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特定引継資産である減価償却資産を100%グループ内の法人に譲渡した場合の課税関係

『国税速報』平成29年1月16日号

特定引継資産および譲渡損益調整資産の譲渡に該当する場合、当該譲渡損失1,000万円は、この段階では特定資産譲渡等損失の制限対象とはならず、譲渡損益調整資産に係る損失として繰り延べる(加算・留保)こととなります。(『国税速報』平成29年1月16日号)

【疑問相談】法人税

「特定引継資産である減価償却資産を100%グループ内の法人に譲渡した場合の課税関係」

Question:
内国法人A社は、内国法人B社および内国法人C社(いずれも単体納税法人で3月決算)の株式の100%を保有しています。

このたび、A社グループ内の事業再構築の一環として、B社が有する機械装置(帳簿価額3,000万円)をC社に移管するため、B社は当該資産をC社に時価相当の2,000万円により譲渡し、B社において1,000万円の譲渡損失が生じています。

譲渡した資産は、B社がX1.10.1にA社グループ内の他の法人との適格合併により引き継いだ資産ですが、A社による当該他の法人買収後1年以内に実施された、みなし共同事業要件を満たさない適格合併であったため、特定資産譲渡等損失の制限対象(制限期間はX1.4.1~X4.3.31)となる特定引継資産に該当します。

この場合、B社において生じた譲渡損失の当事業年度以後の取扱いを教えてください。

なお、譲渡を受けたC社は、当該資産を譲受後速やかに事業の用に供しており、減価償却を通じてその償却費を以下のとおり損金の額に算入しています。

※概要はPDF1ページ目を参照

Answer:
B社がC社に譲渡する資産は特定引継資産に該当するとのことですが、同時に、譲渡損益調整資産の譲渡に該当します。この場合、当該譲渡損失1,000万円は、この段階では特定資産譲渡等損失の制限対象とはならず、譲渡損益調整資産に係る損失として繰り延べる(加算・留保)こととなります。

また、譲受法人であるC社において当該資産に係る減価償却費が損金の額に算入されている場合、上記において繰り延べられた損失のうち100万円(譲渡損失1,000万円×償却費200万円╱取得価額2,000万円)が認容(減算・留保)されますが、この部分は特定資産譲渡等損失の制限対象となるため、同額を加算(社外流出)調整する必要があります。

翌事業年度(X5.3.31期)以後も同様に、譲受法人であるC社において当該資産に係る減価償却費が損金の額に算入されている場合、繰り延べられた損失のうち200万円(譲渡損失1,000万円×償却費400万円╱取得価額2,000万円)が認容(減算・留保)されますが、適用期間が経過しているため、特定資産譲渡等損失の制限規定の適用はないと考えられます。

【解説】

1. 100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等(法法61の13)の概要

(1) 譲渡損益の繰延処理

内国法人がその有する譲渡損益調整資産をその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に譲渡した場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額は、その譲渡した事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する、すなわち、譲渡の時点においては譲渡利益額又は譲渡損失額を計上しない(繰り延べる)こととされています。

(2) 譲渡損益調整資産

上記の対象となる譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く)、有価証券、金銭債権および繰延資産とされています。また、次の資産は対象外とされています(法令122の14①)。

  • 売買目的有価証券
  • その譲渡を受けた他の内国法人において売買目的有価証券とされる有価証券
  • その譲渡直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産

(3) 繰り延べた譲渡損益の実現

内国法人が譲渡損益調整資産につき上記(1)による繰延制度の適用を受けた場合において、その譲渡を受けた法人において当該譲渡損益調整資産の譲渡、貸倒れ、除却その他これらに類する事由等が生じたときは、当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額または損金の額に算入することとされています(法法61の13②)。

当該譲渡損益調整資産が譲受法人において減価償却資産に該当し、その償却費が損金の額に算入された場合には、次の1)原則法または2)簡便法により計算した金額を各事業年度の益金の額または損金の額に算入することとされています(法令122の14④三⑥一、法基通12の4-3-8)。

1)原則法

譲渡利益額または譲渡損失額

×

譲受法人において償却費として損金の額に算入された金額

譲受法人における譲渡損益調整資産の取得価額


2)簡便法

譲渡利益額または譲渡損失額

×

譲渡法人の当該事業年度開始の日からその終了の日までの期間(注)

譲受法人がその譲渡損益調整資産について適用する耐用年数 × 12

(注)譲渡の日を含む事業年度については、譲渡の日から当該事業年度終了の日までの期間

なお、本事例では便宜上1) 原則法を適用するものとして解説していきます。

2. 特定資産譲渡等損失の制限規定(法法62の7)の概要

(1) 趣旨および概要

適格合併等を行った場合、被合併法人等の資産および負債は簿価で合併法人等に引き継がれます(法法62の2)。このため、含み損のある資産を有する法人を買収合併し、適格合併等により簿価で引き継いだ後に売却して実現させた含み損を合併法人等の所得と相殺するといった租税回避行為が想定され得るため、これを防止する観点から、みなし共同事業要件を満たさず、かつ、被合併法人等と合併法人等との間に一定期間以上の支配関係の継続がなかった場合には、特定資産譲渡等損失額の損金不算入が課されることとされています。具体的には、合併法人等の適用期間内において、特定資産の譲渡、貸倒れ、除却その他これらに類する事由(以下「譲渡等」といいます)により損失等が生じる場合には、当該損失等の額は損金の額に算入することができないとされています。

(2) 特定資産譲渡等損失額の意義

特定資産譲渡等損失額とは、原則として以下の金額の合計額とされています(法法62の7②)。

  • 特定引継資産(合併法人等が被合併法人等から適格合併等により移転を受けた資産で、被合併法人等が支配関係発生日前から有していた一定の資産)の譲渡等による損失の額
  • 特定保有資産(合併法人等が支配関係発生日前から有していた一定の資産)の譲渡等による損失の額

(3)譲渡損益調整資産との適用関係

上述のとおり、特定資産譲渡等損失額には、譲渡等による損失の額が含まれますが、法人税法第61条の13により繰り延べられた譲渡損益は、法人税法上損金の額または益金の額に算入されていないため、その段階では特定資産譲渡等損失額の損金不算入の適用対象とならないこととされています(法令123の8④六)。

よって、当該譲渡の後にグループ外に譲渡された場合や、譲受法人において償却が行われたこと等により、当該譲渡損益が実現したときの取扱いが課題となりますが、これらの繰延譲渡損益の実現については、資産の譲渡と同視することができることから、特定資産譲渡等損失額に含まれるとされています(法令123の8⑤三⑨三)。

3. 本件への当てはめ

(1)当事業年度(X4.3.31期)

B社がC社に譲渡する資産は特定引継資産に該当するとのことですが、完全支配関係がある法人間の譲渡については、譲渡損益調整資産の譲渡に該当し、上記2(3)のとおりこの段階では特定資産譲渡等損失の制限対象とはならないため、当該譲渡損失1,000万円を、いったん、譲渡損益調整資産に係る損失として繰り延べる(加算・留保)こととなります。

また、譲受法人であるC社において当該資産に係る減価償却が行われている場合には、上記において繰り延べられた損失のうち100万円(譲渡損失1,000万円×償却費200万円╱取得価額2,000万円)が認容(減算・留保)されることとなりますが、この部分については、繰延損益が実現したものとして特定資産譲渡等損失の制限対象となるため、認容額と同額を加算(社外流出)調整する必要があります。

(2)翌事業年度(X5.3.31期)以後

上記(1)と同様に、譲受法人であるC社において当該資産に係る減価償却が行われている場合には、繰り延べられた損失のうち200万円(譲渡損失1,000万円×償却費400万円╱取得価額2,000万円)が認容(減算・留保)されます。

ただし、X5.3.31期以後においては特定資産譲渡等損失の制限対象となる期間が経過しているため、法人税法第62条の7の制限規定の適用はなく、加算調整は不要とえられます。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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