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ファミリーオフィスの運用における考慮事項(2)

ファミリーコンサルティングニュースレター 2021年12月

前回配信した記事では、ファミリーオフィスを実際に運用する際に頻繁に論点となる、「ガバナンス」・「コスト構造」・「人材」についてご紹介いたしました。今月号では、前回に続きファミリーオフィスの運用に、同様に欠かせない論点である、「テクノロジー」・「リスク管理」・「規制」・「資産管理」・「社会貢献活動」についてご紹介いたします。

前回の記事はこちら

テクノロジー・リスク管理における重要な論点

世界中の企業や政府がDXを促進し、変化のペースが加速する中、ファミリーオフィスでも、運用効率、関係者とのコミュニケーション、データセキュリティの面での改善のため、様々なテクノロジーを採用し、強化するケースが増えています。具体的には、クラウドコンピューティング、モバイルアプリケーション、ロボットプロセス自動化 (RPA) 、及びその他の新しいテクノロジーによって、ファミリーオフィスのスタッフと利害関係者が相互にやり取りする際、ITコストを抑制し、効率的な運用が促進されています。

一方、こうした技術には、特定のスキルとサイバーセキュリティに対する警戒の強化を必要とするリスクと課題が内包されています。複数のソースからのデータへのアクセス、分析、操作、統合、レポート作成などの機能を備えたデータ集約も、ファミリーオフィスの重要かつ増大する課題です。多くのファミリーが、集約の負担をファミリーオフィスからシフトさせるために、グローバル規模のカストディなどに移しています。

こうした動きの中で、次の3~5年の間、ファミリーオフィスがテクノロジー分野で投資が必要となる論点は主にITセキュリティ・インフラ整備、ERP・勘定元帳などの会計ソフトウェアのアップグレード、文書管理、データ管理、e-roomなどのバーチャル空間、ファイルの授受、モバイルデバイスアプリケーションなどが挙げられます。また、リスク管理の面では、効果的な内部統制が不可欠ですが、主に下記のリスクを重点的に管理する必要があります。

  • サイバーリスク:個人情報、評判、公私のスケジュール、出張、個人旅行、投資口座、商取引などの分野
  • 不正リスク:これはまれではあるが、ファミリーオフィスが現金や資産に近接しており、財務活動やファミリー間のコミュニケーションを一人の従業員が大きな裁量をもってコントロールしているため、重要なリスク領域
  • 組織及び運用上のリスク:ファミリーオフィスの従業員、プロセス、システム、外部関係者だけではなく、ファミリー自身の物理的セキュリティも含む

リスク管理を改善するプロジェクトは、必要経費としてではなく、むしろファミリーのレピュテーションや、幸福、資産の保全のための投資とみなすことができます。強力なリスク管理のフレームワークを備えたファミリーオフィスは、多くの場合、市場の混乱、サイバー攻撃、社内の不正行為、及びその他の関連する脅威に対応する準備や体制を整えています。

 

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法務・税務・規制関連

ファミリーオフィスの法務、税務、及び規制の枠組みは複雑な場合があり、優れたアドバイザーの専門知識が必要です。一般的に、ファミリーオフィスにおいて焦点となる領域は下記のとおりです。(本セクションでは、ファミリーオフィスに適用される法律、税金、規制環境の概要のみを提供しています。複数の管轄区域が関与する場合には、ファミリーオフィスの構造に関する事項が複雑になる可能性があるため、ファミリーオフィスを設置する前に税務・法務相談を行うことが重要です)

法的な考慮事項:

  • ファミリーオフィスの形態:会社、パートナーシップ、信託など、どの形態が最も適しているか
  • 誰がファミリーオフィスを所有し、管理するか
  • ファミリーオフィスに適した法的管轄権は何か
  • 雇用契約やサービス契約など、他にどのような法的契約が必要か

税金に関する考慮事項:

  • 税務上、ファミリーオフィスはどのように構成すべきか
  • ファミリーオフィスの活動内容は継続的な取引や、事業にまで発展するのか
  • ファミリーオフィスの所有と相続に関して贈与税や相続税の問題はあるか
  • ファミリーオフィスの役割は国際的な家族及び/または構造にどのように影響するか

ファミリーオフィスは、定期的に監査への準備体制を内部で分析・評価することにより、税務当局による調査/監査に効果的に備えることが可能になります。この準備体制は、内部専門家との簡単な議論から、文書分析、インタビュー、その他のデータ収集などによって整えられていきます。

 

フィランソロピー(社会貢献)

フィランソロピーは、ファミリーを目的のもとに統合し、効果的なガバナンスとコラボレーションを促進する一方で、ファミリーには、地域社会や世界中の社会問題や環境問題に有意義な影響を与える機会を与えます。また、社会貢献活動によって、若い世代がファミリーのビジョンと継承により関与します。投資と同様に、社会貢献活動は多くの場合、ファミリーオフィスの基盤となる活動です。

今日、ファミリーには、社会的・環境的影響を生み出すための選択肢がかつてないほど多く存在しています。社会貢献活動家は、民間財団や慈善寄附基金から、地域財団やオンライン寄附プラットフォームまで、様々な手段を使って寄附を行うことが可能です。社会貢献活動の手段は、例えば政治的貢献、社会的責任投資、社会的目的企業への投資などの、個人が変化を起こそうとするための新たな選択肢によって、さらに複雑になっています。

ファミリーオフィスは、ファミリーがこれらの選択肢の中から、適切なものを導き出す上で重要な役割を果たします。ファミリーオフィスの役員は、専門的な社会貢献アドバイザーと連携して、問題点と効果的な実践を家族が理解できるよう支援し、明確な社会貢献目標を設定し、併せて、ファミリーの社会貢献ビジョンをより効果的に達成できる戦略と戦術も検討します。

ファミリーオフィスは、個人が慈善寄附に関連する複雑な税金問題を解決するのに重要な役割を果たす場合があります。遺産と、遺産からの慈善寄附をより密接に管理したいと考える家族にとって、財団は適切な慈善寄附手段となる可能性があります。
 

まとめ

テクノロジーの進歩と情報、リソース、市場へのアクセスの向上により、グローバルなオポチュニティが拡大し続けており、資産をもつファミリーは、まさにこの変化の最前線にいます。ファミリーの構成員の地理的分散、外国管轄区域での不動産所有、あるいは外国企業への投資を通じて、裕福なファミリーはその世界的な存在感を増しています。ファミリーオフィスを活用することによって、ファミリーの世界的な活動から生じる様々な問題に対処するために必要な支援を得られることが可能になります。

※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。

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