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インド法人・個人に支払う役務提供の対価に係る源泉所得税

『国税速報』平成28年12月12日号

外国法人または非居住者に対して役務提供の対価を支払う場合の源泉徴収の要否は、まず当該対価が国内法上の国内源泉所得に該当するか、また、当該国内源泉所得が源泉徴収の対象となっているかを確認し、これに加え支払先である外国法人または非居住者の居住国と締結されている租税条約において国内法と異なる取扱いがされていないかを確認し判断することとなります。(『国税速報』平成28年12月12日号)

【疑問相談】源泉所得税

「インド法人・個人に支払う役務提供の対価に係る源泉所得税」

Question:
当社は、インド法人A社との間でソフトウェアの開発に関するコンサルタント契約を締結しており、A社から役務提供を受けています。この度、役務提供が終了しA社にコンサルタント料を支払う予定ですが源泉徴収は必要でしょうか。なお、役務提供はインド国内で行われており、A社は日本国内に恒久的施設は有していないほか、当社はインド国内に恒久的施設を有しておりません。

また、今後同様の役務提供をインド居住者である個人Bから受けることを予定していますが、その対価として支払うコンサルタント料についても源泉徴収は必要でしょうか。なお、この場合も役務提供はインド国内で行われる予定で、Bは日本国内に恒久的施設は有していないほか、Bは過去において日本に来日したことはなく、また、今後も日本に来る予定はありません。また、Bと当社との間に雇用関係はなく、Bは独立した立場で当該役務提供を行います。

Answer:
貴社がインド法人A社に支払うコンサルタント料は、国内法上は国内源泉所得に該当しませんが、日印租税条約12条の「技術上の役務に対する料金」に該当するため、国内源泉所得に置き換えられることとなり、支払の際に所得税の源泉徴収が必要となります。租税条約の届出書の提出がある場合、税率は10%となります。

一方、インド個人Bに対して支払うコンサルタント料は、国内法上は国内源泉所得に該当せず、また、日印租税条約においてもこれと異なる取扱いは規定されてないことから、源泉徴収は不要となります。

【解説】

1. 概要

外国法人または非居住者に対して役務提供の対価を支払う場合の源泉徴収の要否は、まず当該対価が国内法上の国内源泉所得に該当するか、また、当該国内源泉所得が源泉徴収の対象となっているかを確認し、これに加え支払先である外国法人または非居住者の居住国と締結されている租税条約において国内法と異なる取扱いがされていないかを確認し判断することとなります。

2. インド法人A社に支払う対価の取扱い

(1) 国内法の取扱い

所得税法上、国内源泉所得は161条に規定されていますが、ご質問のA社に支払うコンサルタント料は、人的役務の提供を主たる内容とする事業で科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識または特別の技能を有する者の当該知識または技能を活用して行う役務提供を主たる内容とするものを行う者が受ける当該人的役務の提供の対価に該当すると考えられ、当該対価のうち国内において行われたものが国内源泉所得に該当します(所法161① 六、所令282①三)。これは、国内法上は役務提供地に所得源泉があるとする「使用地主義」により源泉地が決定されることを意味し、外国法人に対し当該国内源泉所得を支払う場合は源泉徴収の対象になると規定されています(所法212①)。

ご質問のケースでは、役務提供地がインドのため、国内法上は国内源泉所得に該当せず貴社が支払う対価については源泉徴収は不要となります。

(2)日印租税条約の取扱い

日印租税条約は他の多くの国との租税条約と異なり、「技術上の役務に対する料金」を使用料と同様の課税関係として取扱う旨が規定されているのが特徴です。この「技術上の役務に対する料金」とは、技術者その他の人員によって提供される役務を含む経営的もしくは技術的性質の役務またはコンサルタントの役務の対価としてのすべての支払金をいい、A社に支払うコンサルタント料はこれに該当すると考えます(日印租税条約12④)。

「技術上の役務に対する料金」は、その支払者の居住国内において生じたものとされており、支払者の居住地国に源泉があるとする「債務者主義」により源泉地が決定されます。また、これらが生じた締約国において、技術上の役務に対する料金の額の10%を上限に、当該締約国の法令に従って租税を課すことができるとされています(日印租税条約12②⑥)。

(3)ご質問のケースの取扱い

(1)、(2)のとおり、国内法(役務提供地基準)と租税条約(債務者基準)では異なる取扱いが定められておりますが、国内法と租税条約で異なる定めがある場合、国内法上の規定に代わり租税条約により国内源泉所得とされたものをもって、国内法上の国内源泉所得とみなすとされています(所法162)。

そのため、国内法上の役務提供地基準に代わり租税条約上の債務者基準を国内法上の国内源泉所得とみなすこととなり、これによりA社に支払うコンサルタント料は国内源泉所得として取り扱われることとなります。

ご質問のケースでは、外国法人に対して源泉徴収を要する国内源泉所得を支払うこととなるため、その支払の際に20.42%の税率で源泉徴収を行う必要がありますが(所法212①、213①、復興財確法28②)、A社が最初にその対価の支払を受ける日の前日までに租税条約の届出書を対価の支払者である貴社を経由して貴社の所轄税務署に提出した場合には、日印租税条約14条2項により10%の税率により源泉徴収を行うことになります。

2. インド法人A社に支払う対価の取扱い

(1) 国内法の規定

ご質問のBに支払うコンサルタント料は、人的役務の提供に対する報酬に該当するとえられ、当該対価のうち国内において行われたものが国内源泉所得に該当します(所法161①十二イ)。これは2(1)同様「使用地主義」により源泉地が決定されることを意味し、非居住者に対して当該国内源泉所得を支払う場合は源泉徴収の対象とされています(所法212①)。

ご質問のケースでは、役務提供地がインドのため2(1)同様、国内法上は国内源泉所得に該当せず貴社が支払う対価については源泉徴収は不要となります。

(2) 日印租税条約の取扱い

A) 日印租税条約12条での取扱い

2(2)のとおり日印租税条約12条では「技術上の役務に対する料金」について規定されていますが、この「技術上の役務に対する料金」からは日印租税条約14条に定める独立の人的役務の対価としての個人に対する支払金を除くとされています(日印租税条約12④)。Bに支払うコンサルタント料はこの日印租税条約14条に定める独立の人的役務の対価としての個人に対する支払金に該当するため、日印租税条約12条の「技術上の役務に対する料金」には該当しないこととなります。

B) 日印租税条約14条での取扱い

日印租税条約14条では一方の締約国内の居住者が自由職業その他の独立の性格を有する活動について取得する所得に対しては、その者が一定の固定的施設を他方の締約国内に有せず、かつ、その者が当該課税年度または「前年度」を通じ合計183日を超える期間当該他方の締約国内に滞在しない限り、当該一方の締約国内においてのみ租税を課すことができるとされています(日印租税条約14条①)。

Bは固定的施設を日本国内に有せず、かつ、当該課税年度または「前年度」を通じ合計183日を超える期間日本国内に滞在することもないとのことですので、Bが受けるコンサルタント料についてはインドのみに課税権が認められ、日本での課税権は認められません。

(3) ご質問のケースの取扱い

(1)のとおり、Bに対して支払うコンサルタント料は、役務提供地が日本国内ではないため国内法上は国内源泉所得には該当せず、また、(2)のとおり租税条約においてもこれと異なる取扱いをする規定がないことから、貴社がBに支払うコンサルタント料について源泉徴収は不要となります。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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