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スピンオフ税制について~平成29年度税制改正~

Japan Tax Newsletter:2017年9月1日号

平成29年度税制改正により、従来は非適格組織再編と取り扱われてきたスピンオフに関して、平成29年4月1日以後の一定の要件を満たすものについては適格組織再編として取り扱われることとなった。本ニュースレターでは、スピンオフ税制について新設分割型によるものと株式分配によるものとに分けて解説する。(Japan Tax Newsletter:2017年9月1日号)

スピンオフ税制について

はじめに

平成29年度税制改正により、従来は非適格組織再編と取り扱われてきたスピンオフに関して、平成29年4月1日以後の一定の要件を満たすものについては適格組織再編として取り扱われることとなった。

この背景について、財務省の解説では以下のように述べられている。

「近年我が国企業は、多角化度が高く規模が巨大な企業の営業利益率が欧米に比べて低いといった特徴があり、その要因として、多角化に際し、差別化や事業ポートフォリオの最適化等が不十分、事業の関連性が乏しいといった理由があると指摘されている。このため、このような企業を中心に、企業内の事業部門を分離して独立した企業とする、スピンオフの必要性が増していると考えられる。」1

そこで本ニュースレターでは、スピンオフ税制について新設分割型によるものと株式分配によるものとに分けて解説する。

1 「平成29年度 税制改正の解説」(財務省ウェブサイト)

新設分割型分割によるスピンオフについて

1 改正内容

適格分割の範囲に、分割法人が行っていた事業の一部を、その分割型分割により新たに設立する分割承継法人において独立して行うための分割として一定の要件に該当するものが加えられた。

下記ストラクチャー図にあるような新設分割型分割については、従来は非適格分割として取り扱われていたが、平成29年4月1日以後の適格要件を充足する新設分割型分割に関しては適格分割として取り扱われ、移転資産・負債に対する譲渡損益の課税が繰り延べられ、かつ、株主へのみなし配当課税も生じないこととなった。

ストラクチャー図
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2 税制適格要件について

新設分割型分割のうち、適格分割の範囲に追加される分割は、具体的には以下の要件の全てに該当するものとされている(法法2十二の十一ニ、法令4の3⑨)

 

税制適格要件

分割型分割に該当する分割で単独新設分割であること(法法62の6①に規定する分割は除く)

分割に伴って分割法人の株主の持株数に応じて分割承継法人の株式のみが交付されること

分割法人が分割直前に他の者による支配関係がないものであり、分割承継法人が分割後に他の者による支配関係があることとなることが見込まれていないこと(※1)

分割法人の分割前の役員又は重要な使用人(当該分割法人の分割事業に係る業務に従事している者に限る)(※2)が分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること

分割法人の分割事業の主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること

分割法人の分割直前の分割事業の従業者のおおむね80%以上が分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること

分割法人の分割事業が分割承継法人において引き続き行われることが見込まれていること

(※1)他の者による支配関係
移転資産が分割前後を通じて他の者によって支配されることがないこと、すなわち独立して事業を行うことを担保するための要件となっている。

(※2)重要な使用人
重要な使用人の定義は明記されていないが、財務省による「平成29年度 税制改正の解説」では以下のように解説されている。
「重要な使用人とは、会社法においてその選解任につき取締役会の決定事項とされている重要な使用人(会社法362④三)と同様のものであり、具体的には、個別に総合的に判断することになるが、通常、支店長、本店部長、執行役員といった者が該当するものと考えられる。」

株式分配によるスピンオフについて

1 改正内容

現物分配法人により発行済株式等の全部を保有されていた法人(以下「完全子法人」)の株式の全部の分配について、事業か一資産としての子会社株式かの違いはあるものの、資産を株主に交付するという経済的実体は上記1の新設分割型分割と同様であることから、株式分配として組織再編成の一類型として位置づけた上、適格要件に該当するものについては現物分配法人における完全子法人株式の譲渡損益について課税しないこととするとともに、株主へのみなし配当課税も生じないこととした。

改正内容
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2 株式分配

株式分配とは、現物分配(剰余金の配当又は利益の配当に限る)のうち、その現物分配の直前において完全子法人の当該発行済株式等の全部が移転するものをいう(法法2十二の十五の二)。

3 税制適格要件について

適格株式分配とは、完全子法人の株式のみが移転する株式分配のうち、完全子法人と現物分配法人とが独立して事業を行うための株式分配をいい(法法2十二の十五の三)、以下の要件の全てに該当するものとされている(法令4の3⑯)。

 

税制適格要件

現物分配により現物分配法人の株主の持株数に応じて完全子法人株式のみが交付されること

現物分配法人が現物分配直前に他の者による支配関係がないものであり、完全子法人が現物分配後に他の者による支配関係があることとなることが見込まれていないこと

完全子法人の株式分配前の特定役員の全てがその現物分配に伴って退任をするものでないこと

完全子法人の株式分配直前の従業者のおおむね80%以上が完全子法人の業務に引き続き従事することが見込まれていること

完全子法人の主要な事業が引き続き行われることが見込まれていること

 

4 株主の取扱いについて

(1) 国内株主の取扱いについて

株主の取扱いは以下のとおりであり、完全子法人株式の全部を分配する株式分配について、一定の要件に該当しない場合には、その株主に譲渡損益課税及びみなし配当課税が課されることとされる(法法61の2⑧、24①三)。

 

株主の取扱い

非適格株式分配

金銭等が交付される場合

  •  旧株(現物分配法人の株式)のうち、その交付を受けた子法人株式に対応する部分の譲渡を行ったものとみなして、譲渡損益課税
  • 子法人株式の価額のうち、資本金等の額を超える部分を原資とする金額を配当として、みなし配当課税

金銭等が交付されない場合

  • 譲渡損益課税は繰延べ
  • みなし配当課税

適格株式分配

  • 譲渡損益課税は繰延べ
  • みなし配当課税はされない

 

(2) 外国株主の取扱いについて

1) 外国法人である完全子法人株式を交付する株式分配

非居住者株主又は外国法人株主(以下「外国株主」)に対して一定の株式分配により外国法人である完全子法人の株式が交付される場合には、課税の繰延べを認めずその交付の時点で課税されることとされた。具体的な外国株主の取扱いは以下のとおりである。

 

外国株主の取扱い

現物分配により現物分配法人の株主の持株数に応じて完全子法人株式のみが交付されるとき

譲渡益課税(国内源泉所得に該当するものに限る)(措法37の14の3③、法令184①二十、191)

外国法人の恒久的施設において交付を受けた外国法人である完全子法人株式を管理するとき

譲渡益課税(国内源泉所得に該当するものに限る)の適用なし(措法37の14の3③、法令184①二十、191)

交付の時にその恒久的施設において管理しなくなったとき

外国法人株式の交付時に外国株主の恒久的施設と本店等との間の内部取引があったものとして、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額を計算する(措法37の14の3⑤、措令25の14①、法令184③)

 

2) 事業譲渡類似株式の譲渡益課税に係る適用要件の整備

外国株主が現物分配法人の特殊関係株主であり、株式分配により現物分配法人から金銭等の交付を受ける場合で、以下の要件に該当するものは事業譲渡類似株式の譲渡益課税制度の対象となることとされた(所令281⑦二、法令178⑦二)。


 

事業譲渡類似株式の譲渡益課税に係る適用要件

譲渡年又は譲渡事業年度終了の日以前3 年内のいずれかの時において、内国法人の特殊関係株主等がその内国法人の発行済株式等の総数又は総額の25%以上の株式を所有していたこと

 ②

以下の算式により計算した割合が5%以上であること

《算式》

株式分配を行った内国法人の簿価純資産の移転割合

 

非居住者又は外国法人を含む内国法人の特殊関係株主等が株式分配の直前に保有していたその内国法人の株式の数又は金額

×

―――――――――――――――――

 

内国法人の株式分配の直前の発行済株式等の総数又は総額

 

 


5 適格株式分配に先立って行われる組織再編成に係る適格要件(関係継続要件)ついて

単独新設分社型分割後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、単独新設分社型分割に係る適格要件(関係継続要件)の判定は、その適格株式分配の直前の時までの関係による(法令4の3⑥一ハ)。また、単独新設現物出資後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合にも同様の取扱いとなる(法令4の3⑬一ロ)。

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