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国外財産把握のための施策とマイナンバー制度開始の影響

Japan Tax Newsletter:2015年11月1日号

平成25年度改正で導入された社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)がいよいよ平成27年10月から通知開始、平成28年1月から利用が開始される。本ニュースレターでは、納税者の国内外の財産情報を収集することを目的とする国外財産調書および財産債務調書制度、また国境を越える預金や有価証券の動きを把握するための制度である国外送金等調書および国外証券移管等調書制度の概要と、これらの制度に与えるマイナンバー制度開始の影響について解説する。(Japan Tax Newsletter:2015年11月1日号)

1 はじめに

近年国外財産の保有が増加傾向にある中で、税務当局が国外財産に関して適正な課税を行うために様々な施策が講じられている。代表的なものとして、国外送金等調書の提出基準の引下げ(平成21年4月1日以後適用)、国外財産調書制度の創設(平成26年1月1日以後適用)、国外証券移管等調書制度の創設(平成27年1月1日以後適用)などがあり、また平成27年度改正では従来の財産債務明細書が見直され、新たに財産債務調書として整備された。

さらに、平成25年度改正で導入された社会保障・税番号制度(以下「マイナンバー制度」)がいよいよ平成27年10月から通知開始、平成28年1月から利用が開始される。

本ニュースレターでは、納税者の国内外の財産情報を収集することを目的とする国外財産調書および財産債務調書制度、また国境を越える預金や有価証券の動きを把握するための制度である国外送金等調書および国外証券移管等調書制度の概要と、これらの制度に与えるマイナンバー制度開始の影響について解説する。

国外財産把握等のための主な施策

公布年

主な施策

平成 9年

国外送金等調書制度の創設

(200万円超の国外受送金)

平成20年

国外送金等調書提出基準の引下げ

(200万円超→100万円超)

平成24年

国外財産調書制度の創設

(合計5,000万円超の国外財産を有する居住者)

平成25年

社会保障・税番号制度導入に伴う所要の税制上の措置

(申告書や法定調書等への「番号」記載等)

平成26年

国外証券移管等調書制度の創設

 

平成27年

財産債務明細書を見直し、財産債務調書として整備

(提出基準の見直し、記載内容の充実等)

(出典:財務省ウェブサイト「納税環境整備に向けた主な施策」より抜粋)

2 国外財産調書

居住者で5,000万円を超える国外財産を保有している場合には、国外財産調書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。平成24年度改正により導入され平成26年1月1日から施行されている。

(1) 提出基準

居住者で、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合に国外財産調書を提出しなければならない。なお、所得金額の要件はないため、所得税確定申告書の提出の有無に関わらず提出義務があることに留意されたい。

(2) 記載事項

国外財産調書には、国外財産の「種類別」、「用途別」(一般用および事業用)、「所在別」に、その財産の「数量」および「価額」等を記載しなければならない。なお、国外債務については記載を要しない。

(3) 過少申告加算税等の特例

国外財産調書の適正な提出を促すため、国外財産調書の提出の有無により過少申告加算税および無申告加算税(以下「過少申告加算税等」)を5%軽減または加重する特例措置が設けられた。

  • 過少申告加算税等の軽減措置
    国外財産調書を提出期限内に提出した場合には、国外財産調書に記載がある国外財産に関する所得税等または相続税の申告漏れが生じたときであっても、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について5%軽減される。
  • 過少申告加算税等の加重措置
    国外財産調書の提出が提出期限内にない場合、または提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合に、その国外財産に関する所得税等の申告漏れが生じたときは、その国外財産に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等が5%加重される。
(4) 罰則規定

国外財産調書を正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合や虚偽記載をした場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金を処することとされている。

(5) マイナンバー記載時期

平成28年分に係る国外財産調書より、納税者本人の個人番号(以下「マイナンバー」)を記載する必要がある。

3 財産債務調書

平成27年分の所得税確定申告書より、一定の基準を満たす場合、従来の財産および債務の明細書に代えて、財産債務調書を提出しなければならない。

(1) 提出基準

下記1)2)いずれも満たす場合に財産債務調書を提出しなければならない。

1) その年分の総所得金額および山林所得金額の合計額が2,000万円を超えること

2) その年の12月31日において、財産の価額の合計額が3億円以上または国外転出特例対象財産1が1億円以上であること

(2) 記載事項

財産債務調書には、一定の財産債務の区分に応じて、「種類別」、「用途別」(一般用および事業用)、「所在別」に、その財産の「数量」および「価額」またはその債務の「金額」を記載しなければならない。

また、有価証券、匿名組合契約の出資の持分、未決済信用取引等に係る権利および未決済デリバティブ取引に係る権利に区分される財産については、取得価額を記入する必要がある。

(3) 過少申告加算税等の特例

国外財産調書と同様、調書提出の有無により過少申告加算税等を軽減または加重する特例措置が設けられている。

(4) その他
  • 国外財産調書を提出すべき者であっても、財産債務調書の提出基準を満たす場合は、財産債務調書を提出しなければならない。その場合、国外財産に係る事項(国外財産の価額を除く)については財産債務調書への記載を要しない。なお国外債務については財産債務調書に記載する必要がある。
  • 財産債務調書の不提出および虚偽記載について罰則規定はない。
(5) マイナンバー記載時期

国外財産調書と同様、平成28年分に係る財産債務調書より、マイナンバーを記載する必要がある。

財産および債務の明細書、財産債務調書および国外財産調書の比較

名称

財産および債務の 明細書
(平成26年分まで)

財産債務調書
(平成27年分~)

国外財産調書
(平成25年分~)

提出基準

その年分の所得金額が2千万円超

1)2)両方に該当する場合
1)その年分の所得金額が2千万円超 
2)その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が3億円以上
     または 
その年の12月31日において有する国外転出特例対象財産の価額の合計額が1億円以上

国外財産の価額が5千万円超

記載事項

財産の種類、数量、価額ならびに債務の金額

財産の種類、数量、価額および債務の金額、ならびに用途、所在、有価証券等の取得価額等

国外財産の種類、数量
および価額、用途、所在等

過少申告加算税等の特例

なし

財産債務調書の提出の有無により過少申告加算税等が5%軽減または加重される

国外財産調書の提出の有無により過少申告加算税等が5%軽減または加重される

罰則規定

なし

なし

1年以下の懲役または50万円以下の罰金

1 国外転出特例対象財産とは、所得税法第60条の2第1項に規定する有価証券等ならびに同条第2項に規定する未決済信用取引等および同条第3項に規定する未決済デリバティブ取引に係る権利をいう。

4 国外送金等調書等

(1) 国外送金等をする者の告知書提出義務

国外送金または国外からの送金等の受領(以下「国外送金等」)をする者は、原則として、金融機関の営業所等に一定事項を記載した告知書を提出しなければならない。ただし、公的書類2で本人確認が済んだ一定の口座を通じて国外送金等を行う場合は、告知書の提出は不要である。また金融機関は公的書類により本人確認を行わなければならない。

  • 罰則規定
    告知書を提出しなかった場合または虚偽記載等をした場合においては、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処することとされている。
  • マイナンバー制度導入による影響
    マイナンバー制度の導入に伴い、平成28年1月1日以後に国外送金等を行う場合、原則として金融機関等にマイナンバーを含む一定の事項を記載した告知書を提出し、かつ金融機関等は本人確認を行わなければならない。ただし、平成27年12月31日までに開設された既存の本人口座の場合は、マイナンバーの告知が3年間猶予される。
(2) 国外送金等調書

金融機関はその顧客が国外送金等に係る為替取引を行ったときは、当該為替取引に係る金融機関の営業所等の所在地の所轄税務署長に国外送金等調書を提出しなければならない。

  • 提出期限
    為替取引を行った日の翌月末
  • 提出対象
    1回あたり100万円を超える国外送金等
  • 罰則規定
    国外送金等調書を提出期限までに提出しなかった場合または虚偽記載等をした場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処することとされている。
  • マイナンバー記載時期
    原則として平成28年1月1日以後の国外送金等に係る国外送金等調書にはマイナンバーの告知を受けて記載する必要があるが、国外送金等調書等については3年間猶予されており、その間告知を受けるまでは記載を要しないこととされている。

2 公的書類とは個人の場合、住民票の写し、健康保険証、運転免許証、パスポート等をいう。

5 国外証券移管等調書等

国境を越えた有価証券の移管状況を把握し適正な課税を実現するため、平成26年度税制改正において創設された制度で、平成27年1月1日より適用されている。

(1) 国外証券移管等をする者の告知書提出義務

金融商品取引業者等に有価証券の国外証券移管3または国外証券受入れ4(以下「国外証券移管等」)の依頼をする者は、原則として、当該金融商品取引業者等に対し、一定事項を記載した告知書を提出し、公的書類を提示しなければならない。また金融商品取引業者等は公的書類により本人確認をしなければならない。

  • 罰則規定
    国外送金等と同様、告知書を提出しなかった場合または虚偽記載等をした場合においては、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処することとされている。
  • マイナンバー制度導入による影響
    国外送金等の場合と同様、原則として平成28年1月1日以後に国外証券移管等を行う場合、金融商品取引業者等にマイナンバーを含む一定の事項を記載した告知書を提出しなければならないが、平成27年12月31日までに開設された既存の本人証券口座の場合は、マイナンバーの告知が3年間猶予される。
(2) 国外証券移管等調書

金融商品取引業者等は、その顧客からの依頼により国外証券移管等をしたときは、国外証券移管等ごとに一定事項を記載した国外証券移管等調書を、当該国外証券移管等を行った金融商品取引業者等の営業所等の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。

  • 提出期限
    国外証券移管等を行った日の翌月末
  • 提出対象
    すべて(国外送金等調書と異なり、金額基準はない)
  • 罰則規定
    国外送金等調書と同様、提出期限までに提出しなかった場合または虚偽記載等をした場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処することとされている。
  • マイナンバー記載時期
    原則として平成28年1月1日以後の国外証券移管等に係る国外証券移管等調書にはマイナンバーの告知を受けて記載する必要があるが、国外送金等調書と同様3年間猶予されており、その間告知を受けるまでは記載を要しないこととされている。 

3 国外証券移管とは、金融商品取引業者等が顧客の依頼に基づいて行う国内証券口座から国外証券口座への有価証券の移管をいう。
4 国外証券受入れとは、金融商品取引業者等が顧客の依頼に基づいて行う国外証券口座から国内証券口座への有価証券の受入れをいう。

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