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外国法人が帰属主義移行後に日本支店を譲渡または閉鎖した場合における法人税法上の取扱い

『国税速報』平成27年11月16日号

これまでは、日本における外国法人に対する課税原則については、日本が締結しているすべての租税条約においては帰属主義が採用されている一方、国内法においては総合主義が採用されており、二元化していました。平成26年度税制改正において、国内法における外国法人に対する課税原則について、従来の総合主義から、平成22年にOECD において採用されたOECD 承認アプローチ(Authorised OECD Approach)の考え方に則した帰属主義へと見直され、租税条約と国内法が帰属主義に統一されました。(『国税速報』平成27年11月16日号)

【疑問相談】国際課税

「外国法人が帰属主義移行後に日本支店を譲渡または閉鎖した場合における法人税法上の取扱い」

Question:
当社は、日本支店を有する外国法人(12月決算)で、日本と租税条約が締結されていない国に本店があります。日本においては、日本支店を通じて10年間営業してきましたが、世界戦略の一環から、約3年後の平成30年12月31日に日本から撤退することを決定しました。
撤退の頃には、日本の国内法は外国法人に対する課税原則について総合主義から帰属主義に移行していると聞いたのですが、日本支店を譲渡または閉鎖した場合の法人税法上の取扱いについて教えてください。
また、現在、日本支店に係る繰越欠損金はないのですが、業績が低下傾向にあり、平成30年12月期(すなわち、譲渡または閉鎖により恒久的施設を有しないこととなった日の属する事業年度)において、日本支店に係る欠損金が発生する見込みです。当該欠損金の取扱いについても教えてください。

Answer:  
租税条約非締結国との間では、日本の国内法のみが適用されます。貴社の場合、恒久的施設の譲渡または閉鎖が平成28年4月1日以降に開始する事業年度において行われるため、帰属主義移行後の国内法の規定が適用されます。帰属主義移行後において恒久的施設が譲渡される場合には、その譲渡による所得は恒久的施設帰属所得として課税されます。また、恒久的施設が閉鎖される場合には、恒久的施設に関連する所得を清算する形で、その時点で恒久的施設に帰せられる資産の含み損益やその時点で繰り延べられている損益について恒久的施設帰属所得として課税されることとなります。
日本支店の譲渡または閉鎖時点において貴社が有する恒久的施設帰属所得に係る繰越欠損金は、譲渡または閉鎖により消滅します。なお、貴社のケースでは、平成30年12月期に生じた欠損金について、繰戻し還付の規定の適用を受けることができます。

【解説】

1. 外国法人課税原則の見直し(総合主義から帰属主義へ)

これまでは、日本における外国法人に対する課税原則については、日本が締結しているすべての租税条約においては帰属主義が採用されている一方、国内法においては総合主義が採用されており、二元化していました。平成26年度税制改正において、国内法における外国法人に対する課税原則について、従来の総合主義から、平成22年にOECD において採用されたOECD 承認アプローチ(Authorised OECD Approach)の考え方に則した帰属主義へと見直され、租税条約と国内法が帰属主義に統一されました。これにより、例えば、総合主義のもとでは、子会社形態か支店形態かによってその取扱いが異なっていましたが、帰属主義のもとでは子会社形態と支店形態とでできる限り同じ取扱いとなりました。

なお、貴社の本店は条約非締結国にありますので、適用されるべき租税条約はなく、国内法のみが適用されます。

2. 恒久的施設の譲渡に係る取扱い

平成26年度税制改正において、国内源泉所得の一つとして、外国法人の恒久的施設に帰せられる所得(以下「恒久的施設帰属所得」といいます)が新たに定められました。そして、恒久的施設が譲渡される場合には、恒久的施設が自らの資産をすべて売却したものとみなして、その譲渡による所得は恒久的施設帰属所得に該当するものとされました(法法138①一)。

したがって、貴社が帰属主義移行後に日本支店を譲渡した場合には、その譲渡により生ずる所得は恒久的施設帰属所得に係る所得として課税されます。

3. 恒久的施設の閉鎖に係る取扱い

恒久的施設を閉鎖した場合、恒久的施設に帰せられる資産の含み損益を清算するため、恒久的施設を有しないこととなった日の属する事業年度(以下「恒久的施設閉鎖事業年度」といいます)終了の時に恒久的施設に帰せられる資産の評価損益を、その外国法人の恒久的施設閉鎖事業年度の恒久的施設帰属所得に係る所得の計算上、益金または損金に算入することとされています(法法142の8①)。恒久的施設閉鎖事業年度終了の時に恒久的施設に帰せられる資産の価額を算定する場合には、連結納税の開始等に伴う時価評価資産に係る時価の取扱いを準用することとされています(法基通20―5―32)。なお、恒久的施設の他の者への譲渡を事由として恒久的施設を有しないこととなった場合は、譲渡益課税により課税が確保されるため、時価評価の対象から除外されています(法法142の8①、法令190①)。

したがって、貴社が帰属主義移行後に日本支店を閉鎖した場合には、恒久的施設に帰せられる資産を時価評価する必要があり、その時価評価損益は恒久的施設帰属所得に係る所得として課税されます。

4. 繰越欠損金の取扱い

帰属主義移行後においては、欠損金は、恒久的施設帰属所得に係る欠損金と恒久的施設非帰属国内源泉所得に係る欠損金に分けて管理され、おのおの、恒久的施設帰属所得に係る所得と恒久的施設非帰属国内源泉所得に係る所得から控除されます(法法141、法法142②、法令184①十七、法法142の10、法令191)。

恒久的施設を有しない外国法人が再進出により恒久的施設を有することとなった場合には、再進出日に法人が設立されたものとみなして、欠損金の繰越控除の規定を適用することとされたため、再進出前に有していた恒久的施設帰属所得に係る繰越欠損金は、恒久的施設の譲渡または閉鎖に伴い消滅することとなります(法法10の3④)。

ここで、貴社の場合、欠損金は平成28年4月1日以降に開始する事業年度において日本支店に係るものとして生じているため、恒久的施設帰属所得に係る欠損金に該当します。したがって、当該恒久的施設帰属所得に係る繰越欠損金は、譲渡または閉鎖により消滅します。

なお、恒久的施設を有する外国法人が恒久的施設を有しないこととなる場合は、その有しないこととなる日に当該外国法人が解散したものとみなして、欠損金の繰戻しによる還付(法法144の13⑨)の規定を適用することとされました(法法10の3③)。これにより、恒久的施設を有しなくなった日前1年以内に終了した事業年度または恒久的施設を有しないこととなった事業年度において生じた欠損金について、繰戻し還付の規定の適用を受けることができます。

したがって、貴社の場合においては、平成30年12月期に生じた欠損金について、繰戻し還付の規定の適用を受けることができます。

5. 適用時期

上記帰属主義移行後の取扱いについては、平成28年4月1日以降に開始する事業年度において恒久的施設の譲渡または閉鎖が行われる場合に適用されます(平成26年改正法附則25、26①②、30)。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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