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新設分社型分割により設立された分割承継法人の試験研究費の税額控除(総額型および増加型)の計算について

『国税速報』平成28年12月26日号

試験研究費の額の総額および増加に係る税額控除制度は、その事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、一定の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。組織再編行為により試験研究部門を含む事業が移転した場合には、税額控除に用いる計算要素に一定の調整を行うことも認められます。(『国税速報』平成28年12月26日号)

【疑問相談】法人税

「新設分社型分割により設立された分割承継法人の試験研究費の税額控除(総額型および増加型)の計算について」

Question:
P社(資本金600百万円、3月決算)は製造販売業を営む単体納税の法人であり、以前から試験研究費に係る税額控除の適用(総額型および増加型)を受けています。P社は、持株会社移行を目的として平成28年10月1日に新設分社型分割を行い新たにS社(資本金2億円、3月決算)を設立し、S社に当該製造販売業(これに係る試験研究部門を含みます。)を移転しました。

S社において当期(平成28年10月1日~平成29年3月31日期)に試験研究費に係る税額控除の適用を受ける場合には、一定の調整計算を検討する必要があるとのことですが、S社の当期(設立初年度)における総額型および増加型の試験研究費の税額控除の適用に当たって、平均売上金額、比較試験研究費および基準試験研究費の額はどのように計算されるのでしょうか。

なお、P社およびS社の当期以前の売上金額および試験研究費の額はPDF1ページのとおりです。

P社およびS社は連結納税を適用したことはなく、また特別試験研究費の支出もありません。

Answer:

1.原則的な取扱い

(1) 総額型

当期におけるS社の平均売上金額は7,500、試験研究費の額は600(試験研究費割合は8%)となります。

(2) 増加型

新設分割により設立された分割承継法人の当期(設立初年度)においては、増加型による試験研究費の税額控除の適用は受けることができません(措法42の4④一)。

2.特例

(1) 総額型

当期におけるS社の平均売上金額および試験研究費の額は以下のように計算され、それぞれ6,000、600(試験研究費割合は10%)となります。

  1. 平成29年3月期の売上金額 7,500
  2. 平成28年9月期の売上金額 7,500
  3. 平成28年3月期の売上金額 10,000×6月╱ 12月= 5,000
  4. 平成27年3月期の売上金額 8,000×6月╱ 12月= 4,000
  5. 平均売上金額(① + ② + ③ + ④)╱4= 6,000
  6. 試験研究費の額 600

(2) 増加型

当期におけるS社の比較試験研究費および基準試験研究費の額は以下のように計算され、それぞれ490、540となります。

  1. 平成28年9月期 540
  2. 平成28年3月期 960×6月╱ 12月= 480
  3. 平成27年3月期 900×6月╱ 12月= 450
  4. 比較試験研究費の額(① + ② + ③)╱3= 490
  5. 基準試験研究費の額平成28年9月期 540> 平成28年3月期480

【解説】

試験研究費の額の総額および増加に係る税額控除制度は、その事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、一定の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。組織再編行為により試験研究部門を含む事業が移転した場合には、税額控除に用いる計算要素に一定の調整を行うことも認められます。

1. 原則的な取扱い

(1) 総額型

総額型の税額控除の適用を受ける際の平均売上金額は、当期および当期の事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度(以下、「売上調整年度」といいます。)の売上金額の平均額として計算されます(措法42の4⑥十)。

ご相談の場合、S社には当期以前に開始した各事業年度は存在しないため、平均売上金額はS社の当期の金額のみで算定することとなります。

(2) 増加型

当期は設立初年度のため、増加型に係る試験研究費の税額控除の適用はありません(措法42の4④一⑥七)。

2. 特例

(1) 概要

特例は分割が行われた場合に、過去の分割法人の売上金額および試験研究費の額のうち、移転事業※1に係るものを分割承継法人のそれぞれの金額とみなして計算することで適正な税額計算を行うための規定と考えられます。

この特例は分割の日以後2月以内に税務署長に一定の認定申請および届出書の提出を行った場合に限り適用があります(措規20⑫⑰⑲㉔)。

なお、特例は分割が適格分割に該当するかどうかを問わず適用することができます。

(2) 総額型

分割承継法人であるS社の各売上調整年度における売上金額は、基準分割法人※2(本稿ではP社)の分割の日を含む事業年度までの各事業年度(分割の日を含む事業年度にあってはその事業年度開始の日から分割の日の前日までの期間)を分割承継法人の売上調整年度に対応する各事業年度とみなした場合における次の金額の合計額となります(法令27の4⑳三)。

基準分割法人の各事業年度に係る移転売上金額(本稿ではP社の金額)

分割承継法人の売上調整年度に含まれる月の分割に係る分割法人のうち基準分割法人以外のものの月別移転売上金額※3(ご質問の場合は分割法人がP社のみであり、基準分割法人(P社)以外の法人がないため当該金額はありません)

 

ここで移転売上金額とは、分割による移転事業に係る売上金額(措令27の4⑳)をいい、本稿ではP社の各事業年度の売上金額をいいます。

また、S社の当期の事業年度の月数と各売上調整年度の月数が異なる場合には、売上調整年度の売上金額について月数按分の調整を行います。最後に当期および各売上調整年度の売上金額の合計金額を集計期間となった事業年度の数で除して平均売上金額を算定します(措令27の4⑰⑳三)。

(参考)PDFの4ページを参照

(3) 増加型

増加型に係る試験研究費の税額控除を計算する場合の比較試験研究費の額および基準試験研究費の額についても、調整計算が必要となります。調整計算の方法は上記の総額型と同様のえ方です(法令27の4⑪三)。

(参考)PDFの4ページを参照

3. まとめ(留意点)

分割等の組織再編行為が行われた場合には特例の適用の有無により、平均売上金額(試験研究費割合)の算定結果が異なる、または増加型の適用を受けることができなくなる、など税額計算の結果に大きな影響を与える可能性があります。本稿では新設分割により設立された分割承継法人の設立初年度における取扱いのみを解説していますが、分割等の組織再編行為の実施に当たっては、次年度以降の計算も見据えた上で、届出書の提出による特例計算の適用要否をあらかじめ検討する必要があるとえ考えられます。

※1 移転事業:その分割により分割承継法人に移転する事業をいう(措令27の4⑳)。

※2 基準分割法人:分割に係る分割法人のうち当該分割の直前の時における資本金の額又は出資金の額が最も多い法人をいう(措令27の4⑳)。

※3 月別移転売上金額:分割に係る分割法人の各事業年度の移転売上金額をそれぞれ当該各事業年度の月数で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月に係るものとみなしたものをいう(措令27の4㉑)。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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