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OECDによるCRS導入ハンドブックの公表と、国税庁によるFATCA不同意口座に関する手続の整備

米国税務 QI/FATCA関連情報/2015年8月18日

日米など先進34カ国で構成する経済協力開発機構(OECD)は、2015年7月8日に「CRS導入ハンドブック(Common Reporting Standard Implementation Handbook)」を公表した。また、国税庁は、2015年7月3日に「租税条約等に基づく相手国等の情報交換及び送達共助手続についての一部改正について(事務運営指針)」を公表し、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)における不同意口座に関する情報を金融機関から入手し、米国への提供するための手続を定めた。(米国税務 QI/FATCA関連情報/2015年8月18日)

1. CRS導入ハンドブック

OECDは2014年7月に金融口座の自動情報交換のための新国際基準(Standard for the Automatic Exchange of Financial Account Information in Tax Matters:以下「新基準」)の完全版を公表した。これは、世界中の金融機関が特定した非居住者口座を政府間で自動交換するためにOECDが策定したもので、既に90カ国以上が賛同しており、日本でも国内法を整備し、2017年1月から導入が予定されている。

新基準には、共通報告基準(Common Reporting Standard:以下「CRS」)、モデル協定(Model Competent Authority Agreement:以下「CAA」)、政府および金融機関のためのコメンタリー(解説書)およびガイダンスが含まれている。

今回公表されたCRS導入ハンドブックでは、新基準の内容を平易な英語でわかりやすく解説している。また、各国政府が国内法を整備する上での重要ポイントや、検討すべき事項、CRSとFATCAモデル1との主な相違点、FAQ等が明記されている。CRS導入ハンドブックはOECDのホームページで公表されており、以下のリンクから入手が可能である。

Common Reporting Standard Implementation Handbook (OECDホームページ(英語、PDF))

2. 国税庁によるFATCA不同意口座についての手続の整備

2014年7月1日から世界中の金融機関が対応を開始したFATCAでは、日本の金融機関は、米国人等の報告対象者を特定し、同意を取得した上で、米国内国歳入庁(Internal Revenue Service:以下「IRS」)へ直接報告を行うが、同意が取得できなかった場合には、それらを不同意口座として、該当する口座の数と口座残高の合計のみを報告する。IRSは、当該不同意口座の詳細について、租税条約に基づく情報交換要請を日本の国税庁にすることができる。国税庁は、IRSからの要請を受けた場合には、金融機関から情報を入手し、IRSへ提供することとなっている。

FATCAにおける不同意口座についての情報提供の実施にむけ、国税庁は、2015年7月3日「租税条約等に基づく相手国等との情報交換及び送達共助手続についての一部改正について(事務運営指針)」(官際4-259他)(国税庁ホームページ)を発遣した。
これにより国税庁はIRSから不同意口座について情報提供の要請があった場合には、照会文書(国税庁から金融機関に対して不同意口座等の情報を照会する文書)を発送し、情報を得るための手続を定めている。

なお、FATCAに基づくIRSからの情報提供要請については、庁国際業務課が管理するものとし、庁国際業務課は、IRSから要請を受けてから6カ月以内に、照会文書への回答として、e-TaxホームページのFATCAコーナーを通じて受領した情報を、IRSへ提供するものとしている。

終わりに

日本では、FATCAに関する国内法が「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の一部改正(租税条約実施特例法の一部改正)として、2015年3月31日付官報で、施行令、施行規則とともに公表されている。初期導入国として、2016年1月から開始を表明している国々の法整備が進まない中、異例の速さともいえる。ただ内容を見てみると、報告対象国の居住者として特定した法人が、Passive NFE(施行令では特定法人として規定している)に該当する場合にその支配者を確認する規定や、新基準に参加しない国の投資事業体をPassive NFEとみなしてその支配者を確認する規定等、いくつか新基準で求められている重要な規則が含まれていない点が気になる。また、FATCAの規則を包含する形で国内法ができていないため、このままであれば、日本の金融機関は、既に実施済みのFATCA対応に加え、FATCAに非常に似ているが、細部で異なる追加の対応を迫られることになる。

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