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欠損金の繰越控除制度の見直しについて~平成28年度税制改正~

Japan Tax Newsletter:2016年11月1日号

平成28年度税制改正において、欠損金の繰越控除制度について見直しが行われた。本ニュースレターでは、欠損金の繰越控除制度の見直しについて説明する。(Japan Tax Newsletter:2016年11月1日号)

1 はじめに

平成28年度税制改正において、欠損金の繰越控除制度について見直しが行われた。

  • 平成27年度税制改正の欠損金の繰越控除制度の見直しのさらなる見直し
  • 欠損金の控除限度額の段階的な引下げ幅や引下げ時期の見直し
  • 欠損金の繰越期間を延長する措置について施行日のが1年延長された(平成30年4月1日以後開始事業年度で生ずる欠損金から適用)

本ニュースレターでは、欠損金の繰越控除制度の見直しについて説明する。

2 欠損金の繰越控除限度額のさらなる見直し(平成27年新附則27¹、30)

平成27年度税制改正において、課税ベース拡大を目的として、欠損金の繰越控除制度の見直しが行われた。中小法人等1以外の法人については、平成23年度税制改正により従来から繰越控除限度額は所得の80%相当額であったが、さらに段階的に繰越控除限度額が引き下げられることになった。

平成28年度税制改正においては、税制改正における企業経営への影響を平準化することおよび法人実効税率20%台への引下げを実現するための財源確保の観点から、平成27年度税制改正の内容のさらなる見直しが行われた。

青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度および中小法人等以外の普通法人が連結親法人である連結納税グループの連結欠損金の段階的な引下げについても同様の見直しが行われた。

なお、中小法人等の特例は存置されており(法法57⑪一)、平成27年度税制改正において新たに導入された再建中の法人2および新設法人3について7年間・所得の全額まで控除する仕組みに改正は行われておらず、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用されている(法法57⑪二三)。

欠損金の繰越控除に係る改正の概要は次の表のとおりである。

区分

事業年度

控除限度額

平成27年度
税制改正

平成28年度
税制改正

大法人

平成27年4月1日
~平成28年3月31日開始事業年度

所得の65%

所得の65%

平成28年4月1日
~平成29年3月31日開始事業年度

所得の60%

平成29年4月1日
~平成30年3月31日開始事業年度

所得の50%

所得の55%

平成30年4月1日以後開始事業年度

所得の50%

 

再建中の法人

再生計画認可の決定等から7年後まで

所得の全額

所得の全額

 

新設法人

設立後から7年後まで

所得の全額

所得の全額

中小法人等

所得の全額

所得の全額


改正のイメージはPDFの図のとおりである。PDFの図の例では、改正により平成29年3月期と平成30年3月期の課税所得が平準化されており、2期の合計課税所得は改正前と改正後で変更はない。

1 平成28年度税制改正により一部改正された「所得税法等の一部を改正する法律(平成27年法律第9号)」の改正附則
2 中小法人等とは、普通法人のうち、各事業年度終了の時において、資本金の額もしくは出資金の額(以下、「資本金の額等」)が1億円以下であるもの(資本金の額等が5億円以上の法人等(以下、「大法人」)の100%子法人および100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を直接または間接に保有されている法人を除く)、または資本もしくは出資を有しないもの(相互会社を除く)、公益法人等、協同組合等、人格のない社団等をいう。
3 再建中の法人とは、更正手続開始の決定があったこと、再生手続開始の決定があったこと等の事実が生じた法人をいう。
4 新設法人からは、大法人の100%子法人および100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を直接または間接に保有されている法人および株式移転親法人を除く。

3 欠損金の繰越期間の延長(平成27年新附則27、30)

繰越控除限度額の段階的な引下げに合わせて、平成27年度税制改正で講じられた欠損金の繰越期間を10年に延長する措置について、その施行日を1年延長し、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額から適用することとされた。

中小法人等、再建中の法人および新設法人についても、繰越期間の1年延長は平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。

欠損金額が生じた事業年度

繰越期間

従前

平成27年度
税制改正

平成28年度
税制改正

平成20年4月1日以後終了事業年度~平成29年4月1日前開始事業年度

9年

9年

9年

平成29年4月1日以後終了事業年度~平成30年4月1日全開始事業年度

10年

9年

平成30年4月1日以後開始事業年度

10年


繰越期間の延長に伴い、平成27年度税制改正で講じられた欠損金の繰越控除制度に係る帳簿書類の保存要件における保存期間を10年に延長する措置および法人税の欠損金額に係る更正の請求期間を10年に延長する措置についても同様に施行が1年延長された。

4 おわりに

中小法人等、再建中の法人および新設法人以外の法人においては、段階的に繰越欠損金控除限度額が引き下げられ、平成30年4月1日以後開始事業年度では所得の50%までしか繰越欠損金が利用できなくなる。期限切れ欠損金を生じさせないためにも、早期黒字化が重要になる。

また、繰越欠損金がある法人や赤字法人が存在するグループ法人においては、連結納税の方が欠損金を有効的に利用できる可能性がある。平成26年10月1日以後開始する事業年度から地方法人税が導入されており、課税標準の算定の基礎となる法人税の課税所得を圧縮することは、税負担の軽減にもつながる。

なお、連結納税と欠損金の繰越控除の具体的な制度の内容については、Japan Tax Newsletter「欠損金の繰越控除に関する改正と連結納税に与える影響」(2015年3月1日号)等を参照されたい。

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