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みなし外国税額控除に係る更正の請求手続について

『国税速報』平成29年3月13日号

本稿では、みなし税額控除、更正の請求についておよびその他留意点にについて、解説する。(『国税速報』平成29年3月13日号)

【疑問相談】国際課税

「みなし外国税額控除に係る更正の請求手続について」

Question:
当社(「P社」)は平成27年12月期より、フィリピンにある海外販売拠点である子会社(「S社」)と商標使用許諾契約を締結し、その対価として商標権使用料を収受しています。商標権使用料の収受の際、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約」「日比租税条約」第12条⑵⒝の規定により、使用料として10%の外国税額の源泉徴収を受けています。

当該外国税額について、P社の平成27年12月期における法人税確定申告書上、所定の記載を行うことで法人税法第69条に定める外国税額控除の適用を受けましたが、このたび日比租税条約第23条⑶に定めるいわゆるみなし外国税額控除の適用を受けていなかったことが判明しました。

平成27年12月期にS社による源泉徴収が行われた当該外国税額控除について、みなし外国税額控除相当分の還付を受けるための更正の請求を行うことは可能でしょうか。

なお、当社の平成27年12月期における繰越控除余裕額は、このみなし外国税額控除額を超えている状況にあり、また外国税額が課されたことを証する証ひょうについては適切に保存を行っています。

Answer:
みなし外国税額控除額を含む控除を受けるべき金額などを記載した書類およびその計算に関する明細等を添付した更正請求書を提出することにより、みなし外国税額控除相当分を税額控除の対象とすること、すなわち還付を請求することが可能とえられます。

【解説】

1 みなし税額控除について

日本と特定の発展途上国等との間で締結されている租税条約には、その発展途上国等の経済発展に資するため、一定の要件を満たす外国からの投資について優遇規定を設けているものがあります。

ご質問のケースのように、商標権使用料に係るフィリピン現地での実際の源泉徴収税率は、日比租税条約第12条⑵(b)により10%となりますが、同条約第23条⑶に定めるところでは、15%の税率で源泉徴収(納付)されたものとみなすこととなると解されます。租税条約で規定しているこの取扱い(ご質問のケースの場合は、15%のみなし税額と10%の実際徴収額の差額5%について外国税額控除の適用を認める取扱い)をみなし外国税額控除(あるいはタックススペアリングクレジット)といいます。

2 更正の請求について

提出された納税申告書に記載した課税標準等もしくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと、または当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときは、原則として当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等または税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができると定められています(通法23①一)。

この更正の請求をしようとする者はその請求に係る更正前後の課税標準等、または税額等その更正の請求をする理由その他参となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければなりません(通法23③)。

3 平成23年12月税制改正前後の取扱い

⑴ 改正前の取扱い

平成23年12月の改正前における法人税法上の外国税額控除制度の適用を受けるにあたっては、確定申告書等に、その適用を受けるべき金額等一定の事項を記載した書類の添付がある場合に限り適用すること(いわゆる「当初申告要件」)、および当該確定申告書等に記載された金額を限度すること(いわゆる「適用額の制限」)が要件とされておりました(旧法法69⑩)。

このため、当初提出された確定申告書等において外国税額控除制度の適用を受けていない場合や、外国税額控除制度の適用を受けていたとしてもその記載額が過少となっていた場合において、修正申告書の提出や更正の請求によって、当該外国税額控除制度の適用もしくは外国税額控除額を増額することができませんでした。

⑵ 改正後の取扱い

上記当初申告要件および適用額の制限は、平成23年12月税制改正により廃止され、修正申告書や更正請求書に控除を受けるべき金額等を記載した書類およびその計算に関する明細等を添付することにより、その適用を受けるべき金額として修正申告書または更正請求書に記載された金額を限度として、外国税額控除の適用を受けることが可能となりました(法法69⑩)。

当該改正は平成23年12月2日以後に確定申告書等の提出期限が到来する法人税について適用することとされています(平成23年12月改正法附則17)。

したがって、現行法令においては、当該確定申告書等に適用を受けるべき外国税額の記載に適用漏れによる不足がある場合等においても、所定の要件を満たす更正請求書を提出することにより、外国税額控除額の増額による還付を受けることが可能となります(法法69⑩、租税条約等実施特例法の施行に関する省令10二)。

4 その他留意点

⑴ 租税条約の取扱いの検討

源泉徴収された外国税額が、租税条約上のいずれの所得に係るものであるかという点や、実際の源泉徴収税額が租税条約に規定する限度税率に合致しているか、すなわち、みなし外国税額控除が適用可能なものか否かについて慎重に確認する必要があります。

⑵ 控除限度額への影響

みなし外国税額控除は、実際に源泉徴収をされた税額を超えて外国税額控除の適用が可能な制度でありますが、一方で、その適用によって国外所得は発生しない、すなわち外国税額控除の計算上の控除限度額を増額させるものではない点に留意が必要です。

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