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相続税申告における財産評価の重要性
ファミリーコンサルティングニュースレター 2021年5月
日本の相続税の仕組みは「法定相続分課税方式」を採用しており、家族構成と財産評価によりほぼ自動的に相続税が決まるため相続税計算を行う上で財産評価が極めて重要となります。特に不動産の評価は数多くの評価減等の規定があり、適用判定に税法以外の法律の知識が必要なものも多くあることから、相続税を担当する税理士によって大きく違いが出る財産です。今回は、税理士により違いが出やすい評価規定について事例を交えて触れていきます。
税理士により違いが出やすい評価規定
不動産評価において判定が難しく、他の法律の知識が必要な規定について事例を交えつつ、解説していきます。
※PDF版では写真付きで解説しておりますので、ぜひご確認ください。
評価単位や権利関係
(内容)
- 利用単位が異なる土地や同族会社や第三者に賃貸している土地などは、評価単位の判定や権利関係の判定が大変難しいです
- 評価単位や権利関係を誤ると評価額が大きく異なるため、正確な判断が必要です
■ 事例
(前提)
- 土地上に、アパートを2棟建築している
(チェックポイント)
- 利用状況や賃貸借契約の内容によって評価単位に影響があります
- 評価単位は、すべての評価規定に影響するため、適切に判定する必要があります
(評価額の違い)
(1)1つの土地として全体で評価した場合
154,000千円
(2)アパートの敷地ごとに評価した場合
135,000千円
(3)評価減
△19,000千円
騒音や高低差
(内容)
- 線路沿いなど騒音が基準値より多く発生している土地や高低差がある土地など、周辺より利用価値が低下している土地は補正率を適用できる可能性あります
- 各種の環境基準の測定や災害地域などの各種調査による検討が必要です
■ 事例
(前提)
- 対象土地の近くに、線路等による騒音がある
(チェックポイント)
- 対象土地の評価に利用する路線価に騒音等の影響が加味されているか各種調査の必要があります
(評価額の違い)
(1)単純に路線価×地積で評価した場合
347,000千円
(2)上記(1)に騒音等の影響を加味した場合
308,000千円
(3)評価減
△39,000千円
無道路地
(内容)
- 日本には色々な道路(道路法上の道路、建築基準法の道路など)があり、評価対象地がどのような道路に接道しているかにより評価方法が異なります
- 道路の判定を誤ると評価額が大きく異なるため、各種調査による正確な判断が必要です
■ 事例
(前提)
- 対象土地の接道している道路が、建築基準法上の道路ではない
(チェックポイント)
- 接道している道路の種別を調査し、その結果をもとに適切な評価方法を検討する必要があります。
(評価額の違い)
(1)単純に協定道路ベースで評価した場合
50,000千円
(2)無道路地として評価した場合
12,000千円
(3)評価減
△38,000千円
周囲の宅地に比べて広い土地
(内容)
- 評価対象地が周囲の宅地に比べて広く(500㎡以上)、戸建住宅に適した土地等である場合、評価減を適用できる可能性があります
- 税制改正により相続の時期によって評価減の適用方法が異なります
① 広大地評価【2017年12月31日以前の相続】
最大65%の評価減が可能
② 地積規模の大きな宅地評価【2018年1月1日以降の相続】
20%~30%程度の評価減が可能
■ 事例(広大地評価)
(前提)
- 周囲の土地と比べて広い(800㎡)
- 周囲が住宅街(戸建住宅が多いエリア)
- 戸建住宅を建築する場合、開発道路が必要
(チェックポイント)
- 周囲の開発状況を含む、各種調査の必要があります
- 所在する地域の開発要綱に沿った開発想定図面の作成する必要があります
(評価額の違い)
(1)広大地評価を適用しない場合
20,000千円
(2)広大地評価を適用した場合
7,000千円
(3)評価減
△13,000千円
■ 事例(地積規模の大きな宅地評価)
(前提)
- 評価地域が「倍率地域」である
- 市街化調整区域以外に所在している
(チェックポイント)
- 「倍率地域」に所在する場合でも、「市街化調整区域」以外であれば、地積規模の大きな宅地を適用し評価することができます
- 「固定資産税評価額×倍率」による評価額と比較する必要があります
(評価額の違い)
(1)地積規模の大きな宅地評価を適用しない場合
20,000千円
(2)地積規模の大きな宅地評価を適用した場合
14,000千円
(3)評価減
△6,000千円
まとめ
不動産評価の評価規定は、上記で紹介させていただいた規定以外にもあり非常に複雑です。相続税は申告期限10カ月という短い期間に、「財産評価」「納税額シミュレーション」「遺産分割」「納税」と数多くの事を行う必要があります。この短い時間ではどうしても「納税」に意識が行き、「財産評価」まで意識が行かないことが多いと思います。
相続手続等が終わり、お時間ができた時期に、ご自身が経験された相続における不動産評価と、周辺相場やご自身の感覚と乖離があるなど違和感がある場合には、セカンドオピニオンに見ていただくことが重要です。
※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。
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