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平成29年度税制改正による連結納税への影響 ~時価評価対象資産の範囲~

Japan Tax Newsletter:2017年6月1日号

平成29年度税制改正により、連結納税の開始または加入に伴う時価評価の対象とされる資産の範囲から「帳簿価額が1,000万円未満の資産を除外する」こととされた。この改正により、これまで議論の対象とされてきた連結納税の開始または加入に伴う自己創設営業権の時価評価は、平成29年10月1日以後は必要とされないこととされた。(Japan Tax Newsletter:2017年6月1日号)

はじめに

平成29年度税制改正により、連結納税の開始または加入に伴う時価評価の対象とされる資産の範囲から「帳簿価額が1,000万円未満の資産を除外する」こととされた。この改正により、これまで議論の対象とされてきた連結納税の開始または加入に伴う自己創設営業権の時価評価は、平成29年10月1日以後は必要とされないこととされた。

連結納税制度を適用する場合には、納税単位が変更される(単体→連結)ことから、単体納税制度の下で単体法人を納税単位とする課税関係を清算した後に連結納税制度の適用を受ける仕組みとするのが、税制の本来の在り方であるという考えの下、連結納税の開始または加入時に一定の法人について時価評価を行う制度とされている。つまり、一定の資産に係る時価評価を実施することにより、単体納税下での資産の含み損益について清算した上で、連結納税に参加することを求めているものである。

1 連結納税の開始または加入に伴う時価評価

連結納税に係る連結子法人となる内国法人で、以下に掲げる法人以外の法人については、連結開始直前事業年度又は連結加入直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の評価益又は評価損を、当該連結開始直前事業年度又は当該連結加入直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされている(法法61の11①、61の12①)。

<時価評価の対象外となる法人>

 

連結開始時

連結加入時

親法人を設立した株式移転に係る完全子法人

  • 連結親法人となる法人を設立した株式移転に係る完全子法人で、その後継続して連結親法人となる法人による完全支配関係があるもの

 

適格株式交換等(※)に係る完全子法人

 

  • 連結親法人となる法人またはその完全支配関係がある子法人が適格株式交換等(※)を行った際の完全子法人で、その後継続して連結親法人となる法人による完全支配関係があるもの
  • 連結親法人または連結子法人が適格株式交換等(※)を行った際の完全子法人

長期保有子法人等

 

  • 最初連結親法人事業年度開始の日の5年前の日から継続して連結親法人となる法人による完全支配関係がある子法人
  • 連結親法人となる法人またはその完全支配関係のある法人により設立され、その後継続して連結親法人となる法人による完全支配関係がある子法人
  • 適格合併、適格株式交換等(※)、適格株式移転により完全支配関係が生じた子法人のうち、被合併法人等の長期保有子法人等に準ずるもの
  • 連結納税グループ内の法人により設立された子法人
  • 適格合併、適格株式交換等(※)により加入した子法人のうち、被合併法人等の長期保有子法人等に準ずるもの

法令に基づく買取り等

  • 単元未満株式の買取り等により連結親法人となる法人による完全支配関係が生じた子法人
  • 単元未満株式の買取り等により連結親法人による完全支配関係が生じた子法人

(※)平成29年度税制改正により、全部取得条項付種類株式、株式併合、株式売渡請求による完全子法人化については株式交換「等」に含められ、適格要件を満たす場合には適格株式交換「等」として取り扱われることとされた。

2 時価評価資産の範囲と平成29年度税制改正

時価評価の対象となる資産は、連結子法人となる内国法人が、連結開始直前事業年度又は連結加入直前事業年度終了の時に有する固定資産、土地(土地の上に有する権利を含む)、有価証券、金銭債権及び繰延資産であり、以下に掲げるものを除くこととされている(法法61の11①、61の12①、法令122の12①)。

<時価評価の対象外となる資産>

従前より時価評価の対象外となる資産

平成29年度税制改正による追加資産

前5年内事業年度等において、一定の圧縮記帳等の適用を受けた減価償却資産

 

売買目的有価証券

 

償還有価証券

 

 

帳簿価額が1,000万円未満の資産

資産の含み損益がその子法人の資本金等の額の1/2または1,000万円のいずれか少ない金額に満たないもの

 

連結子法人となる法人との間に完全支配関係がある清算中の内国法人等の株式等で含み損があるもの

 

完全支配関係が生じてから2カ月以内に離脱した子法人の保有資産(事業年度をまたいでの離脱を除く)

 

連結納税の開始日に以下の事由により離脱する連結子法人の保有資産

  • 連結子法人を被合併法人とし、外部の法人を合併法人とする合併
  • 連結子法人を合併法人とする合併で、連結親法人との間に完全支配関係がなくなる場合の当該合併

 

 

3 平成29年度税制改正の影響

(1) 概要

時価評価の対象外とされる資産に「帳簿価額が1,000万円未満の資産」が追加されたことで、これまで議論の対象とされてきた連結納税の開始または加入に伴う自己創設営業権1の時価評価が必要とされないこととなった。

(2) 自己創設営業権に係る時価評価

連結納税の開始または加入に伴う時価評価において、これまでしばしば自己創設営業権が議論の対象とされてきたところである。議論の対象とされていたのは、

1) 自己創設営業権は時価評価の対象資産に該当するのか

2) 時価評価の対象資産に該当するとすれば、その評価方法はどのようなものが考えられるか

という点である。

このうち、1)に関しては、自己創設営業権は時価評価の対象資産となるという認識は、連結納税制度導入時から一般的であったと考えられる。すなわち、自己創設営業権は営業権の一種であり、営業権は減価償却資産である無形固定資産であるため、時価評価の対象とされる固定資産に該当する(法法2二十二、二十三、法令13八ヲ)。したがって、連結納税の開始時または加入時において営業権に価値があるのであれば、それは固定資産の含み益であり、その金額が1,000万円または資本金等の額の1/2未満である場合を除き、時価評価の対象資産となるものと考えられていたからである。

また、次に掲げることから、立法担当者又は税務執行の現場においてもこうした考えがあることが示されている。

  • 平成14年税制改正に伴う、財務省による配布資料において、「営業権に該当するものがあれば、金額基準により除かれない限り、時価評価の対象となると考えられます。」2と記載されている。
  • 平成16年度税制改正において、連結納税の開始又は加入に伴い自己創設営業権を計上する前提での改正が行われ、その点について財務省による解説がある3
  • 平成23年当時の東京国税局調査第一部調査審理課課長補佐による講演内容において、「自己創設の営業権についても営業権としての価値が認められるものであれば法人税法上の固定資産に該当することから時価評価の対象となると解しています。」4との解説がある。
  • 当時国税庁調査査察部所属の担当官が寄稿記事において「自己創設の営業権は、法人税法上固定資産に該当しますので、その価値(価額)が1,000万円以上である場合にはこれを時価評価することになります。」5と記載している。

上述のとおり、自己創設営業権が時価評価の対象資産となるとすると、次に2)の評価方法が問題となるが、この自己創設営業権に係る評価方法については法人税法上の定めがなく、また課税当局から評価の方法が示されることもなかったため、納税者が個別の状況に応じ合理的と考える方法で評価せざるを得ない状況が続いてきた。

特に、連結納税開始の場合の時価評価においては、その評価方法が定まらず、実務上は問題が生じていた部分である。(連結納税加入の場合には、買収金額等の、その時点での連結子法人となる法人の企業価値を表す何らかの指標が存在する場合が多いため、連結納税開始の場合と比べて評価の点で問題が生じにくかったといえる。)

(3) 平成29年度税制改正の内容

自己創設営業権は通常、法人において帳簿価額が付されているものではなく、簿外資産となっているものである。例えば外部の法人を買収した場合等では、通常、当該法人の超過収益力等に対して営業権を評価し、時価純資産額よりも高い金額で買収することが考えられる。このような状況下において、自己創設営業権を評価した場合には、比較的多額の評価額となることが想定されるため、上記2<時価評価の対象外となる資産>に掲げる「資産の含み損益がその子法人の資本金等の額の1/2または1,000万円のいずれか少ない金額に満たないもの」には該当しないケースが多い。そのため、従来、自己創設営業権の時価評価については、その時価評価の有無や評価方法につき議論の対象とされてきたところである。

平成29年度税制改正により、「帳簿価額が1,000万円未満の資産」が時価評価の対象外とする資産に含まれることとされたことにより、帳簿価額が付されていない自己創設営業権については、帳簿価額が1,000万円未満の資産として、時価評価の対象外とされることとなった。この改正は、平成29年10月1日以後に連結納税開始・加入の時価評価をする場合(=10月2日以後に連結納税を開始する場合または連結納税に加入する場合)に適用されることとなる。

1 自己創設された営業権であり(過去に時価評価したことがない限り)税務上の帳簿価額は零である。
2 出典 『日本型連結納税制度について』平成14年6月 社団法人日本租税研究協会
3 『平成16年版 改正税法のすべて』平成16年6月 財団法人大蔵財務協会
4 出典 「大規模法人に対する審理上の留意事項」長井伸仁氏 『租税研究』2011年(平成23年)4月号 社団法人日本租税研究協会
5 出典 「実務講座 法人税Q&A 連結納税制度に係るQ&A」窪田悟嗣氏 『租税研究』2011年(平成23年)7月号 社団法人日本租税研究協会

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