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中小企業優遇税制の見直しについて~平成29年度税制改正~

Japan Tax Newsletter:2017年7月1日号

全法人の99%を占め、国家財政および地域経済を支える中小企業に対しては、大企業に比して税制面で種々の優遇措置が講じられている。当該措置に関して、平成29年度税制改正(以下「本改正」)においては、中小企業の設備投資および生産性向上を更に後押しすべく、設備投資関連税制を中心として重要な改正が行われている。(Japan Tax Newsletter:2017年7月1日号)

1 はじめに

全法人の99%を占め、国家財政および地域経済を支える中小企業に対しては、大企業に比して税制面で種々の優遇措置が講じられている。当該措置に関して、平成29年度税制改正(以下「本改正」)においては、中小企業の設備投資および生産性向上を更に後押しすべく、設備投資関連税制を中心として重要な改正が行われている。本ニュースレターでは、以下の改正内容について、その概要を解説する。

  • 「中小企業投資促進税制の上乗せ措置」の「中小企業経営強化税制」への改組
  • 固定資産税の特例の拡充
  • 中小企業者等向け租税特別措置法の適用要件の見直し

2 優遇税制の適用対象 ~「中小法人等」、「中小企業者等」とは~

中小規模の企業については、一般に「中小企業」あるいは「中小法人」として一概に称される場合があるが、税制上は、「(法人税法上の)中小法人等」と「(租税特別措置法上の)中小企業者等」とに区別された上、適用対象となる優遇税制を異にする。本ニュースレターにて、中小企業に対する優遇税制の改正点を解説するに当たっては、まず、両者の定義および両者に適用される優遇税制の適用関係を概観する。

区分

概要1

主な優遇税制2













次のすべてを満たす法人

  • 資本金の額または出資金の額が1億円以下
  • 資本金の額または出資金の額が5億円以上である法人等(大法人)による完全支配関係がない
  • 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を直接または間接に保有されていない

 

  • 法人税率の軽減(法法66、措法42の3の2)
  • 欠損金の繰越控除制度の特例(法法57)
  • 欠損金の繰戻還付制度(法法80、措法66の13)
  • 交際費等の損金不算入制度の特例(措法61の4)
  • 特定同族会社の留保金課税の適用除外(法法67)
  • 貸倒引当金の適用(法法52)
  • 貸倒引当金の法定繰入率(措法57の9)
















中小企業者(次のすべてを満たす法人)または農業協同組合等

  • 資本金の額または出資金の額が1億円以下
    ⇒3,000万円以下の場合、特定中小企業者等
  • 発行済株式の1/2以上が同一の大規模法人(資本金1億円超の法人または資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人)に所有されていない
  • 発行済株式の2/3以上が複数の大規模法人に所有されてない

 

  • 試験研究費の税額控除の特例(措法42の4)
  • 所得拡大促進税制の特例(措法42の12の5)
  • 中小企業投資促進税制(措法42の6)
  • 商業・サービス業・農林水産業活性化税制(措法42の12の3)
  • 中小企業経営強化税制(措法42の12の4)
  • 少額減価償却資産の特例(措法67の5)

 

1 原則として、普通法人(公共法人、公益法人等、および協同組合等以外の法人)かつ資本または出資を有する法人を前提としている。次に掲げる普通法人および一般社団法人等または人格のない社団等については、各制度により取扱が異なるため、本ニュースレターでは説明を省略する。
「保険業法に規定する相互会社」、「受託法人」、「資本金または出資金を有しない法人」

2 租税特別措置法上の優遇税制のうち、法人税法上の「中小法人等」であることを前提とするものについては、法人税法上の「中小法人等」の欄に記載している。

3 中小企業投資促進税制の改組・縮減・期限延長(措法42の6)

中小企業者等が一定の機械装置等を取得または製作(以下「取得等」)して指定事業の用に供した場合に、特別償却または税額控除を選択適用することが認められている。なお、対象資産のうち、生産性向上に資する資産については、即時償却(⇔通常措置:30%特別償却)を認める等の上乗せ措置が設けられていたが、本改正において、中小企業経営強化税制(4参照)へと改組されたことに伴い、廃止されることとなった。また、通常措置については、適用期限の2年延長が行われた一方、上記税制の創設を機に、対象設備から器具備品が除外されるとともに税額控除限度額が縮小されている。制度の概要および改正点は以下のとおりである。

要件

青色申告書を提出する中小企業者等が平成31年3月31日までに対象資産を取得等して指定事業の用に供すること

a)

措置内容
(通常措置)

中小企業者等

特別償却:30% (税額控除は適用不可)

b)

特定中小企業者等3

特別償却:30% または 税額控除(注):7%

(注) 税額控除限度額:調整前法人税額の20%

c)

対象資産
(特定機械装置等)4

機械装置

1台・1基の取得価額が160万円以上のもの

 

測定工具・検査工具

1台・1基の取得価額が120万円以上のもの
(1台・1基の取得価額が30万円以上で、当期の取得価額の合計額が120万円以上となるものを含む)

d)

ソフトウエア

一の取得価額が70万円以上のもの
(一の取得価額が30万円以上で、当期の取得価額の合計額が70万円以上となるものを含む)

 

車両および運搬具

普通貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)

 

船舶

内航船舶

 

指定事業

ほぼ全業種(不動産業、物品賃貸業、電気業、娯楽業、風俗営業等は含まれない)

 

3 中小企業者等のうち、資本金が3,000万円以下の法人をいう。
4 国内への投資に限る。また、中古資産・貸付資産を除く。

【改正点】

a) 適用期限が2年延長された(改正前:平成29年3月31日まで)。

b) 生産性向上に資する一定の設備については、上記の通常措置に加え、以下の上乗せ措置の適用が認められていたが廃止され、次の「4 中小企業経営強化税制」に改組された。

・中小企業者等:即時償却 または 税額控除7%

・特定中小企業者等:即時償却 または 税額控除10%

c) 従来、中小企業投資促進税制単独で、調整前法人税額の20%が限度とされていたが、「4 中小企業経営強化税制」および「7 (1) 商業・サービス業・農林水産業活性化税制」を含めた中小企業向けの3税制の合計で調整前法人税額の20%が限度とされることとなった。

d) 従来、器具備品(一定の電子計算機、一定のデジタル複合機、試験または測定機器)が対象に含まれていたところ、除外されることとなり、工具(測定工具・検査工具)のみが対象とされることになった。

⇒b)の上乗せ措置廃止およびd)の対象資産縮減は、平成29年4月1日以降に取得等するものが対象となる。

4 中小企業経営強化税制の創設(措法42の12の4)

(1) 制度の概要

中小企業者等が、中小企業等経営強化法(以下「経営強化法」)の認定を受けた経営力向上計画(4 (3)脚注10参照)に基づき一定の設備を取得等して、指定事業の用に供した場合、即時償却または税額控除を選択適用することが認められることとなった。

既存の中小企業投資促進税制(3参照)においては、対象資産のうち、生産性向上に資する資産について即時償却を認める等の上乗せ措置を設けていたが、本税制は当該措置を改組する形で創設されたものである。

本税制の概要は以下のとおりである。

要件

青色申告書を提出する中小企業者等が経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき平成29年4月1日から平成31年3月31日までに特定経営力向上設備等を取得等して指定事業の用に供すること。

措置内容

中小企業者等

即時償却 または 税額控除:7%

特定中小企業者等

即時償却 または 税額控除:10%

対象資産
(特定経営力向上設備等)5

要件等

資産種類6

生産性向上設備【A類型】

収益力強化設備【B類型】

一定規模
(1台1基または一の取得価額)

(工業会等が発行した証明書が必要)

(投資計画について、税理士等による事前確認、経済産業局による確認が必要)

販売開始

経営力向上

機械装置

10年以内

生産性が旧モデル比年平均1%以上向上7

年平均5%以上の投資利益率8が見込まれると経産大臣の確認を受けた投資計画に記載されたもの

160万円以上

工具

5年以内

30万円以上

器具備品

6年以内

30万円以上

建物附属設備

14年以内

60万円以上

ソフトウエア

5年以内

なし

70万円以上

指定事業

中小企業投資促進税制および商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象事業となる事業
⇒ほぼ全業種が対象。但し、物品賃貸業、娯楽業(映画業除く)等の一部の事業は対象外。

5 国内への投資に限る。また、中古資産・貸付資産のほか、事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備、福利厚生施設に係るもの等を除く。
6 用途または細目に関する制限については、4 (2)参照。
7 生産効率、エネルギー効率、精度等の生産性を表す指標をもとに判定する。以下において同様。
8 (営業利益+減価償却費)の増加額÷設備投資額

(2) 対象設備に関する中小企業投資促進税制の上乗せ措置との対比

従来からの中小企業投資促進税制の上乗せ措置に対し、特別償却および税額控除の措置内容は同様であるものの、対象となる資産の範囲を拡充することにより、サービス業も含めて広く中小企業の生産性向上に資する措置となっている。具体的には、対象品目に建物附属設備および器具備品9が追加された点や、A類型について、最新モデルであることが要請されない点が挙げられる。

  • 対象設備の対比(括弧内は用途または細目に関する制限。他、規模要件があるが、記載を省略している。)

(従来)中小企業投資促進税制の上乗せ措置

(改正後)中小企業経営強化税制

先端設備【A類型】

生産性向上設備【A類型】

生産性が旧モデル比年平均1%以上向上

最新モデル

一定期間内((1)参照)に販売されたモデル

  • 機械装置
  • 器具備品(電子計算機、試験または測定機器)
  • ソフトウエア(情報収集機能および分析・指示機能を有するもの)
  • 機械装置
  • 工具(測定工具および検査工具)
  • 器具備品(制限なし)
  • 建物附属設備
  • ソフトウエア(情報収集機能および分析・指示機能を有するもの)

生産ライン等の改善に資する設備【B類型】

収益力強化設備【B類型】

年平均5%以上の投資利益率が見込まれると経産大臣の確認を受けた投資計画に記載されたもの

  • 機械装置
  • 工具(測定工具および検査工具)
  • 器具備品(電子計算機、デジタル複合機、試験または測定機器に限る)
  • ソフトウエア
  • 機械装置
  • 工具(制限なし)
  • 器具備品(制限なし)
  • 建物附属設備
  • ソフトウエア

9 器具備品については、品目追加というよりも、用途または細目の限定の解消がなされたものと評し得る。

(補足)

  • 器具備品:電子計算機については、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部または一部の提供を行う事業を行う法人が取得または製作をするものを除く。医療機器にあっては、医療保健業を行う事業者が取得または製作をするものを除く
  • 建物附属設備:医療保健業を行う事業者が取得または建設をするものを除く
  • ソフトウエア:複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のもの等は除く
(3) 本税制適用に要する手続

本税制は、中小企業投資促進税制の上乗せ措置の適用において要請された手続に加えて、事業分野別指針に沿って、「経営力向上計画10」を作成し、経営強化法の認定を受けることが必要となる。各類型における手続の概要は以下のとおりとなる。

生産性向上設備【A類型】

収益力強化設備【B類型】

① 工業会等から証明書を入手
「経営力向上計画」の申請・認定
③ 設備の取得・事業供用
④ 確定申告(証明書を添付)

① 税理士等による投資計画の事前確認
② 経済産業局による投資計画の確認
「経営力向上計画」の申請・認定
④ 設備の取得・事業供用
⑤ 確定申告(確認書を添付)

10 経営力向上計画とは、顧客データの分析を通じた商品・サービスの見直し、ITを活用した財務管理の高度化、人材育成等に自社の経営力を向上させるために実施する事業計画をいう。主務大臣が策定した「事業分野別指針」に基づいて下記の事項等を記載する。
 ①企業の概要、②自社の現状認識、③経営力向上の目標および経営力向上による経営の向上の程度を示す指標、④経営力向上の内容

上記のうち、従来からの中小企業投資促進税制の上乗せ措置において要請された手続については、本ニュースレターにおいては説明を割愛するが、新たに要請されることとなった経営強化法の認定手続についてのスキーム図を紹介すると次のとおりである。

平成29年度税制改正の概要について
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5 固定資産税の特例の拡充(地附則15㊸)

(1) 制度の概要

平成28年度の税制改正において、中小企業者等が一定の期間内に経営強化法の認定を受けた経営力向上計画(4.(3)参照)に基づき一定の設備を取得等して、事業の用に供した場合、最初の3年間、固定資産税の課税標準を1/2に軽減する優遇措置が創設された。

当初、当該措置の対象資産は機械装置に限定されていたところ、本改正により、対象となる地域・業種を限定した上で、新たに一定の工具、器具備品および建物附属設備が追加された。対象設備および業種・地域限定は以下のとおりである。なお、機械装置については、従来どおり、業種・地域の制限は生じない。

  • 対象設備
 

資産種類

販売開始

一定規模

経営力向上要件

業種・地域制限

 

機械装置

10年以内

160万円以上

旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標が年平均1%以上向上

無し

追加

測定工具・検査工具

5年以内

30万円以上

有り

追加

器具・備品

6年以内

30万円以上

追加

建物付附属設備

14年以内

60万円以上


基本的に、上述の中小企業経営強化税制における生産性向上設備【A類型】に係るものと同様であるが、以下の点で異なる。

・中小企業経営強化税制においては、物品賃貸業、娯楽業(映画業除く)等の一部の事業は適用対象外となるが、本税制については、原則として業種制限が付されていない(ただし、機械装置以外については、一定の地域において業種制限が生じる)

・建物附属設備は、償却資産として課税されるものに限られる

  • 適用時期

・機械装置:平成28年7月1日から平成31年3月31日までに取得したもの

・機械装置以外:平成29年4月1日から平成31年3月31日までに取得したもの

  • 業種・地域制限(機械装置以外)

地域(平成28年度数値で判定した場合)

業種

最低賃金が全国平均未満の地域
下欄7都府県以外

すべての業種が対象

最低賃金が全国平均以上の地域
東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都

労働生産性が全国平均未満の業種11のみが対象

11 平成24年経済センサスによると、一部の小売業(織物・衣服、飲食料品等)、宿泊業、飲食店、理美容、自動車整備業、医療業、社会保険・福祉・介護業等のサービス業(医療業、社会保険・福祉・介護業は東京を除く)が該当。

(2) 本税制適用に要する手続

前述の中小企業経営強化税制における生産性向上設備【A類型】の適用に要する手続と同様の手続が必要となる。
⇒工業会等が発行した証明書の入手 および 「経営力向上計画」の申請・認定 が必要となる。 

(3) 本税制に関する特記事項

前述の中小企業投資促進税制および中小企業経営強化税制における特別償却および税額控除は、主として黒字企業にその恩恵がもたらされるものであるが、固定資産税は赤字企業においても課せられる税金であるため、本税制は、赤字企業においても節税効果を享受し得る。

6 中小企業者等向け租税特別措置法の適用要件の見直し(措法42の4他)

前述した改正事項は、おおむね優遇措置を拡充する内容であったが、本改正においては、優遇措置の適用要件の厳格化も盛り込まれている。具体的には、「中小法人等向けの法人税法上の優遇措置」と「中小企業者等向けの租税特別措置法上の優遇措置」(2.参照)のうち、後者(措法)(注)について、適用要件を見直し、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度においては適用を停止することとされた。これは、中小企業者等であっても、多額の所得を得ており、財務状態が脆弱とは認められない企業については、税制上の優遇を行う前提を欠くことを顧慮したものである。

(注)本改正において「試験研究費の税額控除の特例」および「貸倒引当金の法定繰入率」等の一部の税制については、法令上、適用要件の見直しの規定が置かれたが、他の税制については、平成31年4月1日前に適用期限を迎えるため、本改正においては規定が置かれていないものが大半となっている。このため、他の税制については、将来の税制改正の内容を確認する必要がある。

  • 適用対象となる事業者

中小企業者等であっても、平均所得金額が年15億円を超える事業年度においては、租税特別措置法上の優遇措置の適用は認められない。(⇔法人税法上の優遇措置は引き続き適用が認められる。)

適用対象外となる事業者
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  • 適用時期:平成31年4月1日以後に開始する事業年度より適用(附則62)

12 下記のような事由がある場合には、当該事由の内容に応じ、一定の調整を加える必要がある。
「設立後3年を経過していない場合」、「基準年度の所得に対する法人税の額に付き、「欠損金の繰戻還付制度」を適用済である場合」、「基準年度において合併、分割、現物出資等が行われている場合」など 

13 当該事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度

7 その他の改正項目 ~適用期限の延長~

(1) 商業・サービス業・農林水産業活性化税制(措法42の12の3)

中小企業者等が、アドバイス機関(商業・サービス業・農林水産業に関連する一定の機関)から経営改善に関する指導および助言を受け、適用期限内に対象設備を取得等して指定事業の用に供した場合に、特別償却または税額控除の選択適用を認める制度である。

(2) 中小法人等に係る軽減税率の特例(措法42の3の2)

中小法人等が、適用期限内に開始する各事業年度において、所得800万円以下の部分について、法人税率が15%(法法66による本則は19%)に軽減される制度である。

  • 適用期限内

改正前

改正後

平成29年3月31日まで

平成31年3月31日までに2年延長

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