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中小企業等経営強化法の概要

Japan Tax Newsletter:2016年12月1日号

「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」(中小企業等経営強化法)が平成28年7月1日に施行された。同法の施行により経営力向上を志向する中小企業者等は、各種金融支援や固定資産税の軽減措置を受けることができる。中でも固定資産税の減税措置は初の試みであり、赤字企業にも効果があると注目されている。本ニュースレターでは、制度の概要について固定資産税の軽減措置を中心に解説する。(Japan Tax Newsletter:2016年12月1日号)

1 はじめに

「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」(中小企業等経営強化法)が平成28年7月1日に施行された。同法の施行により経営力向上を志向する中小企業者等は、各種金融支援や固定資産税の軽減措置を受けることができる。中でも固定資産税の減税措置は初の試みであり、赤字企業にも効果があると注目されている。本ニュースレターでは、制度の概要について固定資産税の軽減措置を中心に解説する。

2 制度の概要

事業分野ごとに生産性向上(経営力向上)の方法等を示した事業分野別の指針に沿って「経営力向上計画」を作成し、国の認定を受けた認定事業者は、金融支援等や固定資産税の軽減措置を受けることができる制度である。

3 申請事業者の範囲

制度を適用できる申請事業者は中小企業者等であり、以下の(1)中小企業者および(2)中堅企業・その他政令で定める法人等(「中堅企業等」)をいう。その規模等により受けられる支援措置が異なるため、それぞれの定義を確認しておく必要がある。
それぞれに該当する者は次のとおりである。

(1)中小企業者

会社および個人で次表に該当する者(PDFの2ページを参照)

  • 企業組合、協業組合
  • 事業協同組合、事業協同小組合、商工組合、協同組合連合会その他の特別な法律により設立された組合
(2)中堅企業・その他政令で定める法人等(以下「中堅企業等」)

(1)のほか、次の者も中小企業等経営強化法の対象になることとされている((1)中小企業者に該当する者を除く)。

  • 資本金または出資の総額が10億円以下の会社または従業員数2,000人以下の会社および個人
  • 医業、歯科医業を主たる事業とする法人(医療法人等)、社会福祉法人、特定非営利活動法人で資本金もしくは出資の総額が10億円以下または従業員数2,000人以下の法人
  • 組合等

4 支援措置

(1)固定資産税の軽減措置

1)支援対象となる申請事業者
固定資産税の軽減措置を受けられるのは、3に述べた中小企業者等のうち、租税特別措置法上の中小事業者および中小企業者(以下「中小事業者等」)とされている。

定義は次のとおりである。

  • 租税特別措置法上の中小事業者
    常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人
  • 租税特別措置法上の中小企業者

→ 資本金または出資金の額が1億円以下の法人、ただし以下の法人を除く
• 発行済株式または出資の総数または総額の2分の1以上が同一の大規模法人1に所有されている法人
• 発行済株式または出資の総数または総額の3分の2以上を2以上の大規模法人に所有されている法人

→ 資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人

1 資本金もしくは出資金が1億円を超える法人、資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人。中小企業投資育成会社を除く。 

2)対象となる設備

固定資産税の軽減措置の対象となるのは、生産性を高める機械装置で下記に該当するものとされている(「経営力強化設備等」)。

  • 1台または1基の取得価額が160万円以上のもの
  • 販売開始から10年以内のもの
  • 旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産性、精度、エネルギー効率等)が年平均1%以上向上しているもの
    (生産性向上設備投資促進税制のA類型の要件から最新設備の要件が求められないものとおおむね一致)

3)軽減措置内容

適用期間(平成28年7月1日から平成31年3月31日)内に認定経営力向上計画に基づいて取得した経営力向上設備等に該当する機械装置について、当該機械装置に対し新たに固定資産税が課されることになった年度から3年分に限り、当該設備の課税標準が2分の1に軽減される。

事業年度に関係なく、また、平成31年については3月31日までに取得した設備が対象であり念のため留意されたい。

(2)固定資産税の軽減措置以外の支援措置

その他の支援措置の一覧と概要は次のとおりである。なお、適用対象者は()の中に表示しており、それぞれの定義は3のとおりである。

1)商工中金のよる低利融資(中堅企業等、中小企業者)

商工中金の独自の融資制度により低利融資が受けられる。

2)中小企業信用保険法の特例(中小企業者)

中小企業者は経営力向上計画の実行(新事業の場合)に当たり、民間金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等の別枠の追加保証や保証枠の拡大が受けられる。

保証限度額の別枠・保証枠の拡大

 

通常枠

別枠

普通保険

2億円(組合4億円)

2億円(組合4億円)

無担保保険

8,000万円

8,000万円

特別小口保険

1.250万円

1.250万円

新事業開拓保険

2億円→3億円

(保証枠の拡大)


3)中小企業投資育成株式会社法の特例(中小企業者)

通常の投資対象(資本金3億円以下の株式会社)に加えて、中小企業者のうち資本金額が3億円を超える株式会社も中小企業投資育成株式会社から投資を受けることが可能となる。

4)日本政策金融公庫によるスタンドバイ クレジット(中小企業者)

中小企業者の海外支店または海外現地法人が日本政策金融公庫の提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける場合に、信用状を発行して債務の保証を実施できる。

5)中小企業基盤整備機構による債務保証(中堅企業等(組合等を除く))

信用保険法の特例が措置されていない中小企業者以外の者が、経営力向上計画を実行するために必要な資金について、保証額最大25億円の債務保証を受けられる。

6)食品流通構造改善促進機構による債務保証(中堅企業等、中小企業者)

食品製造業者等が民間金融機関から融資を受ける場合で、信用保証を使えない場合や巨額の資金調達が必要となる場合に、食品流通構造改善促進機構による債務保証を受けられる。

支援措置別の利用可能申請者は、PDF4ページの表を参照。

5 申請手続

各種支援措置を受けるためには、経営力向上計画を策定し、各事業分野別の主務大臣に提出・認定を受けることが前提となる。

(1)経営力向上計画の策定

事業者のa)現状認識、b)経営力向上の目標および向上の程度を示す指標、c)経営力向上の内容、d)経営力向上を実施するために必要な資金の額およびその調達方法、e)経営力向上設備等の種類を記載する。

本制度は経営力向上事業者を後押しする制度であるが、経営力向上の内容として「中小企業等の経営強化に関する基本方針」では、「経営資源を事業活動において十分効果的に活用すること」と定義し、その判断基準となる指標を「労働生産性」としている。さらにこの基本方針に基づき製造業、小売業・卸売業他12の事業分野(業種)別に我が国の中小企業等が稼ぐ力を向上させるために取り組むべきアクションを「事業分野別指針」として定めている。策定する計画に盛り込まれる「経営力向上」の内容は、これら基本方針、事業分野別指針と適合している必要がある。

(2)申請書の提出

1)提出先

各事業分野の主務大臣に提出することとされており、事業分野ごとに提出先が異なるため、中小企業庁ホームページの「経営力向上計画策定・活用の手引き」を参照する。

2)提出書類

a)固定資産税の軽減措置を受けない場合(金融支援を受ける場合)

申請書(原本)、申請書(写し)、チェックシート、返信用封筒

b)固定資産税の軽減措置を受ける場合

  • 申請書(原本)、申請書(写し)、工業会等の証明書等(以下「工業会証明書」)(原本)、チェックシート、返信用封筒(申請書については写しを最低2通、証明書については最低1通コピーを取る)
  • 固定資産税(償却資産税)の申告の際に、申請書の写し、申請書の認定書の写し、証明書の写しを申告書類とともに市町村等に提出する

3)変更申請

経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が、当該認定に係る経営力向上計画を変更しようとするとき(設備の追加等)は、その認定をした主務大臣に変更の認定を受ける必要がある。

(3)制度の具体的な利用方法

固定資産税の軽減措置を例にとって手続順に実施事項を記載する。

1)手続(PDFの5ページの図を参照。)

2)各段階での留意点等

各段階における留意点等は次のとおりである。

【申請書類の準備段階】

  • 経営力向上計画は申請者の属する事業分野の事業分野別指針を踏まえ作成する
  • 固定資産の取得から60日以内に申請書類が受理される必要がある(受理であり認定ではない)
  • 工業会証明書は生産性向上設備の証明書とは異なるため、固定資産税の軽減措置用に別途、入手する必要がある
  • 工業会証明書を添付しない設備は、申請する計画において記載することができない

【経営力向上計画の申請】

  • 申請書の提出先は申請者の属する業種により提出先が異なるため「経営力向上計画策定・活用の手引き」で確認する
  • 申請書等は経営力向上計画の申請時だけでなく、固定資産税の申告時も利用するためコピーを取っておく(申請書は最低2通、証明書は1通)
  • 申請から認可までは通常30日程度かかる

【固定資産税の申告】

  • 年末までに認定を受けた設備についてのみ固定資産税の軽減措置を受けることができる

6 留意点

(1)制度に関する留意点

1)複数の事業分野にまたがる場合

事業分野が複数にわたり、指針が複数ある場合、それぞれの指針に該当している必要がある。なお、申請はいずれかの事業所管省庁に提出すればよいことになっている。

2)計画申請から認定までの期間

標準処理期間は30日(計画に記載された事業分野が複数の省庁の所管にまたがる場合は45日)。申請書に不備がなかった場合は通常30日(45日)以内に認定が得られる。申請書に不備がある場合は、各事業所管大臣からの照会や申請の差戻しが発生し、手続期間が長期化する場合があるので、余裕を持った申請が必要である。

3)経営力向上の目標が達成できなかった場合

経営力向上計画に基づいて取り組んだ結果、目標が未達だったことをもって認定を取り消すことはないが、経営力向上計画に係る事業が行われていない場合は、認定を取り消すことがある。

(2)固定資産税の軽減措置を適用する際に特に留意すべき事項

1)他の税制と重複適用

固定資産税の他の特例措置(再生可能エネルギー発電設備の特例措置等)以外の特例措置(生産性向上設備投資促進税制や中小企業投資促進税制等)は重複適用可能である。補助金を受けて購入した場合も適用は可能である。

2)申請手順

工業会証明書は設備を取得した後でなければ入手できない一方で、経営力向上計画の申請は工業会証明書のない設備は記載することができない。工業会証明書を入手してから計画申請すると認定までに時間を要することから、よりスムーズな認定取得に向けて以下の流れで手続を進めることが考えられる。

  • 設備の取得前に経営力向上計画を設備等の種類を記載せずに策定・申請し、計画の認定を受ける
  • 設備を取得後、工業会証明書を入手した後に経営力向上設備等の種類を記載した変更認定を申請する

設備を年末付近に取得し、年末までに計画認定が受けられない場合には翌年の固定資産税で軽減措置が適用されず、翌々年からの適用となるため、書類の入手、申請については慎重に取り組まれたい。

3)固定資産税の軽減措置を適用する場合の中小事業者等の判定

中小事業者等であるか否かは、対象となる設備の取得時だけでなく、固定資産税の賦課期日である各年1月1日時点でも「中小事業者等」に該当している必要がある。

4)リース取引の固定資産税軽減措置

所有権移転外リース取引については、リース会社を通して固定資産税の軽減措置を受けることができる。具体的には次のとおりである。

  • 中小事業者等は設備を決定しリース会社に手続を依頼する
  • リース会社は、リース見積書、固定資産税軽減額計算書、工業会証明書を中小事業者等に送付する
  • 経営力向上計画等を記載した申請書とその写しとともに、リース会社から入手した書類(リース見積書、固定資産税軽減額計算書、工業会証明書)を添付して主務大臣に申請をする
  • 主務大臣は、計画認定書を中小事業者等に交付する
  • 中小事業者等はリース会社に計画認定書の写しと計画申請書の写しを送付する
  • リース会社が自治体に納税手続を行う

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