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外国株式の譲渡益と外国税額控除における国外源泉所得

『国税速報』平成28年9月5日号

法人税における外国税額控除制度とは、一の所得に対して外国法人税と日本の法人税が同時に課税される二重課税の状態を排除するために設けられている制度であり、その控除限度額は、基本的には法人の各事業年度における法人税の額にその法人の当該事業年度の全世界所得のうちに当該事業年度の国外所得金額の占める割合を乗じた金額とされています(法法69①、法令142)。(『国税速報』平成28年9月5日号)

【疑問相談】法人税

「外国株式の譲渡益と外国税額控除における国外源泉所得」

Question:
弊社は、3月決算法人ですが、平成28年4月1日に開始した事業年度(以下「当期」)にX国に所在するA社の株式とY国に所在するB社の株式を売却してそれぞれ譲渡所得を得ました。A社株式に係る譲渡所得はX国において、また、B社株式に係る譲渡所得はY国において、それぞれ現地で法人税課税を受けたことから、弊社の当期の法人税の確定申告においてX国およびY国の法人税について外国税額控除の適用を受けようと考えています。

A社およびB社はいずれも不動産を有しておらず、また、ゴルフ場の所有や経営に関連する事業は行っていません。また、弊社は、X国国内にある支店を通じてX国において事業を展開しており、A社株式は当該支店を通じて保有していたことから、今回の売却も支店を通じて行いました。一方、弊社はY国には支店等の恒久的施設を有しておらず、また、B社株式の譲渡所得以外にY国で生じた所得はありません。さらに、Y国は、株式の保有割合等にかかわらず、非居住者が自国の法人の株式を譲渡したことによって得た株式譲渡所得に対して課税することとしています。なお、日本とY国との間では租税条約が締結されていませんが、日本とX国との間で締結されている租税条約においては、日本の居住者がX国国内に有する支店は恒久的施設に含まれ、また、X国は当該支店に帰属する所得に対して課税できることとされています。

弊社は当期の法人税の申告においてA社株式およびB社株式の譲渡所得に対して課税された外国法人税について外国税額控除制度を適用する場合、A社株式およびB社株式の譲渡所得を国外源泉所得として取り扱ってよろしいでしょうか。

Answer:
貴社の当期における外国税額控除限度額の計算上、A社株式に係る譲渡所得は国外源泉所得に含まれるものと考えます。

一方、B社株式に係る譲渡所得は国外源泉所得に含まれない可能性が高いものと考えます。

【解説】

1. 外国税額控除限度額の概要

法人税における外国税額控除制度とは、一の所得に対して外国法人税と日本の法人税が同時に課税される二重課税の状態を排除するために設けられている制度であり、その控除限度額は、基本的には法人の各事業年度における法人税の額にその法人の当該事業年度の全世界所得のうちに当該事業年度の国外所得金額の占める割合を乗じた金額とされています(法法69①、法令142)。なお、法人税における外国税額控除限度額をベースに地方法人税および住民税(法人税割)における控除限度額が計算されます(地方法人税法12、地法53㉔、321の8㉔)。

2. 国外源泉所得に含まれる株式の譲渡益

平成28年4月1日以後に開始する事業年度以降、株式の譲渡所得のうち次に掲げるもののみが国外源泉所得に該当するものとされています。

(1) 内国法人の国外にある恒久的施設に相当するもの(「国外事業所等」といいます)の所得に帰せられるべきもの(法法69④一、法令145の2)。

(2) 外国法人が発行する株式でその発行済株式の一定割合以上に相当する株数を所有する場合にその外国法人の本店又は主たる事務所の所在地国等においてその譲渡所得に対して外国法人税が課税されるもの(法法69④三、法令145の4四)。

(3) その有する資産の価額の総額のうちに国外にある不動産等の価額の合計額の占める割合が100分の50以上である法人(「不動産関連法人」といいます)の株式の譲渡により生ずるもの(法法69④三、法令145の4①五②)。

(4) 国外にあるゴルフ場の所有又は経営に係る法人の株式を所有することがそのゴルフ場を一般の利用者に比して有利な条件で継続的に利用する権利を有する者となるための要件とされている場合におけるその株式の譲渡により生ずるもの(法法69④三、法令145の4①六)。

(5) 租税条約において相手国等において外国法人税を課することが認められている所得(法法69④十五、法令145の12)。なお、上記⑴にある国外事業所等とは、内国法人の国外にある支店等の恒久的施設に相当するもののほか、我が国と外国との間で恒久的施設に関する規定がある租税条約が締結されている場合には、当該条約相手国等内にある当該条約に定める恒久的施設に相当するものとされています(法令145の2)。

3. 質問のケース

(1) A社株式に係る譲渡所得

質問のA社株式に係る譲渡所得は、貴社のX国にある支店に帰せられるべき所得(2(1)に掲げる所得)に該当するため、その譲渡所得の額は、貴社がX国国内に有する支店に帰属する他の事業所得等とともに、貴社の外国税額控除限度額の計算上、国外源泉所得に含まれるものと考えます。

(2) B社株式に係る譲渡所得

一方、B社株式に係る譲渡所得ですが、日本とY国との間で租税条約が締結されていないことから、本件株式譲渡所得は2(1)の所得には該当しません。次に、貴社はY国国内に恒久的施設を有していないことから、2(1)の譲渡所得には該当しないとえます。また、B社は不動産を有していないことやゴルフ場の所有および経営に関する事業を行っていないことから、2(3)および(4)の譲渡所得にも該当しないことが明らかです。さらに、Y国の税制上、非居住者の株式譲渡所得はその株式保有割合等にかかわらず課税されるとのことですので、2(2)の譲渡所得の要件である「一定割合以上に相当する株数を所有する場合にその外国法人の本店または主たる事務所の所在地国等においてその譲渡所得に対して外国法人税が課税されるもの」を満たさない可能性が高いものと考えます。したがって、貴社の外国税額控除限度額の計算上、B社株式に係る譲渡所得は国外源泉所得には含まれない可能性が高いものと考えます。

(3) 実務上注意すべきポイント

日本の国外で課税が発生する外国株式の譲渡所得であっても、外国税額控除制度の適用上国外源泉所得に該当しないものが発生し得ることから、外国株式に係る譲渡所得がある場合には、本邦法人税法、租税条約および所得が発生した現地の税法を確認し、当該譲渡所得が国外源泉所得を構成するものか確認する必要があります。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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