性がある。

4) 租税条約

上記3.4)同様、LPSを法人課税の対象とした場合、パススルー課税の場合のように、その各パートナーの各居住地国との条約をそれぞれ適用することはなく、では、各パートナーに代わって、LPS自体が租税条約の適用対象になるかといえば必ずしもそうではなく、設立国においてそれ自体納税義務を負わないため租税条約上の「居住者」に該当せず、租税条約の適用が一部制限等されることがある。

例えば、米国法人が、米国においてパススルー課税を受けるLPSを通じて、日本子会社の株式を100%所有し、当該子会社から当該LPS経由で配当を受領する場合、配当の直接の受領者となる当該LPSそれ自体は米国で納税義務を負わないため、日米租税条約第4条第1項に規定する「居住者(本店または主たる事務所の所在地である米国において課税を受けるべきものとされる者)」に該当しないことから、配当に係る課税免除を規定する同条約第10条(3)(a)に規定する「直接またはいずれかの締約国の居住者を通じて間接的に配当支払法人の株式の50%超を配当を受けるものが特定される日以前12カ月継続して保有すること」という要件を満たさず、免税規定を享受することができなくなる可能性がある(本件の場合他の要件を満たす限りにおいて、同条約第4条(6)(a)により、第10条(2)(a)に規定する5%の軽減税率が適用される)。

5 おわりに

現時点において、今回の最高裁判決の影響がどこまで波及するかは明確ではないが、デラウェア州LPSが、今後、日本の租税法上法人として取り扱うこととされた場合、米国LLCと同様の取扱いが適用される可能性がある。また、過去にLPSを通じて行われた取引を遡及して修正することの要否や、本件事案の対象であるデラウェア州以外の州で組成された米国のLPSや米国以外の国で組成された各種パートナーシップ類似の事業体に対する同様の取扱いの適否についても慎重な検討が求められるであろう。

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