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外国法人課税に関する見直しの影響

『国税速報』平成28年2月29日号

今回の税制改正では、課税所得を恒久的施設(PE)帰属所得に係る所得の金額とPE帰属所得以外の国内源泉所得に係る所得の金額の2区分とし、これらの所得は通算しないこととされました。したがって、欠損金もPE帰属所得に係る欠損金とPE帰属所得以外の国内源泉所得に係る欠損金に区分され、それぞれPE帰属所得に係る所得、PE帰属所得以外の国内源泉所得に係る所得から控除することができます(法法141一イ、142②、142の10、法令184①十七イ、191)。(『国税速報』平成28年2月29日号)

【疑問相談】国際課税

「外国法人課税に関する見直しの影響」

Question:

当社は日本に支店をもつ製造業を営んでいる英国の法人(資本金は500百万円、決算月は12月)です。
税制改正により外国法人の課税原則が見直されたと聞きました。当社の法人税申告に対する影響について教えてください。

Answer:

1. 課税所得の範囲が変更されました。

2. 次の制度が導入されました。

① 負債利子の損金不算入
② 本店配賦経費に関する書類の保存がない場合の損金不算入
③ 外国税額控除
④ 恒久的施設に係る取引に係る文書化

3. 12月決算法人の場合、平成29年12月期から適用されます。

【解説】

1. 課税所得の範囲の変更

恒久的施設(以下「PE」といいます)帰属所得が国内源泉所得の一つとされました(PDF、表1参照)。

ここでPE帰属所得とは、外国法人がPEを通じて事業を行う場合において、そのPEがその外国法人から独立して事業を行う事業者であるとしたならば、そのPEが果たす機能、そのPEとその外国法人の本店等との間の内部取引その他の状況を勘案して、そのPEに帰せられるべき所得のことをいいます。

今回の改正では、課税所得をPE帰属所得に係る所得の金額とPE帰属所得以外の国内源泉所得に係る所得の金額の2区分とし、これらの所得は通算しないこととされました。

したがって、欠損金もPE帰属所得に係る欠損金とPE帰属所得以外の国内源泉所得に係る欠損金に区分され、それぞれPE帰属所得に係る所得、PE帰属所得以外の国内源泉所得に係る所得から控除することができます(法法141一イ、142②、142の10、法令184①十七イ、191)。

なお、改正前の欠損金はいずれの所得からも控除することができるとされています。

2. 新しく導入された制度

(1) 負債利子の損金不算入

PEに係る自己資本の額が、PE帰属資本相当額に満たない場合には、PEを通じて行う事業に係る負債利子の額のうちその満たない部分に対応する金額(下記の計算式を参照)はPE帰属所得に係る所得の金額の計算上、損金の額には算入しないこととされました(法法142の4①、法令188⑫)。

損金不算入額= PEを通じて行う事業に係る負債利子の額×
                                  PE帰属資本相当額(*2) - PEに係る自己資本の額(*1)
                                  PEに帰せられる有利子負債の帳簿価額の平均残高

PEに係る自己資本の額(*1)は、PEに係る資産の帳簿価額の平均残高として合理的な方法により計算した金額からPEに係る負債の帳簿価額の平均残高として合理的な方法により計算した金額を控除した残額をいいます(法令188①)。

また、PE帰属資本相当額(*2)は、資本配賦法又は同業法人比準法のいずれかの方法により計算した金額とされました。資本配賦法には資本配賦原則法、資本配賦簡便法があり(一定の場合には、連結資本配賦法、連結資本配賦簡便法を適用)、同業法人比準法にはリスク資産資本比率比準法、簿価資産資本比率比準法があります。資本配賦法と同業法人比準法のどちらを選択するかは任意ですが、特段の事情がない限り継続適用する必要があります(法令188②~⑨)。

当制度が導入されたことに伴い、外国法人のPEに対しては、過少資本税制を適用しないこととされ(旧措法66の5⑩削除)、過大支払利子税制の適用上、外国法人のPEから本店等に対する内部利子の額を関連者支払利子等の額に含めることとされました(措法66の5の2⑨一イ)。

(2) 本店配賦経費に関する書類の保存がない場合の損金不算入

外国法人の本店配賦経費につき、その配分の基礎となる書類の保存がない場合には、その書類の保存がなかった本店配賦経費については、PE帰属所得に係る所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととされ、具体的には以下を記載した書類の保存が必要となります(法法142の7、法規60の10)。

① 配分の基礎となる費用の内容
② その費用がPEを通じて行う事業とそれ以外の事業に共通することについての説明
③ 配分計算の方法
④ その配分計算が合理的であることの説明

(3) 外国税額控除

PE帰属所得に係る所得の金額に係る法人税額のうち控除限度額(当該事業年度の国外所得金額に対応するものとして計算した金額)を限度して、外国法人税の額(PE帰属所得につき課される外国法人税の額に限る)を当該事業年度のPE帰属所得に係る所得に対する法人税の額から控除することとされました(法法144の2①)。

なお、外国法人の本店所在地国において課される外国法人税の額は本店所在地国において二重課税調整をすることが適当であることから、原則として外国税額控除の対象とならないとされている点に留意が必要です(法令195⑤一)。

また、外国税額控除を選択した場合には、その外国法人税額について損金の額に算入しないこととされました(法法142の6)。

(4) PEに係る取引に係る文書化

① PE帰属外部取引に関する事項

外国法人が外部の者と行った取引のうち、PE帰属所得に係る所得の金額の計算上、その取引から生ずる所得がPEに帰せられるものについて、以下の事項を記載した書類を作成しなければならないこととされました(法法146の2①、法規62の2)。

  • PE帰属外部取引の内容
  • PE及び本店等がPE帰属外部取引において使用した資産の明細並びにPE帰属外部取引に係る負債の明細
  • 外国法人のPE及び本店等がPE帰属外部取引において果たす機能並びにその機能に関連するリスクに係る事項
  • 外国法人のPE及び本店等がPE帰属外部取引において果たした機能に関連する部門並びに当該部門の業務の内容

② 内部取引に関する事項

PEと本店等との間の内部取引に関し、以下の事項を記載した書類を作成しなければならないこととされました(法法146の2②、法規62の3)。

  • 外国法人のPEと本店等との間の内部取引に係る注文書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類もしくはこれらに相当する書類又は写し
  • 外国法人のPE及び本店等が内部取引において使用した資産の明細並びに内部取引に係る負債の明細
  • 外国法人のPE及び本店等が内部取引において果たす機能並びに当該機能に関連するリスクに係る事項
  • 外国法人のPE及び本店等が内部取引において果たした機能に関連する部門並びにその部門の業務の内容
  • その他当該内部取引に関連する事項が生じたことを証する書類

なお、内部取引の対価の額とした額が独立企業間価格と異なることによりPE帰属所得に係る所得の金額が過少となる場合には、その内部取引は独立企業間価格によるものとされ、独立企業間価格については、移転価格税制における独立企業間価格と同様に算定することとされました(措法66の4の3②)。

また、独立の当事者同士であれば寄附金と認識されるような事象が本店等とPEの間に存在する場合には、本店等とPEとの間の寄附金に相当する内部取引が認識され、国外関連者に対する寄附金と同様に全額損金不算入とすることとされた点に留意が必要です(措法66の4の3③)。

3. 適用関係

平成28年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用されます。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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