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法定実効税率および地方税率の改正について~消費税増税時期の延期を受けて~
Japan Tax Newsletter:2017年4月1日号
本ニュースレターでは、消費税増税延期に伴う関連制度への影響、および地方法人税・地方税の改正について解説を行う。(Japan Tax Newsletter:2017年4月1日号)
1 はじめに
平成28年6月2日の閣議決定(経済財政運営と改革の基本方針2016)により、消費税率10%への引上げについては、「世界経済が不透明感を増しており」、「増税すれば内需を腰折れさせかねない」として、平成29年4月1日から平成31年10月1日まで再延期されることが決定した。
これを受けて、平成28年11月18日、税制改正関連法(「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律」、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律」:以下「改正法」)が成立し、同11月28日付で交付・施行されている。本ニュースレターでは、消費税増税延期に伴う関連制度への影響、および地方法人税・地方税の改正について解説を行う。
2 消費税の改正
消費税率の10%引上げ時期が平成31年10月1日まで延期されることに伴い、軽減税率および適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入も2年半延期されることとなった。改正時期の変更の概略をまとめると以下のとおりとなる。
【図表1】 消費税の改正時期の概略
項目 |
改正前 |
改正後 |
請負工事等に係る経過措置の指定日 |
平成28年10月1日 |
平成31年4月1日 |
消費税10%引上げおよび軽減税率制度の開始 |
平成29年4月1日 |
平成31年10月1日 |
適格請求書発行事業者の登録申請受付開始 |
平成31年4月1日 |
平成33年10月1日 |
適格請求書等保存方式の導入時期 |
平成33年4月1日 |
平成35年10月1日 |
3 法人税実効税率および地方税率の改正
住民税および地方法人税については、平成28年度税制改正により、平成29年4月1日以後開始事業年度以降における、地方法人税の税率引上げ、法人住民税の法人税割税率の引下げ、および地方法人特別税の廃止(法人事業税に復元)が予定されていたが、これらの改正税率につき、税制改正関連法により適用時期が平成31年10月1日以後開始事業年度からの適用に延期された。これら改正税率のイメージを図で表すと次頁【図表2】のようになる。
【図表2】
注1) 地方法人税の税率引上げと、住民税法人割の税率引下げが同時に行われることにより、改正前後で両者を合わせた負担税率に変更はない。
注2) 法人事業税所得割の税率引上げと、地方法人特別税の廃止が同時に行われることにより、改正前後で両者を合わせた負担税率に変更はない。
この結果、資本金1億円超の外形標準適用法人の各事業年度における法定実効税率は以下のようになる。
注1) 住民税法人税割の超過税率は東京都における税率による。
注2) 事業税所得割の超過税率は東京都における800万円超の所得に対する税率による。
注3) 税効果会計の適用に当たっては、会計基準等における取扱いを検討する必要があり注意を要する。
また、資本金1億円以下の普通法人(外形標準課税不適用法人)の法定実効税率は次のようになる。
注1) 住民税法人税割の超過税率は東京都における税率による。
注2) 事業税所得割の超過税率は東京都における800万円超の所得に対する税率による。
注3) 税効果会計の適用に当たっては、会計基準等における取扱いを検討する必要があり注意を要する。
4 超過税率適用の地方公共団体について
地方税法では、標準税率(地方公共団体が課税する場合に通常よるべきものとされている税率)が定められているが、地方公共団体がそれぞれの自治体の実情に応じ、当該標準税率を超える超過税率を条例で定め、制限税率まで課税することが認められており、東京都や大阪府、愛知県等の大都市圏では超過課税が実施されているケースがある。
東京都においては、改正を反映した「東京都都税条例等の一部を改正する条例」(平成29年東京都条例第15号)が、平成29年第1回東京都議会定例会において可決され、平成29年3月31日に公布された。
5 改正による税効果会計への影響
法人税等および住民税等について、税効果会計における繰延税金資産および繰延税金負債を計算する際に用いる税率は、決算日において国会で成立している税法に規定されている税率による。1のとおり、平成28年11月18日に改正法が成立したことから、平成29年3月決算法人においては改正後の税率を使用することとなるが、単体納税法人においては、地方法人税増税部分と法人住民税減税部分の相殺により、実効税率における影響は微小と考えられる。ただし、連結納税適用法人については、適用する実効税率について、検討が必要である。
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