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資産課税に関する主要な見直しについて~平成29年度税制改正~

Japan Tax Newsletter:2017年8月1日号

平成29年度税制改正およびそれに伴う通達改正において、相続税の納税義務の範囲の見直し、取引相場のない株式評価の見直し等、資産課税に関連する改正が行われている。本ニュースレターでは、このうち主要なものについて解説を行う。(Japan Tax Newsletter:2017年8月1日号)

取引相場のない株式評価の見直しについて

1 はじめに

平成29年4月27日付の「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」(課評2-12、課資2-6、課審7-1)により、財産評価基本通達の改正が行われた。この中で特に重要と思われる項目は、取引相場のない株式の評価方法の見直しである。

この見直しは、上場企業の株価は景気変動に応じても変動するが、地域や中小企業に波及するまでには時間がかかることを踏まえ、中小企業の株価が著しく変動しないようにする等の観点から取引相場のない株式の評価方法について見直すこととなったものである。

本章では、主要な改正点である会社規模の判定基準の見直し、類似業種比準価額の計算方法見直しについて触れる。

なお、今般の改正は原則的評価方式により評価する株式に関するものである。したがって、改正の影響を受ける者は同族株主等であり、同族株主等以外の株主には影響がない。

2 会社区分と計算方式

まず、改正内容に入る前に、取引所の相場のない株式の原則的評価方式を確認しておく。原則的評価方式は、評価する株式を発行した会社を総資産価額、従業員数、および取引金額により大会社、中会社または小会社のいずれかに区分して、原則として次のような方法で評価をすることになっている。

  • 大会社

大会社は、原則として、類似業種比準方式により評価する。類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの「配当金額」、「利益金額」および「簿価純資産価額」の3要素を比準して評価する方法である。

なお、類似業種の業種目および業種目別株価などは、国税庁ホームページで閲覧できる。

類似業種比準方式の計算内容の改正については、4で取り上げる。

  • 中会社

中会社は、大会社と小会社の評価方法を併用して評価する。

評価額=類似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額 (相続税評価額により計算)×(1-L)

※Lの割合は、会社規模の判定に基づき、0.6、0.75、0.9の3段階で定められている。

  • 小会社

小会社は、原則として、純資産価額方式によって評価する。純資産価額方式は、会社の総資産や負債を原則として相続税法上の時価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの純資産額により評価する方法である。

3 会社規模の判定基準の見直し

上記2で触れたとおり、取引相場のない株式等を評価する際には、会社規模の判定により、計算内容が異なってくる。この会社規模の判定基準は、対象となる会社の直前期末1年間における取引金額、総資産価額、従業員数の構成により判定することとされている。

今回の改正では、この判定基準により、近年の上場会社の実態に合わせた改正がなされている(財評基通178、179)。

判定基準の改正内容は以下のとおりである。

4 類似業種比準価額方式の計算方法の見直し

類似業種比準価額方式の計算方法についても以下の通り見直しが行われた。

  • 類似業種の上場会社の株価(A)について「2年平均株価」を加える(財評基通182)

従前の計算では、類似業種の上場会社の株価(A)として使用する金額は、①課税時期の月、②課税時期の前月、③課税時期の前々月、④前年平均の株価のうち最も低いものを使用できることとされていた。今回の見直しでは、これらに加えて課税時期の月以前2年間平均の株価も使用できることとなった。 選択範囲が増えたことにより、上場企業の株価変動による取引相場のない株式の株価への影響額が緩和されることが見込まれる。

  • 配当金額、利益金額および簿価純資産価額の比重を「1:1:1」とする(財評基通180)

従前の計算では、下記の計算式のとおり、利益(c)の金額は5分の3を占めていたが、1の割合に変更されることとなった。

これにより、対象となる会社等が利益を上げた場合の株価への影響は以前に比べて抑えられるが、逆に損失を出して利益が少なくなった場合による株価への影響も小さくなることになる。

また、配当金や簿価純資産価額の金額の比重については、従前の5分の1から3分の1となり、これにより、配当金額や内部留保の多い会社のは株価は上昇する可能性がある。
 

配当金や簿価純資産価額の金額の比重について
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相続税等の納税義務の範囲の見直しについて

1 改正内容

国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる要件を、被相続人等および相続人等が相続開始前10年(現行:5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこととされた。国内に住所を有しない者であって日本国籍を有しない相続人等が国内に住所を有しない者であって相続開始前10年以内に国内に住所を有していた被相続人等(日本国籍を有しない者であって一時的滞在をしていたものを除く。)から相続または遺贈により取得した国外財産が、相続税の課税対象に加えられた(相法1条の3、相法2条)。

(注)贈与税の納税義務についても同様とし、平成29年4月1日以後に相続若しくは遺贈または贈与により取得する財産について適用される(相1条の4、相2条の2)。
 

改正内容
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※1 非居住被相続人等のうち相続等開始の時において国内に住所を有しておらず、相続等開始前10年以内に国内に住所を有していたことがあり、相続等開始前15年以内に国内に住所を有していた期間の合計が10年以下(当該期間引続き日本国籍を有していなかったものに限る)のもの

※2 相続人等が一時居住者(在留資格を有し国内に住所を有している期間が、相続等開始前15年以内で合計10年以下)に該当する場合、一時居住被相続人等(相続開始の時において在留資格を有し、かつ国内に住所を有していた被相続人等で、国内に住所を有していた期間が、相続等開始前15年以内で合計10年以下)または非居住被相続人等から取得した財産については国内財産のみに課税

※3 相続人等が一時居住被相続人等または非居住被相続人等から取得した財産については国内財産のみに課税

その他資産税関連の改正について

1 相続時精算課税制度と贈与税の納税猶予の併用適用

相続時精算課税制度に係る贈与が贈与税の納税猶予制度の適用対象に加えられた(旧措法70の7③削除)。

  • 平成29年1月1日以後に贈与により取得する資産について適用

2 認定相続承継会社の要件の見直し

非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度における認定相続承継会社の要件について、中小企業者であることおよび当該会社の株式等が非上場株式等に該当することとする要件が撤廃された(措法70の7の4②一ハ、旧措法70の7の4②一ホ削除)。

  • 平成29年1月1日以後に相続または遺贈により取得する財産について適用

3 広大地評価の見直し

広大地の評価について、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、適用要件が明確化される(財評基通20-2新設予定)。

  • 平成30年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価について適用

4 居住用超高層建築物に係る不動産取得税、固定資産税、都市計画税の課税方法の見直し

居住用超高層建築物の専用部分等に係る不動産取得税や固定資産税について、人の居住の用に供する専有部分にあっては、各区分所有者ごとの税額を算出する際に用いる専有床面積を、全国における居住用超高層建築物の各階ごとの取引価格の動向を勘案して補正する措置がとられた(都市計画税についても同様)(地法73の2、地改法附則10・地法352、地改法附則17)。

  • 平成29年4月1日以後に新築された居住用超高層建築物の専有部分等の平成30年4月1日以後の取得に対して課すべき不動産取得税について適用
  • 平成29年1月2日以後に新築された居住用超高層建築物に対して課する平成30年度以後の年度分の固定資産税および都市計画税について適用

5 登録免許税の税率軽減措置の適用期限延長

土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限が2年間延長された(措法72①)。

例)売買による所有権の移転の登記

本  則:1,000分の20
軽減措置:1,000分の15
適用期限:【改正前】平成29年3月31日まで
                  【改正後】平成31年3月31日まで

  • 平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に受ける登記から適用

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