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ケイマン諸島政府、AEOIポータルサイトの再開とCRSユーザーガイド等の改定を公表

国際税務 QI/FATCA/CRS関連情報

本ニュースレターでは、2018年3月20日にケイマン諸島政府より公表された、共通報告基準(CRS)ガイダンスノートおよび事業体用自己宣誓書類の改訂版の概要、ケイマン諸島報告金融機関(CRFI)において対応が求められるCRS報告義務について説明する。(国際税務QI/FATCA/CRS関連情報/2018年4月10日)

2018年3月20日、ケイマン諸島政府は、自動的情報交換制度(Automatic Exchange of Information:以下「AEOI」)ポータルにおける新しい機能の実装、AEOIポータルサイトユーザーガイド v4.0(以下「改訂版ユーザーガイド」)、共通報告基準(Common Reporting Standards:以下「CRS」)ガイダンスノート v3.0及び事業体用自己宣誓書類の改訂版を公表した。ここでは、その概要とケイマン諸島報告金融機関(Cayman Reporting Financial Institution:以下「CRFI」)において対応が求められるCRS報告義務について記載する。

1. CRSガイダンスノート v3.0の公表

2018年3月20日にCRSガイダンスノート v3.0(以下「改訂版ガイダンスノート」)及び事業体用自己宣誓書類の改訂版が公表された。2017年7月31日付CRSガイダンスノート v2.1(以下「旧ガイダンスノート」)からの主な変更点については2018年3月20日付のケイマン当局による通達で確認できるが、ここでは特に影響が大きいCRSにおける実質的支配者の閾値の変更について記載する。

(1) CRSにおける実質的支配者の閾値

CRFIは口座所有者である資本・負債持分保有者である出資者に受動的NFE(後述の3. 報告義務の実施を参照)が存在する場合には、受動的NFEの全ての実質的支配者の税務上の居住地国の判定を義務付けられている。

実質的支配者の定義は金融活動作業部会(以下「FATF」)の提言と整合性を保つ形で解釈するものとされており、旧ガイダンスノートではFATFの提言(2012年2月採択)に基づいて、FATFの提言の第一テストの適用における閾値は25%であったが、改訂版ガイダンスノートでは2017年マネーロンダリング規制に基づいた10%に変更された。この変更はOECDがCRSウェブサイト上で公開しているFAQ(#26)とも整合的である。US FATCAにおける実質的支配者の閾値は変更されず10%のままであることに留意されたい。

(2) 改訂版自己宣誓書類の取得義務

実質的支配者の閾値変更に伴い、事業体用自己宣誓書類についても改定が行われ、2018年4月1日以降は改訂版の自己宣誓書類を使用しなければならない。また、既に受動的NFEから改定前の自己宣誓書類を受領しているCRFIは、2018年12月31日までに改訂版の自己宣誓書類を新たに取得することが義務付けられている。ただし、上場法人や金融機関等の受動的NFE以外のCRSステータスを有する事業体から、改定前の自己宣誓書類を受領していた場合は事業体からの再取得の対象にはならないことに留意されたい。

2. AEOIポータルサイトの再開

AEOIポータルサイトが再開され、主に以下の3つの機能が追加された。また、それに伴って改訂版ユーザーガイドが公表された。

(1) 権限者の変更機能

旧AEOIポータルサイトでは権限者(Authorising Person:以下「AP」)の変更は通知義務(Variation in Reporting Obligations)から行うこととされていたが、新たにAPの変更機能が実装された。(改訂版ユーザーガイドのモジュールⅢセクション2.を参照)

(2) 主要連絡担当者の変更機能

旧ポータルサイトでは連絡担当者(Principal Point of Contact:以下「PPoC」)の変更は、ケイマン当局への電子メールでの変更要請のみ受け付けられていたが、新たにPPoCの変更機能が実装された。(改訂版ユーザーガイドのモジュールⅢセクション3.を参照)

(3) FIの終了

清算又は解散するCRFIは、US FATCA及びCRS目的となる最終申告書を提出した後に解除手続を行う必要があるが、ポータルサイト上での解除手続が可能となった。

3. 報告義務の実施

昨年同様、CRSにおいて、CRFIは報告対象口座が存在しない場合でも、ゼロ報告(CRS宣誓申告)の実施が求められる。また、今回から報告対象国に日本が追加されたため、CRFIの資本・負債持分保有者である出資者に日本居住者が存在する場合には、原則として報告対象者となるため留意されたい。

(1) 報告期限

今回の報告(報告年度2017年に関する2018年の報告)に関する報告期限は2018年5月31日である。

(2) 報告対象者及び報告対象国

報告対象者とは原則として報告対象国を税務上の居住地国とする者及び報告対象国を税務上の居住地とする実質的支配者が有する受動的NFEとなる。

ただし、以下のいずれかに該当するときは報告対象者から除外される。よって、日本居住者が出資者に存在する場合でも上場会社や金融機関であれば報告対象とはならない。

① 上場会社及び上場会社の関連事業体(直接又は間接的に議決権又は価値の50%超を保有される等の一定の関係にある事業体)

② 政府事業体、国際機関及び中央銀行

③ 金融機関

また、受動的NFEとは以下のいずれかに該当する事業体である。

① 能動的NFEではないNFE(US FATCAの受動的NFFEに相当する事業体)

② 総収入が主として金融資産の投資、再投資又は売買に起因し、かつ、他の金融機関により管理又は運用されている投資事業体(参加国管轄区域のものに限る)

報告対象国及び参加国管轄区域の一覧は改訂版ガイダンスノートのAppendix 2及び3を参照されたい。

(3) CRS対象国別申告(Receiving Country Return)

報告対象口座が存在する場合、改訂版ユーザーガイドモジュール V セクション1.3に規定されているXML形式、又はセクション1.4に規定されているマニュアル入力形式のいずれかの方法で、国別に申告が必要となる。ただし、国別申告では、ゼロ報告はできず、報告対象者が存在しないCRFIは、後述のCRS宣誓申告においてゼロ報告を行う必要がある。報告対象者が存在するCRFIは、最初に、CRS対象国別申告を行った後に、CRS宣誓申告を行うこととなる。

(4) CRS宣誓申告(Filing Declaration)

すべてのCRFI及び受託者開示信託は、改訂版ユーザーガイドモジュール V セクション1.5に規定されているCRS宣誓申告様式(CRS Filing Declaration Form)を提出しなければならない。この様式では、CRS対象国別報告において実施した申告の内容の確認及びゼロ報告を行うとともに、それらの内容が正確であり、CRFIの報告義務を満たしていること及び不正確な情報を税務情報庁(TIA)に提供した場合には、罰則の対象となることについても認めた上で、宣誓するものである。

(5) UK CDOT報告

昨年の報告(報告年度2016年に関する2017年の報告)については、英国CDOTに基づく報告義務を有する金融機関は、英国CDOTに基づく報告対象者をCRSに基づく報告ファイルに含めて報告することとされていた。今回の報告以降の報告については英国CDOTに基づく報告は求められず、CRSに基づいて英国居住者を報告することとなる。

おわりに

CRFIに該当するSPV等の事業体を保有する日本の金融機関は昨年同様にCRSの報告義務の実施が求められるが、今回の報告から日本居住者が報告対象に含まれることから、報告漏れがないように特に注意が必要となる。また、2017年6月13日付のニュースレターでも記載のとおり、CRFIはCRSに基づくコンプライアンスプログラムの構築が求められており、いまだコンプライアンスプログラムを制定していないCRFIについては早急な対応が求められる。

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