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IRS様式W-8BEN-Eの更新および関連インストラクションを公表

米国税務 QI/FATCA関連情報/2016年5月20日

2016年4月、事業体用の新様式W-8BEN-E(米国税の源泉徴収および報告に関する受益者のステータス証明書)およびそのインストラクションが公表された。(米国税務 QI/FATCA関連情報/2016年5月20日)

1. はじめに

米国から見て米国非居住者となる外国事業体や外国人に、配当・利子・ロイヤルティーなどの米国源泉所得を支払う場合、原則として30%の源泉徴収税が課される。ただし、米国連邦税の規定や米国が締結している租税条約の規定により源泉徴収税が軽減、あるいは免除される場合がある。その軽減や免除を受けるためには外国事業体や外国人がその軽減や免除を受けることが適格であることを、源泉徴収義務者に知らせる必要がある。

租税条約の適用を受ける適格な外国事業体であることを通知するための様式がW-8BEN-Eである。

また2010年に米国で成立し、2014年7月から世界中で対応が求められている外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act:以下「FATCA」)では、支払の受取人または口座保有者のFATCAステータスを確認するため、様式W-8BEN、W-8BEN-Eの提出を求められる場合がある。要求されたW-8BEN, W-8BEN-Eを提出しない場合には、取引ができない、あるいは、30%の源泉徴収が課される可能性がある。 

FATCA成立以前の旧様式であるW-8BENは、個人、法人のいずれにも利用できたが、2014年2月に様式W-8BENは個人用となり、事業体用として様式W-8BEN-Eが作成された。

2016年4月、事業体用の新様式W-8BEN-E(米国税の源泉徴収および報告に関する受益者のステータス証明書)およびそのインストラクションが公表された。

2. 新様式W-8BEN-Eの重要な更新

財務省規則の規定のとおり源泉徴収義務者は、様式に示された改訂日後の6カ月間、旧様式W-8BEN-Eを引き続き受け付けて有効期間の終了までこれに依拠することができる。様式W-8BEN-Eの有効期間は、租税条約を適用しない場合や、FATCAステータス確認だけの目的であれば、記載内容に変更が無い限り有効であるが、米国源泉所得の受取があり、租税条約を適用する場合には、その署名の年とその後3年間(暦年)有効である。

(1)     重要な更新1:恩典制限条項

新様式では、条約に基づく恩典を申請する納税者に、当該恩典を申請するための恩典制限(Limitation on benefit:以下「LOB」)条項を満たす旨の宣誓が義務付けられる。新様式には、合計10のチェックボックスが追加された。インストラクションでは、これらの条項に対し詳細な説明が記載されているが、最終的な判定は条約そのものの文言を確認して行わなければならないので留意されたい。

日米租税条約の場合、第22条第1項に租税条約のすべての恩典を享受できる居住者について規定しているが、主に以下の6パターンとなる。

1)      個人

2)      政府組織

3)      上場企業および上場企業の子会社

4)      非課税組織

5)      年金基金

6)      個人以外のものを対象とする支配権テストおよび基礎侵食テストを満たす企業

3)の要件を満たさない多くの日本法人は6)の要件を満たす場合、適格居住者とされ日米租税条約の適用が可能となる。支配権テストとは、上記の1)から5)に規定されている者に50%以上保有されていることであり、基礎侵食テストとは、当該日本法人の課税所得の50%未満が、日米どちらの居住者でもない者に対して支払われ、かつその支払が日本の所得算定の適用上損金算入できる場合である。

(2)     重要な更新2:みなし事業体

みなし事業体による様式のパートIIの適切な記入に関するものである。今後本様式では、以下に該当する場合のみ記入が必要とされている。

  • グローバル仲介人識別番号(Global Intermediary Identification Number:以下「GIIN」)を有するみなし事業体
  • 外国金融機関(Foreign Financial Institution:以下「FFI」)の居住国外の国の当該FFI支店

みなし事業体は原則的に様式W-8BEN-Eを源泉徴収義務者に提出せず、適切な本人確認書類の自身の名義での提出をその所有者に任せる。ただし、みなし事業体が源泉徴収の対象となる支払を受け取り、かつ単独の所有者の設立国以外の管轄区域に居住するか、または独自のGIINを有するかのいずれかの場合、パートIIに記入して、当該支払を受けるみなし事業体の第4章ステータスを開示する必要がある。

(3)     重要な更新3:スポンサー事業体

スポンサー事業体およびスポンサー付事業体に関して、本様式およびインストラクションにいくつかの追加が行われた。スポンサー付FFIのIRS(Internal Revenue Service:米国内国歳入庁)への登録およびGIIN取得期限である2017年1月1日に向けて、スポンサー付事業体の登録がすでに始まっている。新様式ではこの状況におけるスポンサーの関係を考慮に入れて、スポンサー付事業体がGIINを取得した場合であっても自身をスポンサー付事業体として宣誓することを認め、またLine 9aでのGIINの開示を義務付ける。新様式では、スポンサー事業体のGIINをパートIV「スポンサー付FFI」、およびパートXXVIII「スポンサー付直接報告金融機関以外の外国事業体(Non-Foreign Financial Entity:以下「NFFE」)」に列挙するための欄が設けられた。

3. 様式の更新

前述の重要な更新に加えて、その他の更新を各パート別に記載する。

(1)     様式パートI

Line 4の第3章ステータスに「International Organization」(国際機関)を追加。

Line 5の第4章ステータスの修正は以下のとおり。

  • 不参加FFIの括弧書きの文言のうち「Registered Deemed Compliant FFI」(登録みなし遵守FFI)を「Deemed Compliant FFI」(みなし遵守FFI)に変更するとともに「Exempt Beneficial Owner」(免除受益者)を追加
  • 登録みなし遵守FFIの括弧書きの文言から、パートXIIで取り扱う報告免除政府間協定(Intergovernmental agreement:以下「IGA」)FFIを除外
  • スポンサー付FFIを参照する際に付されていた「that has not obtained GIIN」(GIIN未取得の)の文言を削除
  • 以前は該当するモデル2 IGAに基づき登録みなし遵守FFIとみなされるFFIを含んでいた報告免除IGA FFIの括弧書きを削除
  • 第4章ステータス「Account that is not a financial account」(金融口座以外の口座)を追加。財務省規則§1.1471-5(b)(2)に基づき対象外とされる口座となる

(2)     様式パートII

パートIIの見出しの記入要領に、「Complete only if a disregarded entity with a GIIN or a branch of an FFI in a country other than in the FFI’s country of residence」(FFIの居住国以外の国におけるGIINを有するみなし事業体、あるいはFFIの支店の場合のみ記入すること)の下線部を追加。

(3)     様式パートIII

適用される租税条約に含まれるLOB条項の種類を示す10個の新規のチェックボックスを14bの欄の下に追加(前述)。

受益者が租税条約の恩典を申請する「dividend」(配当)に関して、14cの欄の文言に「US source」(米国源泉の)を追加。

「Explain the additional conditions in the Article the beneficial owner meets to be eligible for the rate of withholding」(受益者が当該源泉徴収税率を認められるために満たす租税条約の条文の追加の条件の説明)を事業体に義務付けるようLine 15「特別源泉徴収率および要件」の文言を修正。

(4)     様式パートIV

Line 16にスポンサー事業体のGIIN用の欄を追加。

Line 17の宣誓文言を簡易化し、以前は事業体が「is an FFI solely because it is an investment entity」(投資事業体であることのみを理由としてFFIに該当するFFI)であることを義務付けていたが、今後は「is an investment entity」(投資事業体)であることのみを義務付ける。

(5)     様式パートVII

Line 21の欄括弧書きをdetermined as if the FFI were a participating FFIとし、スポンサー事業体が履行すべき本人確認、源泉徴収、および報告の義務が、FFIが参加FFIであると仮定して判定される旨を注記。関連インストラクションもこれに伴い更新されている。

(6)     様式パートX

Line 24aの宣誓に以下を追加:

事業体が「Does not have any specified US persons that own an equity interest or debt interest (other than a debt interest that is not a financial account or that has a balance or value not exceeding $50,000) in the FFI other than those identified on the FFI owner reporting statement」(FFI所有者報告書上で識別されるFFI以外において資本または債権持分(金融口座でない、または50,000ドルを超えない残高または価値を有する債権持分を除く)を所有する特定米国人を有していない)。

Line 24bの宣誓に以下を追加:

事業体が「Has provided, or will provide, valid documentation meeting the requirements of §1.1471-3(d)(6)(iii) for each person identified in the FFI owner reporting statement」(FFI所有者報告書で識別された各個人や事業体について、財務省規則§1.1471-3(d)(6)(iii)の要件を満たす有効な本人確認書類を提出した、または提出する)。

(7)     様式パートXII

Line 26を拡張して、FFIの取扱いを正当化する理由を示す際に「treasury regulations」(財務省規則)を含む適用されるIGAを示す2個のチェックボックスを追加し、また受託者開示信託およびスポンサー付事業体に関する新規箇条書きを追加。

(8)     様式パートXIV

国際機関に関するLine 28の2番目の箇条書きの文言に、外国政府との有効な本部協定が存在する機関を含める旨を追加。

(9)     様式パートXXVIII

Line 42にスポンサー事業体のGIIN用の欄を追加。

(10)     様式パートXXIX、XXX

パートXXIXとパートXXXを入れ替えて、本版のパートXXIXは「Substantial US Owners of Passive NFFE」(受動的NFFEの実質的米国人所有者)、パートXXXは「Certification」(宣誓)とする。

修正したパートXXIXに文言を追加し、NFFEは報告モデル1 FFIまたは報告モデル2 FFIに本様式を提出する際に、適用されるIGAに基づき米国支配者を列挙することができるとする。

4. インストラクションの更新

様式の更新に対応して、また以前は不明確であったセクションを明確化するため、様式W-8BEN-Eのインストラクションに以下の更新が加えられた。

条約の恩典に関する恩典制限(LOB)条項:

「What’s New」(最新情報)セクションで明示されているとおり、本インストラクションでは、事業体が条約の恩典を申請するためには条約締結国の居住者であり、所得の受益者であり、かつ恩典を申請する根拠となる条約の恩典制限(LOB)条項を満たさなければならないとしている。納税者がLOBテストのうちの一つを満たしたか、または条約の恩典の対象である旨の有利な裁量的決定を米国の権限ある当局から得たかのいずれかを宣誓するため、前述のパートIIIのLOBのチェックボックスのうちの一つをチェックしなければならない。これらのテストは、本インストラクションの10ページおよび11ページに概述されているが、関連するテストが恩典を申請する根拠となる条約に含まれている場合のみ、ボックスをチェックできる点に注意されたい。

報告免除IGA FFI:

これも「What’s New」(最新情報)セクションで明示されているが、IGAとFATCA財務省規則間の調整を目的として、報告免除IGA FFIが本様式に適切に記入するためのインストラクションが改訂された。8ページで更に説明されているとおり、IGAに基づき報告免除に該当する報告免除IGA FFIは、みなし遵守ステータスの資格を満たすか、または第4章に基づく免除受益者である場合であっても、「nonreporting IGA FFI」(報告免除IGA FFI)にチェックしなければならない。

「disregarded entity」(みなし事業体)の定義を拡張し、自身のGIINを有するみなし事業体は、その外国人所有者に、本様式のパートIIにすべて記入させなければならないと注記。「is not otherwise able to fill out Part II (i.e. because it is in the same country as its single owner and does not have a GIIN)」(別の理由でパートIIに記入できない(すなわち、その単独の所有者と同じ国に居住しGIINを有さないため))外国人所有者を有する場合、FATCAの適用上本様式をFFIに提出することができ、自身が受益者である場合と同様にパートIに記入しなければならず、またLine 3に記入してはならない。

Line 1のインストラクションに「tip」(参考)のパラグラフを追加し、口座所有者であることの立証のみを目的として本様式を提出し、かつ源泉徴収の対象となる支払または報告対象となる金額を受け取っていない口座所有者は、「should complete Part I by substituting the references to ‘beneficial owner’ with ‘account holder’」(「受益者」を「口座所有者」と置き替えてパートIに記入しなければならない)とした。

Line 9aのインストラクションを明確化し、支店が米国支店または制限支店でない限り、パートIIでの特定を義務付けられた支店についてLine 9aにおいてGIINを提供する必要はないとし、GIIN取得済みのスポンサー付事業体にGIINの記載を指示する行を追加。

Line 9aのインストラクションの後に「tip」(ヒント)のパラグラフを追加し、これらの欄がGIINまたは外国納税者番号(TIN)(うち該当するもの)が収まる十分な大きさでなければならないとした。ただし、GIINまたはTINが収まらない場合、他より小さいフォントを使用するか、本様式のほかの場所、または添付されていることが明確であるならば添付書類を示し明確に判別して記入することができる。「For example, a handwritten GIIN located just outside of line 9a with a corresponding arrow pointing to line 9a is a properly provided GIIN for this purpose.」(例えば、Line 9aのすぐ外側にLine 9aを指す矢印とともに手書きのGIINがあれば、これはこの目的のために適切に記載されたGIINとなる)。

パートIIの見出しの下に「tip」(ヒント)のパラグラフを追加し、源泉徴収の対象となる支払を受け取るみなし事業体が自身のGIINを有している場合、パートIで特定される単独の所有者と同じ国に居住しているか否かにかかわらず、パートIIに記入しなければならない旨を指示。

Line 16にスポンサー事業体のGIINを記入する旨のインストラクションを含め、またスポンサー付FFIのGIINに関する「note」(注意)を修正して、2017年1月1日まではGIINの取得を義務付けられないが、GIIN取得済みの場合はこれをLine 9aに記入しなければならないことを明確化。

Line 26のインストラクションを変更し、報告免除のカテゴリーを記載する際、ステータスを規定するIGAからの文言の使用を義務付け。所有者開示FFIがその旨の宣誓を行いパートXに記入する指示を含めた。また「If you are a nonreporting IGA FFI and you have registered and received a GIIN and have not provided it in line 9a because your trustee's or sponsor's GIIN is in line 9, you should provide it here.」(報告免除IGA  FFIであり、かつ登録済み・GIIN取得済みであるが、受託者またはスポンサーのGIINが9の欄にあるため9aの欄にGIINを記載していない場合、ここに記載しなければならない)とする「note」(留意事項)を追加。

Line 42にスポンサー事業体のGIINを記載する指示を含めた。

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