ナレッジ

グループ法人税制により譲渡損益を繰り延べた法人が適格合併し、その後株主が変動した場合の取扱い

『国税速報』平成29年3月6日号

本稿では、内国法人(譲渡法人)がその有する譲渡損益調整資産(固定資産、土地等、有価証券、金銭債権および繰延資産で一定のもの)を譲渡法人との間に完全支配関係のある他の内国法人(譲受法人)に譲渡した場合の制度概要を解説する。(『国税速報』平成29年3月6日号)

【疑問相談】法人税

「グループ法人税制により譲渡損益を繰り延べた法人が適格合併し、その後株主が変動した場合の取扱い」

Question:
当社(A社)はX1年に同一者(P社)による完全支配関係のある内国法人(B社)にC社株式を売却し、グループ法人税制によりC社株式に係る譲渡益を繰り延べていますが、X2年にB社を合併法人、A社を被合併法人とする適格合併を行う予定です。また、P社はX3年に適格合併後のB社株式を第三者であるQ社に譲渡する予定です。

この場合、A社は繰り延べたC社株式に係る譲渡益をX2年の適格合併時に益金算入する必要があるか、またA社がX2年に益金算入不要な場合、適格合併後のB社はX3年のP社によるB社株式の譲渡時に益金算入する必要があるか教えてください。(PDF1ページ目の図を参照)

Answer:
X2年の適格合併によるA社の解散およびX3年のP社によるB社株式の譲渡はいずれも譲渡損益計上事由に該当しないため、B社がC社株式を譲渡等するまで当該譲渡益は繰り延べられることになります。

【解説】

1 制度の概要

⑴ 譲渡損益の繰延べ

内国法人(譲渡法人)がその有する譲渡損益調整資産(固定資産、土地等、有価証券、金銭債権および繰延資産で一定のもの)を譲渡法人との間に完全支配関係のある他の内国法人(譲受法人)に譲渡した場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額または譲渡損失額に相当する金額は、その譲渡した事業年度の所得の金額の計算上、損金の額または益金の額に算入することにより、その譲渡損益を繰り延べることになります(法法61の13①)。

⑵ 繰り延べた譲渡損益の計上

譲渡法人が上記⑴の譲渡損益調整資産に関する譲渡損益の繰延べの適用を受けた場合において、その後下記①~③のいずれかの事由が生じたときは、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額または譲渡損失額の全部または一部を当該譲渡法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額または損金の額に算入することにより、その譲渡損益を計上することになります(法法61の13②③)。

① 譲受法人において下記の事由が生じた場合(法令122の14④)

a) 譲渡損益調整資産の譲渡、貸倒れ、除却その他これらに類する事由が生じたこと

b) 譲渡損益調整資産が適格分割型分割により分割承継法人に移転したこと(譲受法人との間に完全支配関係のある内国法人への適格分割を除く)

c) 譲受法人が公益法人等に該当することとなったこと

d) 法法25②③または法法33②~④(会社更生法または民事再生法等の場合の評価損益の計上)の規定により、譲渡損益調整資産について評価益または評価損が益金の額または損金の額に算入されたこと

e) 譲渡損益調整資産が減価償却資産または繰延資産に該当し、その償却費が損金の額に算入されたこと

f) 譲渡損益調整資産と銘柄を同じくする有価証券(売買目的有価証券を除く)を譲渡したこと

g) 譲渡損益調整資産が法令139の14に規定する償還有価証券に該当し、法令139の2①の規定により調整差益または調整差損が益金の額または損金の額に算入されたこと

h) 譲渡損益調整資産が法法61の11①に規定する連結納税の開始に伴う時価評価資産に該当し、同項に規定する評価益または評価損が益金の額または損金の額に算入されたこと

② 譲渡法人が譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなった場合(法法61の13③)

ただし、下記の事由に基因して完全支配関係を有しなくなった場合を除きます。

a) 譲渡法人の適格合併(合併法人が当該譲渡法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る)による解散

b) 譲受法人の適格合併(合併法人が当該譲受法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る)による解散

③ 譲渡法人が法法61の11①または法法61の12①(連結納税の開始または加入に伴う時価評価損益)の規定による時価評価対象法人となった場合(法法61の13④)

⑶ 譲渡法人が適格合併により解散した場合の取扱い

譲渡法人が適格合併(合併法人が当該譲渡法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る)により解散したときは、当該適格合併の日の属する事業年度以後の各事業年度においては、当該合併法人を譲渡法人とみなして、本制度の規定(法法61の13)を適用します(法法61の13⑤)。

⑷ 譲受法人が適格合併等により譲渡損益調整資産を移転した場合の取扱い

譲受法人が適格合併等(合併法人等が譲受法人との間に完全支配関係がある内国法人であるものに限る)により譲渡損益調整資産を移転したときは、その移転した日以後に終了する譲渡法人の各事業年度においては、当該合併法人等を譲受法人とみなして、本制度の規定(法法61の13)を適用します(法法61の13⑥)。

2 本件の取扱い

⑴ X2年の適格合併によるA社の解散

A社はC社株式の譲渡益繰延べの適用を受けた後、適格合併によりB社との完全支配関係が消滅します。しかし、完全支配関係のある内国法人との適格合併による解散の場合は、繰り延べた譲渡損益の計上事由から除かれており、適格合併後は合併法人を譲渡法人とみなして(みなし譲渡法人)、譲渡損益の繰延べが継続されることとされています。

A社とB社の適格合併により譲渡法人と譲受法人が同一法人となりますが、上記1⑵② a)の完全支配関係の消滅から除かれる適格合併の合併法人について譲受法人を除外する規定はありません。

したがって、A社はX2年の適格合併を基因としてC社株式に係る繰延べ譲渡益を益金算入する必要はなく、上記1⑶のとおり適格合併後はB社を譲渡法人とみなして、譲渡益の繰延べが継続されることになります。

⑵ X3年のP社によるB社株式の譲渡

P社によるB社株式の譲渡により、P社とB社の完全支配関係が消滅します。しかし、上記⑴によりB社をみなし譲渡法人として継続されたA社の譲渡損益の繰延べについてP社とB社との完全支配関係の継続は要件となっていません。

X2年の適格合併によりA社とB社が同一法人となることで譲渡法人と譲受法人の間の完全支配関係が消滅しているため、その後継続すべき完全支配関係は存在しないことになります。

したがって、B社はX3年のP社によるB社株式の譲渡を基因としてC社株式に係る繰延べ譲渡益を益金算入する必要はなく、B社において上記1⑵①または③のいずれかの譲渡損益計上事由が生じるまで譲渡益の繰延べが継続されることになります。

PDF

こちらから記事の全文をダウンロードできます。

 

 

 

※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

(562KB, PDF)

関連するサービス

お役に立ちましたか?