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設立後5年内の連結子法人を合併法人とする吸収合併における欠損金の取扱い

『国税速報』平成29年7月17日号

本稿では、設立後5年内の連結子法人を合併法人とする吸収合併における欠損金について、法人税(連結)と事業税(単体)での取扱いの差異を含めて解説する。(『国税速報』平成29年7月17日号)

【疑問相談】法人税・事業税

「設立後5年内の連結子法人を合併法人とする吸収合併における欠損金の取扱い」

Question:
当社は下記概要の連結納税グループ(12月決算、当期:X6事業年度が連結納税適用初年度)の連結子法人(S1)であり、当X6事業年度中(X6年7月1日)に、事業統合の必要性から当社を合併法人、連結子法人(S2)を被合併法人とする吸収合併(無対価)を行っています。S2には合併直前のみなし事業年度(X6年1月1日~6月30日:単体申告)において発生した欠損金があります。当社は当該合併の日の前日から5年内に連結親法人(P)によって新規設立された後、Pの事業の一部を吸収分割により受け入れた法人ですが、欠損金の引継ぎに何らかの制限がありますか。また、法人税(連結)と事業税(単体)で欠損金の取扱いに差異が生じるのでしょうか。(PDF「連結納税グループ」イメージを参照)

Answer:
(法人税)
Pによる連結完全支配関係がある法人間の適格合併であるため、当該欠損金は当該合併の日の属する連結事業年度において損金の額に算入されます(法法81の9④)。
(事業税)一定の場合には制限がかかりますが、本件においては原則どおり事業税の繰越欠損金として引き継がれます(地令20の3②③、法法57②)。

【解説】

前提:

  • S1はX4年4月1日付でPにより新規設立され、それ以後Pとの完全支配関係が継続しています。なお、X5年7月1日にPから事業の一部を適格分割により受け入れています(S1が合併前に行っている適格組織再編は、当該適格分割のみとなります)。
  • S2はX0年1月1日付で設立され、同年7月1日にPが第3者よりS2株式の100%を取得し、同日以後Pとの完全支配関係が継続しています。
  • 吸収合併は適格合併に該当し、当連結事業年度のX6年7月1日付で効力が発生しています。
  • S2には合併直前のみなし事業年度(X6年1月1日~6月30日:単体申告)で発生した欠損金があるのみで、それ以前の事業年度で発生した繰越欠損金はありません(S1も繰越欠損金は有しておりません)。

1法人税

連結納税グループ内の法人間の適格合併については、繰越欠損金の引継ぎ(および利用)の制限はありません(法法62①、62の2、81の9⑤一)。なお、期中合併の場合、被合併法人の合併直前のみなし事業年度において生じた欠損金額は、繰越欠損金として引き継がれるのではなく、合併法人の当該合併の日の属する連結事業年度の連結所得の金額の計算上、損金の額に算入されます(法法81の9④)。これは、期中に連結納税グループ内で合併が行われた場合、被合併法人は事業年度を区切り、単体申告を行うものの、被合併法人から移転する資産等は連結納税グループ内に留まっていることから、みなし事業年度(単体申告)において生じた欠損金額について、実質的に同一の連結事業年度において生じた損金の額とすることとされていることによるものです。

したがって、合併法人(S1)と被合併法人(S2)は共にPとの間に連結完全支配関係を有する連結法人であり、当該吸収合併は当連結事業年度の期中において行われているため、S2のみなし事業年度において生じた欠損金相当額は、当該吸収合併の日が属するS1の連結事業年度の連結所得の金額の計算上、損金の額に算入されます。

2 事業税

事業税には連結納税制度がないため、法人税の単体納税の場合と同様の取扱いとなります。適格合併であれば原則として被合併法人の事業税の繰越欠損金は合併法人へ引き継がれることになりますが(地令20の3②、法法57②)、支配関係(注1)がある法人間の適格合併については、⑴みなし共同事業要件、または、⑵合併法人の合併事業年度開始の日の5年前の日、合併法人もしくは被合併法人の設立日のいずれか遅い日から支配関係が継続している、のいずれの要件も満たさない場合には、被合併法人の事業税の繰越欠損金について合併法人への引継ぎに制限(注2)が課されます(地令20の3②、法法57③)。

(注1) 支配関係とは、一の者が法人の発行済株式総数(自己株式を除きます)の50%超を直接または間接に保有する関係として政令で定める関係(「当事者間の支配関係」)または一の者との間に当事者間の支配関係がある法人相互の関係(法法2十二の七の五)をいいます。

(注2) 支配関係があることとなった事業年度(支配関係事業年度)前の各事業年度の欠損金および支配関係事業年度以後の各事業年度の欠損金のうち特定資産譲渡等損失相当額は、引き継ぐことができません。

上記⑵の設立日からの支配関係が継続している場合であっても、設立した法人を受皿として介するような一定の場合については、制限が課されることとなるため、検討が必要となります(法法57③、法令112④)。

合併法人(S1)の合併事業年度開始の日の5年前の日(X1年1月1日)、合併法人の設立日(X4年4月1日)、被合併法人の設立日(X0年1月1日)のいずれか遅い日はX4年4月1日であり、X4年4月1日から支配関係は継続していますので、一定の場合に該当しなければ、欠損金の引継ぎについての制限を課されないこととなります。

一定の場合とは、法人税法施行令112条4項2号イ~ハに規定されていますが、合併法人が設立されている場合であるハは、以下となります。

ハ 当該被合併法人等との間に支配関係がある他の法人を被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人とする法第57条第4項に規定する適格組織再編成等で、当該内国法人を設立するもの又は当該被合併法人等と当該他の法人との間に最後に支配関係があることとなった日以後に設立された当該内国法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人若しくは被現物分配法人とするものが行われていた場合(同日が当該5年前の日以前である場合を除く。)


本件にあてはめますと、被合併法人(S2)との間に支配関係がある他の法人(P)を分割法人とする適格吸収分割で、S2とPとの間に最後に支配関係があることとなった日(X0年7月1日)以後のX4年4月1日付で設立された当該内国法人(S1)を分割承継法人とするものが行われていた場合に該当しますが、PとS2の間に最後に支配関係があることとなった日(X0年7月1日)が当該5年前の日(X1年1月1日)以前であり、「同日が当該5年前の日以前である場合を除く」という、括弧書の場合に該当するため、同号ハの対象からは除外されます。

つまり、一定の場合には該当せず、被合併法人(S2)の事業税の欠損金はS1へ引き継ぐことができます。

上記要件は、合併法人を受皿法人として設立、介在させることにより支配関係発生前の被合併法人の欠損金等の利用が可能となることに一定の制限をかけているものでありますが、合併法人を受皿として利用した他の法人と被合併法人が最後に支配関係があることとなった日から5年超経過している場合には、そもそも設立した法人を介在しなくても欠損金の引継ぎに制限が生じないような状況であり、同号ハ括弧書によりその制限対象から除外されているものであります。

したがって、本件は法人税法施行令112条4項のうち2号に該当することとなるため、一定の制限は課せられず、原則どおり被合併法人(S2)の事業税の繰越欠損金は合併法人(S1)へ引き継がれることになります。

なお、合併法人(S1)の合併の日が属する事業年度において、当該金額は法人税の個別所得金額算定上既に減算済みであるため、事業税所得割の課税標準算定上、当該金額を加算する必要がある点に留意が必要です。また、合併直前のみなし事業年度(X6年1月1日~6月30日)の欠損金は合併法人の合併事業年度開始の日以後に開始した被合併法人の事業年度の欠損金であり、合併法人の前事業年度(X5年1月1日~12月31日)の繰越欠損金となります。

3 住民税(参考)

本件においては、被合併法人は住民税の繰越欠損金を有していません。(参として、適格合併であれば被合併法人が有する住民税の欠損金である控除対象個別帰属調整額・控除対象個別帰属税額は合併法人へ引き継がれます(地法53⑦⑩、321の8⑦⑩)。合併直前のみなし事業年度において生じた欠損金については、法人税の取扱いにより、合併法人で損金算入されることとなり(連結個別所得金額算定上減算)、それを反映した連結法人税個別帰属税額が住民税の課税標準とされることとなります(みなし事業年度(単体申告)では、住民税の繰越欠損金は生じません)。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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