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平成29年度税制改正に伴う法人税基本通達等の改正

Japan Tax Newsletter:2017年11月1日号

このニュースレターでは、試験研究費の税額控除制度、役員給与、確定申告書の提出期限の延長の特例に関連する内容を紹介する。(Japan Tax Newsletter:2017年11月1日号)

1 はじめに

国税庁は平成29年6月30日付で平成29年度税制改正(以下「本税制改正」)に伴う法人税基本通達等の改正(以下「本通達改正」)を公表した(「法人税法基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」(H29.6.30課法2-17他1課共同))。

試験研究費の税額控除制度、役員給与等についての税制改正に伴い取扱いを明確化したもので、このニュースレターでは、試験研究費の税額控除制度、役員給与、確定申告書の提出期限の延長の特例に関連する内容を紹介する。

2 試験研究費の税額控除制度関連

(1) 試験研究の範囲の見直し

本税制改正において、試験研究の対象としてサービス研究が追加された。

具体的には、対価を得て提供する新たな役務(A)の開発を目的としてサービス設計工程の全て(B)が行われる場合におけるサービス設計工程が、本制度の対象となる試験研究に追加された。

本通達改正において、この新たな役務(A)およびサービス設計工程の全て(B)について、具体的な判定基準が示された。概要は次のとおりである。

項目

通達概要

条文

(A)新たな役務

その役務を提供する法人にとって従前に提供していない役務に該当するかどうかにより判定する

措通42の4

(1)‐1

【新設】

従前に提供している役務がある場合の新たな役務の例示

  • その法人が提供する役務が従前に提供している役務と比較して新たな内容が付加されているか
  • その法人が提供する役務の提供方法が従前と比較して新たなものであるか

措通42の4

(1)‐2

【新設】

(B)サービス

設計工程の全て

法人がサービス設計工程の全てを実行することを試験研究の計画段階において決定しているかどうかにより判定する

措通42の4

(1)‐3

【新設】

  • サービス設計工程の全てが当該事業年度に完了していない場合であっても
  • 当該事業年度において試験研究が中止になった場合であっても

法人がサービス設計工程の全てを実行することを計画段階で決定しているときにはサービス設計の全てが行われる試験研究に該当する

その法人がその全部又は一部を委託により行うかどうかは問わない

 

3 役員給与関連

(1) 事前確定届出給与

本税制改正では、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与に加えて、所定の時期に確定した数の適格株式を交付する給与等が事前確定届出給与の対象に追加された。

ここで事前確定届出給与に追加されたもののうちの一つに、所定の時期に確定した額に相当する適格株式等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与(A)があるが、これについて以下の通達が新設された。内容は次のとおりである。

項目

通達概要

条文

(A)確定した額に相当する適格株式等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与

適格株式又は適格新株予約権の交付する数の算定に際して一に満たない端数が生じた場合において、適格株式又は適格新株予約権と一に満たない端数の適格株式又は適格新株予約権の価額に相当する金銭を交付しないこととしたときは、確定した額を支給する給与には該当しない

基通9‐2‐15の3

【新設】


また、業績連動給与との区分(B)について、以下の通達が新設された。内容は次のとおりである。

項目

通達概要

条文

(B)一定の条件で全額支給されない給与

業績指標その他の条件により、その全てを支給するか、又はその全てを支給しないかのいずれかとすることを定めた場合の給与は、業績連動給与に該当せず、事前確定届出給与の対象となる

基通9‐2‐15の5

【新設】


(2) 業績連動給与

本税制改正では、支給額の算定方法が当事業年度の利益を示す指標を基礎としたものであることに加えて、算定指標(C)に以下が追加されている。

  • 株式の市場価格の状況を示す指標
  • 売上高の状況を示す指標(利益の状況を示す指標又は株式の市場価格の状況を示す指標と同時に用いられるものに限る)

この指標(C)の追加とともに、職務執行期間開始日後に終了する事業年度等の指標を用いることができることとされている。

また、対象給与(D)として金銭に加えて、「業績連動指標を基礎として算定される数の適格株式を交付する給与で確定した数を限度とするもの」等が追加されている。

なお、業績連動給与の内容が有価証券報告書に記載されていること等一定の方法により開示されているという開示要件(E)は従前のとおりである。

本通達改正においては、(C)指標、(D)対象給与、(E)開示要件についてそれぞれ具体的な判断基準等が示された。概要は次のとおりである。

項目

通達概要

条文

(C)連結指標

利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標又は売上高の状況を示す指標には、有価証券報告書に記載される連結財務諸表に記載されるべき金額等から算定される指標が含まれる

基通9‐2‐17の3

【新設】

(D)無償で取得する株式

譲渡制限付株式による給与で、無償で取得する株式の数が業績指標に応じて変動するものは、定期同額給与、事前確定届出給与及び損金の額に算入される業績連動給与のいずれにも該当しない

基通9‐2‐16の2

【新設】

(E)開示要件

適格株式と一に満たない端数の適格株式の価額に相当する金銭を併せて交付することを定めている業績連動給与については、有価証券報告書における開示は、交付する適格株式の数の算定方法の内容のみの開示で差し支えない

基通9‐2‐19の2

【新設】


(3) その他

退職給与についてはいわゆる功績倍率法による退職給与が業績連動給与に該当しない旨が示された。概要は次の表のとおりである。

項目

通達概要

条文

退職給与

いわゆる功績倍率法(※)に基づいて支給する退職給与は、業績連動給与に該当しないことから、役員給与に関する法人税法第34条第1項(役員給与の損金不算入)の適用はない

※ 功績倍率法とは、役員の退職の直前に支給した給与の額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額が算定される方法

基通9‐2‐27の2

【新設】

 

4 確定申告書の提出期限の延長の特例関連

本税制改正により確定申告書の提出期限延長の特例が改正されたことを受けて、通達が新設されている。

(1) 確定申告書の提出期限の延長の特例制度が適用できる場合

定款等の定め(A)又はその法人に特別の事情があることにより、その事業年度以後の各事業年度終了の日の翌日から2月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合、1月間(法第75条の2第1項第1号及び第2号の場合には、当該各号の定める期間)の延長を受けることができるとされている。

この特例が適用できる場合について、どのような場合が該当するのかを例示する通達が新設された。概要は次のとおりである。

項目

通達概要

条文

(A)例示

確定申告書の提出期限の延長の特例の規定により確定申告書の提出期限について1月間の延長を受けることができる法人には、例えば、次のような定款の定めをしている法人(事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日までの間に定時株主総会が招集される法人を除く。)が該当する

  • 定時株主総会の招集時期を事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日以後である旨の定めをしている法人
  • 定時株主総会の招集時期を事業年度終了の日の翌日から3月以内である旨の定めをしている法人

基通17‐1‐4の2

【新設】


(2) 延長期間について税務署長の指定が受けることが出来る場合

会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定め(B)によりその事業年度以後の各事業年度終了の日の翌日から3月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合(法第75条の2第1項第2号の場合を除く)、その定めの内容を勘案して4月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間の延長を受けることができるとされている。

この特例が適用できる場合について、どのような場合が該当するのかを例示する通達が新設された。概要は次のとおりである。

項目

通達概要

条文

(B)例示

会計監査人を置いている法人が次のような定款の定めをしている場合(事業年度終了の日の翌日から3月を経過する日(以下「3月経過日」)までの間に定時株主総会が招集される場合を除く。)には、法人税法第75条の2第1項第1号に掲げる場合に該当することを明らかにしている

  • 定時株主総会を3月経過日後の一定の期間内に招集する旨を定めている場合
  • 定時株主総会の議決権の基準日を事業年度終了の日の翌日以後の特定の日とする旨及び定時株主総会を基準日から3月以内に招集する旨を定めている場合

*PDF4ページの画像を参照ください

基通17‐1‐4の3

【新設】

出所:「法人税基本通達等の一部改正ついて」平成29年6月(国税庁)、「平成29年度税制改正について」平成28年12月(経済産業省)を基に筆者作成

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