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平成28年分個人確定申告~主要な改正項目について~

Japan Tax Newsletter:2017年2月1日号

本ニュースレターでは、平成28年分の所得税等から適用となる、主な税制改正項目のうち、「マイナンバー制度の導入」、「通勤手当の非課税限度額の引上げ」、「給与所得控除の上限額の引下げ」、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」についてその概要を解説する。(Japan Tax Newsletter:2017年2月1日号)

1 はじめに

今年も、個人の所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」)の確定申告を行う時期となった。平成28年分の所得税等の確定申告書の提出時期は、平成29年2月16日から平成29年3月15日までとなっており、そろそろ作成を始める人も多いであろう。

本ニュースレターでは、平成28年分の所得税等から適用となる、主な税制改正項目のうち、「マイナンバー制度の導入」、「通勤手当の非課税限度額の引上げ」、「給与所得控除の上限額の引下げ」、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」についてその概要を解説する。

なお、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用に当たっては、細かく適用要件が定められているため、十分にその要件を確認の上、適用の是非を検討されたい。

2 平成28年分から適用となる主な所得税等の改正項目と適用時期

平成28年分から適用となる主な所得税等の改正項目は下記のとおりである。

平成26年度、平成27年度および平成28年度の税制改正により決定されたものから構成されているが、1月1日からその適用が開始されるものと4月1日から適用が開始されるものに分かれている。

項  目
適用時期

マイナンバー制度の導入

平成28年
1月1日以降

通勤手当の非課税限度額の引上げ

給与所得控除の上限額の引下げ

給与所得者の特定支出の控除の特例の改正

未成年者口座内の少額上場株式に係る配当所得および譲渡所得等の非課税の創設

上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例の改正

国外転出をする場合の譲渡所得等の課税の特例の改正

臨時福祉給付金の非課税措置の改正および年金生活者等支援臨時福祉給付金の非課税措置の創設

公益社団法人等に寄付をした場合の所得税額等の特別控除制度の改正

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例

平成28年
4月1日以降

学資に充てるため給付される金品の非課税の範囲の拡大

特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例の改正(特定三世代同居対応改修に係る特例の創設)

既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の改正(三世代同居対応改修に係る税額控除制度の創設)

住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除等の改正(非居住者期間中に住宅を取得した場合)

こども銀行の預金等の利子の非課税の改正

クレジットカードによる国税の納付制度の創設

平成29年
1月4日以後納付

 

3 マイナンバー制度の導入

社会保障・税番号制度、いわゆるマイナンバー制度が導入され、平成28年分以降の所得税等の確定申告書、贈与税の申告書、消費税および地方消費税の確定申告書等には、マイナンバーの記載が必要となった。また、マイナンバーを記載した所得税等の確定申告書等を提出する際には、本人確認書類の提示または写しの添付が必要である。

マイナンバーの記載が必要な税務関係書類(納税申告書および調書等を除く。)については下記の国税庁ウェブサイトを参照されたい。

(1) 申告書の作成

平成28年分の所得税等の確定申告書の様式から、マイナンバーを記載する欄が設けられている。所得税等の確定申告書には、申告書本人のマイナンバーの他、控除対象配偶者、扶養親族(16歳未満含む)および事業専従者のマイナンバーの記載も必要である。

(2) 申告書の提出

マイナンバーを記載した所得税等の確定申告書を所轄税務署へ提出する際は、申告者本人の本人確認書類の提示または写しの添付が必要となる(自宅等からe-Taxで送信する場合には不要)。なお、配偶者(特別)控除の適用を受ける配偶者、扶養親族、事業専従者の本人確認書類の提示または写しの添付は不要である。

本人確認とは、(i)記載されたマイナンバーが正しい番号であることの確認(以下「番号確認」)と、(ii)申告書等を提出する者が番号の正しい持ち主であることの確認(以下「身元確認」)をいい、本人確認書類とは、(i)番号確認のための通知カードまたは住民票の写し等と、(ii)身元確認のための運転免許証またはパスポート等をいう。なお、マイナンバーカードを持っている場合は、マイナンバーカードのみで本人確認が可能である。

なお、本人確認書類の写しを添付する場合は、「添付書類台紙」に貼付することになる。

(3) マイナンバーの記載省略

1) 本人交付書類はマイナンバーの記載不要

平成27年10月2日の租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令により、個人情報の漏えいや滅失等の防止のため、平成28年1月以降も、給与等の支払を受ける者に交付する源泉徴収票等にはマイナンバーの記載は不要とされた。

なお、税務署に提出する源泉徴収票等にはマイナンバーの記載が必要である。

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 上場株式配当等の支払に関する通知書
  • 退職所得の源泉徴収票
  • 特定口座年間取引報告書
  • 公的年金等の源泉徴収票
  • 未成年者口座年間取引報告書
  • 配当等とみなす金額に関する支払通知書
  • 特定割引債の償還金の支払通知書
  • オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書

 

2) 平成28年度税制改正によるマイナンバーの記載の見直し

平成28年度税制改正により、税務関係書類へのマイナンバーの記載について、以下のとおり改正された。

マイナンバーの記載不要書類の拡充

以下の税務関係書類については、マイナンバーの記載が不要となった。

【平成28年4月1日以後提出すべきものについて適用】

税務署等には提出されない書類であって、提出者等のマイナンバーの記載を要しないこととした場合であっても所得把握の適正化・効率化を損なわないと考えられる書類へのマイナンバーの記載は要しないこととされた。

  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の配偶者特別控除申告書
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 


【平成28年4月1日以後に支払の確定する配当等や同日以後に特定口座開設届出書等を提出する場合等について適用】

個人が、下記告知等をする場合で、その告知等を受ける金融機関等が、その告知等をする者のマイナンバーその他の事項を記載した帳簿を備えているときは、その告知等をする方のマイナンバーの告知または特定口座開設届出書等への記載を要しないこととされた。

  • 利子・配当等の受領者の告知
  • 無記名公社債の利子等に係る告知書の提出
  • 譲渡性預金の譲渡等に関する告知書の提出 


【平成29年1月1日以後提出すべきものについて適用】

申告書等の主たる手続と併せて提出され、または申告等の後に関連して提出されると考えられる書類へのマイナンバーの記載は要しないこととされた。

  • 所得税の青色申告承認申請書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 支払調書等の光ディスク等による提出承認申請書(兼)本店等一括提出に係る承認申請書 


扶養控除等申告書等へのマイナンバーの記載の特例

給与等の支払を受ける者が、平成29年1月1日以後次に掲げる申告書の提出をする場合において、給与等の支払者が一定の帳簿を備えることにより、マイナンバーの記載を省略できることとなった。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 退職所得の受給に関する申告書
  • 従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
  • 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書


帳簿として認められるのは、上記のマイナンバーが記載された申告書の提出を受けて作成されるものに限り、帳簿には(i)扶養控除等申告書に記載されるべき提出者本人等の氏名、(ii)住所、(iii)マイナンバー、(iv)帳簿の作成に当たり提出を受けた申告書の名称、(v)その申告書の提出年月を記載することが必要になる(国税庁「源泉所得税関係に関するFAQ」Q1‐3‐2、1‐3‐3等を参考に記載)。

※ 扶養控除等申告書以外の方法でマイナンバーを収集・管理している場合、平成29年分の扶養控除等申告書について、給与支払者と従業員との間での合意に基づき、従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバーについては給与支払者に提供済みのマイナンバーと相違ない」旨を記載した上で、給与支払者において、既に提供を受けている従業員等のマイナンバーを確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示するのであれば、扶養控除等申告書の提出時に従業員等のマイナンバーを記載しなくても差し支えない。

なお、給与支払者において保有・管理しているマイナンバーとマイナンバーの記載が省略された者に係る扶養控除等申告書については、適切かつ容易にひも付けられるよう管理しておく必要があるため、留意されたい(国税庁「源泉所得税関係に関するFAQ」Q1‐3‐5、1‐5‐1を参考に記載)。

4 通勤手当の非課税限度額の引上げ(所令20の2)

通勤手当の非課税限度額の上限が月額10万円から15万円に引き上げられた。これにより、おおむね200km程度の新幹線通勤がカバーされることになる。

改正後の非課税限度額は、平成28年1月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用される。

※ 平成28年4月の改正前に支払われた通勤手当は、改正前の非課税限度額を適用したところで源泉徴収が行われているため、改正後の非課税限度額を適用した場合に過納税額となる場合には、平成28年の年末調整にて精算する必要があるため、留意されたい。

区分

課税されない金額

改正後

改正前

(i)交通機関または有料道路を利用している人に支給する通勤手当

1カ月当たりの合理的な運賃等の額
(最高限度150,000円

1カ月当たりの合理的な運賃等の額
(最高限度100,000円)

(ii)自動車や自転車等の交通用具を使用している人に支給する通勤手当

通勤距離が片道2km未満である場合

(全額課税)

同左

通勤距離が片道2km以上10km未満である場合

4,200円

同左

通勤距離が片道10km以上15km未満である場合

7,100円

同左

通勤距離が片道15km以上25km未満である場合

12,900円

同左

通勤距離が片道25km以上35km未満である場合

18,700円

同左

通勤距離が片道35km以上45km未満である場合

24,400円

同左

通勤距離が片道45km以上55km未満である場合

28,000円

同左

通勤距離が片道55km以上である場合

31,600円

同左

(iii)交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券

1カ月当たりの合理的な運賃等の額
(最高限度150,000円

1カ月当たりの合理的な運賃等の額
(最高限度100,000円)

(iv)交通機関または有料道路を利用するほか、交通用具も利用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券

1カ月当たりの合理的な運賃等の額と(ii)の金額の合計額
(最高限度150,000円

1カ月当たりの合理的な運賃等の額と(ii)の金額の合計額
(最高限度100,000円)

 

5 給与所得控除の上限額の引下げ(所法28②③、57の2①)

平成26年度税制改正により上限が適用される給与収入金額と、給与所得控除の上限額がそれぞれ段階的に引き下げられる。

現行

収入金額A

給与所得控除額

162.5万円以下

65万円

162.5万円超

180万円以下

A×40%

180万円超

360万円以下

A×30%+18万円

360万円超

660万円以下

A×20%+54万円

660万円超

1,000万円以下

A×10%+120万円

1,000万円超

1,500万円以下

A×5%+170万円

1,500万円超

245万円(上限額)


太字部分が下表のとおりに改定される。

平成28年分の所得税

改正後

収入金額A

給与所得控除額

1,000万円超

1,200万円以下

A×5%+170万円

1,200万円超

230万円(上限額)


平成29年以後の所得税

改正後

収入金額

給与所得控除額

1,000万円超

220万円(上限額)

 

6 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の創設

(1) 制度の概要(措法35③~⑩⑬)

平成28年度税制改正により、相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた一定の要件を満たす家屋(以下「被相続人居住用家屋」)および相続開始直前において、その被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等(以下「被相続人居住用家屋の敷地等」)を相続または遺贈により取得をした相続人が、一定の要件を満たす譲渡をした場合には、譲渡所得の金額から3,000万円を特別控除することができることとなった。

(2) 適用対象者

相続または遺贈により被相続人居住用家屋と被相続人居住用家屋の敷地等との両方を取得した相続人が適用を受けられる。

また、一つの相続につき複数の相続人が本特例の適用要件を満たす場合には、それぞれの相続人において適用が受けられる。

(3) 適用対象期間(=譲渡期間の要件)

平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間であって、相続開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にした譲渡であることが要件とされている。(PDF7ページの図参照)

(4) 適用対象となる家屋および敷地等

本特例の対象となる家屋および敷地等は次のとおりである。

1) 被相続人居住用家屋

次の要件をすべて満たす家屋である。

  • 相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていたこと(被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物に限る)
  • 昭和56年5月31日以前に建築(新築)されたもの(「登記事項証明書」に記載されている「新築」の日付で判定すること)
  • 建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物)でないこと
  • 相続開始直前において被相続人以外に居住していた者(親族に限らず、賃貸等により居住していた者も含む)がいなかったこと

2) 被相続人居住用家屋の敷地等

相続開始直前において上記1)の被相続人居住家屋の敷地の用に供されていると認められる土地またはその土地の上に存する権利である。

(5) 適用対象となる譲渡

次の要件を満たす譲渡(以下「対象譲渡」)が本特例の対象となる。

1) 譲渡価額の要件

その譲渡の対価の額が1億円を超えないこと。

譲渡が複数回にわたり行われている場合には、それらを合計して1億円以下であることが必要である。

2) 譲渡をする資産の要件

次のa)またはb)に該当する資産の譲渡であること。

a) 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の譲渡または当該被相続人居住用家屋とともにするその敷地の用に供されている土地等の譲渡で次の要件を満たすもの

  • 相続の時から当該譲渡の時まで事業の用、貸付けの用(有償、無償問わない。以下b)において同じ)または居住の用に供されていたことがないこと
  • 譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定または基準として一定のもの1に適合するものであること

b) 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の取壊し、除却または滅失(以下「除却等」)をした後におけるその敷地の用に供されていた土地等の譲渡で次の要件を満たすもの

  • 相続の時から除却等の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと
  • 相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと
  • 除却等の時から譲渡の時まで、建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと

【空き家に係る譲渡所得のイメージ図】(PDF8ページの図参照)

1 「地震に対する安全性に係る規定または基準として一定のもの」とは、建築基準法施行令第3章および第5章の4の規定または国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準とされている。

(6) その他の主な適用要件

  1. 被相続人居住用家屋と被相続人居住用家屋の敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除等2他の特例の適用を受けていないこと。
  2. 同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと(1回の相続につき1人の相続人ごとに1回しか本特例の適用を受けることはできない)。
  3. 親子や夫婦等特別の関係がある人に対して譲渡したものでないこと。
    特別の関係には、この他生計を一にする親族、家屋を譲渡した後その譲渡した家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人等も含まれる。
  4. 他の居住用家屋取得相続人に対し、対象譲渡をした旨、対象譲渡をした日その他参考となるべき事項の通知をしなければならない。
  5. 本特例の適用を受けるためには、以下の書類を税務署に提出する必要がある。
  • 譲渡所得の金額の計算に関する明細書(譲渡所得の内訳書)
  • 被相続人居住用家屋およびその敷地等の登記事項証明書その他の書類
  • 被相続人居住用家屋またはその敷地等の売却契約書の写し等
  • 被相続人居住用家屋等確認書
  • 被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し3

2 固定資産の交換の特例、換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例、特定の土地等の長期譲渡所得の特例、特定の事業用資産の交換の特例などがある。

3 「家屋または家屋および敷地等を譲渡する場合」のみ提出の必要があり、「家屋の除却等をした後の敷地等を譲渡する場合」には提出の必要はない。

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