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外国法人に関する源泉徴収の免除証明書

『国税速報』平成28年11月21日号

外国法人が日本国内に恒久的施設を設けて役務提供を行う場合、「源泉徴収の免除証明書」の発行により源泉徴収を免除することができますが、証明書には有効期限があるため確認が必要となります。(『国税速報』平成28年11月21日号)

【疑問相談】国際課税

「外国法人に関する源泉徴収の免除証明書」

Question:
内国法人である弊社は、ソフトウェアの開発・保守業務について、X国に本店が存在する外国法人(Y社)へ業務委託を行っております。Y社は日本国内に支店等を有しておらず、Y社所属のエンジニアが日本国内に来て役務提供を行っていたのですが、業務量の増加に伴い10月より日本国内に支店を開設することとなりました。

弊社は役務提供の対価の支払に関して、租税条約に関する届出書を提出しておりましたので、租税条約の規定により支払対価の10%について源泉徴収を行い、Y社へ残額90%の支払を行っていました。支払に関してY社の担当者より日本支店の開設とともに源泉徴収の免除証明書の交付を受けるため、10月以降の支払について、源泉徴収は必要ないと言われました。

実際に源泉徴収の免除証明書が交付される場合に、Y社担当者が言うとおり源泉徴収は不要になるのでしょうか。

Answer:
外国法人Y社より証明書の提示を受けた場合には源泉徴収は必要なくなるものと考えられます。

また、証明書をY社から提示されるまでは、現状の租税条約に基づく10%の源泉徴収が必要となります。

なお、証明書には有効期限が定められていますので、源泉徴収の免除に関する特例の更新が行われたのか、支払の都度確認を行う必要があります。

【解説】

1. 外国法人の課税関係

(1) 所得税法および法人税法の規定

所得税法では、外国法人が、国内において人的役務の提供に係る対価、配当、利子、または使用料等の国内源泉所得を有する場合には、源泉徴収の方法により課税を受ける旨が規定されています(所法178、161、212)。

また、法人税法においては、外国法人が日本国内に恒久的施設(Permanent Establishment、以下PE)を有しているかどうかにより、課税を受ける国内源泉所得が区分されています(法法141)。

PE を有する外国法人はPE を通じて事業活動を行い、PE に帰属する所得のほか、資産の運用および譲渡による所得、人的役務提供により生じる所得等に対して課税されます。

一方、PE を有しない外国法人は、PE に帰属する事業活動から生じる所得がありませんので、上述のうち、PE に帰属する所得を除くその他の所得について課税される旨が規定されています(法法141)。

(2) 実質負担額

上記のように外国法人に課される税金の範囲が規定されていますが、源泉徴収される所得税負担相当額については、法人税申告書上、税額控除項目として扱われることとなります。この場合、実質的な負担額は所得に対する法人税のみ(PE を有する外国法人は地方税も負担)となります。

所得税の源泉徴収があらかじめ行われるものの、実質的な税負担額は法人税のみとなりますので、所得税に関しては、①日本と各国の租税条約に基づく軽減または免除制度、②恒久的施設を有する外国法人の受ける国内源泉所得に係る課税の特例による源泉税の免除制度がありますが、いずれを選択した場合においても実質的な税金負担差異は生じないこととなります。 

2. 源泉徴収の免除証明書の申請

国内にPE を有する外国法人が源泉徴収の免除証明書の交付を受けるためには、以下の要件を満たした上で所定の手続が必要となります(所法180、所令304~306)。

(1) 要件(所令304)

  • 外国普通法人となった旨の届出書(公益法人等または人格のない社団等の場合、収益事業の開始等の届出)を提出している
  • 会社法または民法の規定による外国法人の登記の規定による登記をすべき外国法人にあっては登記を行っている
  • 源泉徴収の免除規定の適用を受けようとする対象国内源泉所得が、法人税の規定により法人税を課される所得に含まれるものである
  • 偽りその他不正の行為により所得税または法人税を免れたことがない
  • 規定を受けるために、外国法人が発行された証明書を報酬の支払者に提示する場合において、支払者の氏名または名称およびその住所、事務所、事業所その他当該対象国内源泉所得の支払の場所ならびにその提示した年月日を帳簿に記録することが確実であると見込まれる

(2)手続(所令305)

外国法人は以下の情報を記載した申請書を法人税の納税地における所轄税務署長へ提出する必要があります。

  • 法人の名称、本店または主たる事務所の所在地および法人番号
  • その法人の納税地に存在する事務所の名称および所在地ならびに代表者その他の責任者の氏名
  • 外国法人となった旨の届出書を提出した年月日および登記を行った年月日
  • 法人税の課税所得に含まれている事情の概要
  • 帳簿への記録を確実に行う旨
  • 対象となる国内源泉所得の支払者の氏名または名称、その住所、事務所、事業所その他国外源泉所得の支払の場所および宛先ならびに国内源泉所得の種類
  • その他参となるべき事項

(3)免除証明書の使用方法について

上記の要件を満たした外国法人が、所定の手続を行い、証明書の交付を受けた場合、外国法人は役務提供等の対価の支払を行う者に対して、証明書を提示する必要があります(所法180②)。

3. ご質問のケース

質問のY社担当者が源泉徴収は必要ないと言っていますが、支払を行う際に証明書を提示され、帳簿要件を満たしその他適切に対応がなされている場合には、貴社の源泉徴収義務は免除されることとなります。

ただし、Y社の日本支店の設置は10月であり、証明書の交付はY社が申請を行った後に一定期間を要することから、10月分の支払時に証明書が交付されていない可能性があります。そのため、源泉徴収が不要であることについて、証明書の有効期限の確認を行った上で、実際に応じるかどうかを決定する必要があります。

なお、源泉徴収の免除証明書の有効期間内は源泉徴収が不要となりますが、期限後に更新が行われない場合や効力を有しない期間に支払を受ける国内源泉所得については源泉徴収が必要となります。よって証明書入手前と同様10%の源泉徴収で進める場合には、改めて租税条約に関する届出書の提出を行う必要があると考えられます。

4. 実務上の留意点

源泉徴収の免除証明書については交付を受けるための要件および手続が細かく定められており、実務上以下の点に留意する必要があります。

  • 報酬等の支払者は証明書の提示を支払の都度受けること

担当者同士で源泉徴収は必要ないという理解で報酬の支払手続を進めていたところ、証明書交付のための申請は終わっているものの証明書の交付が終わっておらず、源泉徴収もれを指摘される可能性が考えられます。また、当該特例のメリットを享受するためには、支払の都度、証明書の提示を行う必要があります。

  • 証明書の期日前に延長の申請が必要となること

証明書には期日が明記されているため、期日前に更新手続が必要となりますが、引き続き源泉徴収の免除の特例を受けようとするときは、その証明書の有効期限のおおむね1カ月前に延長申請する必要がありますので、外国法人の担当者は期限が切れる前に申請をするなど注意しておく必要があります(『外国法人または非居住者に対する源泉徴収の免除証明書の交付(追加)申請』、国税庁)。

  • 証明書の提示に当たり、提示した相手に関する情報および年月日を帳簿に記録すること

特例の適用を受けるためには、証明書を支払者へ提示する必要がありますが、提示を行った場合には適切に帳簿に記録する必要があります(所令304)。提示した相手の氏名および事務所の所在地、提示した年月日を帳簿に記録していない場合には、証明書の取消処分を受ける可能性があります。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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