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ファミリーオフィスとはーその概要・意義

ファミリーコンサルティングニュースレター 2021年8月

近年その存在がクローズアップされる機会が増えてきた「ファミリーオフィス」ですが、その性質ゆえに活動内容を具体的にイメージしにくいものでもあります。また、ファミリーオフィスといえば、ほとんどの人は、富裕層の一族がお金を投資する手段であると真っ先に思い浮かべますが、実際にファミリーオフィスを所有する家族にとってはどのような意義があるのでしょうか?

家族にとってのファミリーオフィスの意義

ファミリーオフィスとは

初期のルーツは1800年代までさかのぼりますが、当時は成功した初期の起業家の重要な財産を管理するために設立されたと言われています。家族の財政状態を直接又は間接に管理するために、家族によって設立される民間団体のことを指し、多くの場合、ファミリービジネスが成功した結果として蓄積する財産や資産を保有しています。

場合によっては、ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドの主要な役員が、第三者の資産を運用するファンドへの助言業務をやめ、代わりに自分の家族の資産を単独で管理する、独立したプライベートなファミリーオフィスとして発展させることで形成されることもあります。

著名なプライベートバンクや、投資運用会社と同様のサービスを提供するものの、特定の1つの家族のニーズに特化した組織であり、その家族の特性や願望などを反映した、複雑に調整された組織です。

ファミリーオフィスにはさまざまな種類がありますが、通常は次のカテゴリーに分類されます。

  • シングルファミリー
  • マルチファミリー
  • バーチャル
  • ハイブリッド

より伝統的なファミリーオフィスは、シングル及びマルチファミリーオフィスであり、これらは通常、より高いコストがかかります。資産運用業界では、自分の財産を管理するための経験則があり、資産を管理するための年間のサービスコストは(金融資本だけで見ると)総資産の1%であるため、資産規模が大きい家族ほど、よりファミリーオフィスが独立した形態をとります。そのため、一般的に富裕層の中でも最も資産規模が大きい一族がシングルファミリーオフィスを構成している場合が多く見られます。

図1:シングルファミリーオフィスとマルチファミリーオフィスのSWOT分析

(783KB, PDF)
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1. ファミリーオフィスの意義

ファミリーオフィスは、各々の創業者の価値観が異なるため、それぞれに特色があります。一方で、多くのファミリーオフィスでは、共通して以下の事項を達成するために運営されています。

1) 家族の資産の管理や、ガバナンス体制を確固たるものにするための枠組作り

2) 家族の伝統、価値観、ビジョンを促進させる

3) 家族のために、様々な特化したサービスを調整し、一括管理する

4) 経済的、また個人的なリスクを管理する

5) 家族の保有する資産から得られる様々な優良サービスへのアクセスを活用する

6) 家族の機密事項・プライバシーの保持

上記のように、ファミリーオフィスは家族の歴史、財産、伝統を包括する強力なツールですが、家族内での対立の可能性や、価値観の相違があるため、家族が、永続的にこうした違いを管理するための構造や合意を形成する必要性が生み出されています。そのため、ファミリーオフィスはファミリーガバナンス(家族統治)、事業承継、財産承継を促進する手段なども提供しています。(図2参照)

図2:ファミリーオフィスの業務内容一覧

 

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まとめ

現在設立されているファミリーオフィスは、150年前から今日にいたるまで似たようなものが多いですが、経済・政治・社会全体で不確実性が高まる中、ファミリーが大事にしたいウェルス(財産、評判、価値観)を守り、次世代へ安定的に引き継ぐために、 “やるべきこと” は従来以上に多岐に広がっています。
ファミリーオフィスを支える人材確保の問題、中立的・客観的な立場の相談相手が日本では少ないこと、また今般の新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に顕在化したリモート対応などのデジタル化の必要性をはじめ、課題は山積しています。こうした課題に対応できる人材やリソースの確保がより一層求められると考えています。

※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。

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