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リストリクテッド・ストックの導入と役員報酬の柔軟化について 〜平成28年度税制改正〜

Japan Tax Newsletter:2016年5月1日号

平成28年度税制改正では、役員給与における多様な株式報酬や業績連動報酬の導入促進等を図る観点から、「役員へ付与した株式報酬(リストリクテッド・ストック)を損金算入の対象とする等の制度整備」や「利益連動給与の対象となる指標の範囲について明確化」といった改正が行われている。本ニュースレターではその概要を解説する。(Japan Tax Newsletter:2016年5月1日号)

1 はじめに

平成28年3月29日、平成28年度税制改正法案が可決・成立し、改正税法が3月31日に公布された。

平成28年度税制改正では、役員給与における多様な株式報酬や業績連動報酬の導入促進等を図る観点から、「役員へ付与した株式報酬(リストリクテッド・ストック)を損金算入の対象とする等の制度整備」や「利益連動給与の対象となる指標の範囲について明確化」といった改正が行われている。本ニュースレターではその概要を解説する。

2 リストリクテッド・ストックの導入

(1)  改正の概要

リストリクテッド・ストックとは、法人が役員や従業員に対して、一定期間の譲渡制限が付された現物株式を報酬として付与するものである。その期間中は株式の譲渡が制限されるため、中長期の業績向上のインセンティブが付与され、また、株主目線の経営を促す効果を有する。

リストリクテッド・ストックについての改正の概要は次のとおりである。

  • 内国法人が個人から役務提供を受ける場合に、その対価として特定譲渡制限付株式(下記(2)参照)を交付したときは、その個人において所得税法等の規定により給与等課税事由が生じた日に役務提供を受けたものとする(法法54①)

つまり、給与等課税事由が生じた日に、特定譲渡制限付株式による給与についての損金算入ができることになる。

  • 役員給与の損金不算入制度について、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(事前確定届出給与)のその定めに関する税務署長への届出が不要となる給与に上記の特定譲渡制限付株式等による給与を加える(法法34①二)

(2) 適用対象となる特定譲渡制限付株式の要件

適用対象となる特定譲渡制限付株式の要件は次のとおりである。

  • 個人から役務提供を受ける内国法人又は当該内国法人との間に当該内国法人の発行済株式等の全部(自己株式を除く。)を保有する関係1がある法人の譲渡制限付株式(下記の要件に該当するものをいう。)であること(法法54①、法令111の2②)

Ÿ■ 譲渡について制限がされており、かつ、譲渡制限期間が設けられていること

Ÿ■ 個人から役務提供を受ける内国法人またはその株式を発行し、もしくは個人に交付した法人が株式を無償で取得することとなる事由2が定められていること

  • 役務提供の対価としてその個人に生ずる債権の給付と引換えにその個人に交付されるものその他その個人に給付されることに伴ってその債権が消滅するものであること(法法54①)

1 交付の直前に法人が当該内国法人の発行済株式等の全部を保有する関係があり、かつ、当該交付時から当該譲渡制限付株式に係る譲渡制限期間終了の時まで当該関係が継続することが見込まれている場合における、当該関係をいう。

2 当該個人の勤務の状況に基づく事由又はこれらの法人の業績その他の指標の状況に基づく事由に限る。

(3)  損金算入時期

個人の「給与等課税事由が生じた日」に役務提供を受けたものとして取り扱われるため、当該内国法人がその役務提供の対価として支給する特定譲渡制限付株式による給与は、「給与等課税事由が生じた日」の属する事業年度に損金算入することになる。

なお、当該個人において給与等課税事由が生じないときは、当該内国法人における役務提供を受けたことによる費用の額または当該役務の全部もしくは一部の提供を受けられなかったことによる損失の額は、損金算入ができないことになる。

また、特定譲渡制限付株式の1株当たりの交付時の価額、交付数、その事業年度に譲渡制限が解除された数等に関する明細書を確定申告書に添付しなければならない(法法54③)。

(4)  適用時期

平成28年4月1日以後に交付に係る決議(決議がされない場合には交付)をする特定譲渡制限付株式等について適用される(法附則24)。

3 利益連動給与の対象となる指標の範囲の明確化

(1)  改正の概要

法人が役員に対して支給する給与のうち定期同額給与や事前確定届出給与、利益連動給与に該当するものは損金の額に算入することとされている(不相当に高額な部分の金額および隠ぺい仮装経理によるものは除く)。

このうち「利益連動給与」の算定方法について、対象指標の範囲が以下のように改正され、純粋な利益指標(営業利益・経常利益等)に加え、自己資本利益率(ROE)、総資産利益率(ROA)等の一定の利益関連指標も含まれることが明確化された(法法34①三)3

改正前

改正後

利益に関する指標(有価証券報告書に記載されるものに限る。)を基礎とした客観的なもの

利益の状況を示す指標(利益の額、利益の額に有価証券報告書に記載されるべき事項による調整を加えた指標その他の利益に関する指標で、有価証券報告書に記載されるものに限る。)を基礎とした客観的なもの


3 同族会社に該当しない内国法人がその業務執行役員に対して支給する利益連動給与に限定される点は従来と同様である。

(2)  改正後の対象指標

改正後に指標として認められるのは、次に掲げる指標(2~5は利益に関するものに限る。)で有価証券報告書に記載されるものに限られる(法令69⑧)。

1

利益の額

2

1の利益の額に減価償却費、支払利息、その他の有価証券報告書に記載されるべき費用を加算した額
又は
1の利益の額から受取利息、その他の有価証券報告書に記載されるべき収益を減算した額

3

上記1、2の額の下記イ~ハの金額に占める割合
 イ 売上高、その他の有価証券報告書に記載されるべき収益の額
又は
     支払利息、その他の有価証券報告書に記載されるべき費用の額
 ロ 総資産の帳簿価額
 ハ 総資産の帳簿価額から総負債(新株予約権に係る義務を含む。)の帳簿価額を控除した金額
又は
上記1、2の額を発行済株式(自己株式を除く)の総数で除した額

4

上記1~3の数値が確定値4を上回る数値
又は
上記1~3の数値の確定値に対する比率

5

上記1~4に準ずる指標


4 前事業年度の上記1~3の数値、その他の当事業年度の目標とする指標の数値で確定しているものをいう。

(3)  適用時期

平成28年4月1日以後開始事業年度から適用される(法附則21)。

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