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FATCAに係る宣誓期限延長及び宣誓案の公表

国際税務 QI/FATCA/CRS関連情報

本ニュースレターでは、2018年3月16日に米国内国歳入庁より期限の延長が公表された、FATCAに係る既存口座の宣誓及び定期的に求められるコンプライアンスに関する宣誓について説明する。(国際税務QI/FATCA/CRS関連情報/2018年3月26日)

2018年3月16日、米国内国歳入庁(Internal Revenue Service:以下「IRS」)は、FATCAに係る既存口座の宣誓(Certification of Pre-existing Accounts:以下「COPA」)及び定期的に求められるコンプライアンスに関する宣誓(Periodic Certification:以下「定期的宣誓」)について、期限の延長と宣誓の内容を示すFATCA宣誓案(Draft FATCA Certification)を(IRSウェブサイト(英語))において公表した。

1. 宣誓期限の延長

FATCAに係る宣誓の期限は、当初2018年7月1日とされていたが、FATCAポータルサイト(IRSウェブサイト(英語))において宣誓に関する機能が実装され、宣誓が可能となるのは、2018年7月1日以降となり、宣誓の対象となるFFIは、実装から宣誓まで少なくとも3カ月の猶予期間が設けられることが示された。したがって、宣誓期限は2018年10月1日以降に延長されることとなった。なお、実装が遅れた場合には、宣誓期限も併せて遅れることとなる。

2. FATCA宣誓案の内容

FATCA宣誓案は、IRSのポータルサイトで外国金融機関(Foreign Financial Institution:以下「FFI」))として登録したFATCAステータス毎に異なるものが用意されている。COPAでは、既存口座の本人確認手続完了に加え、租税回避ほう助不存在の宣誓が含まれている。定期的宣誓は、現在の制度が続く場合には、今後も3年に1度宣誓が必要となる。

(1) COPA

COPAに関しては、以下の5つの宣誓案が公表された。

① Participating Foreign Financial Institution (Including Reporting Model 2 FFIs)1
② Consolidated Compliance Group2
③ Registered Deemed-Compliance FFIs – Local FFI3
④ Registered Deemed-Compliance FFIs – Restricted Funds4
⑤ Sponsoring Entity of Sponsored FFIs5

1 参加FFI(報告モデル2 FFIを含む):FATCAに関する協定がない国のFFI及び日本、香港、スイス等のモデル2協定締結国のFFIが該当。日本の金融機関で最も一般的なFATCAステータス。

2 連結コンプライアンスグループ:連結コンプライアンスグループを構築している場合に該当。拡大関連者グループでリード、メンバーとして登録されていても、連結コンプライアンスプログラムを構築していないのであれば該当しない。日本では、一部の金融グループで採用されている。

3 登録みなし遵守FFI – ローカルFFI:財務省規則1.1471-5(f)(1)(i)(A)に規定される登録みなし遵守FFI。日米当局間声明のSmall Financial Institutions with Local Client Base(地域顧客基盤を有する小規模金融機関)として登録している日本の証券会社、地方銀行、信用金庫等も該当。

4 登録みなし遵守FFI – 制限ファンド:財務省規則1.1471-5(f)(1)(i)(D)に規定される登録みなし遵守FFI。日本では稀。

5 スポンサー付FFIのスポンサー事業体: FATCA上のFFIに該当するSPC、有限責任投資事業組合、証券投資信託等のファンド(スポンサー付投資事業体)について、FATCA対応を行うことを合意している場合に該当。日本でも多くの金融機関が、スポンサー付FFIのスポンサー事業体として登録している。

内容はそれぞれ異なるが、いずれも3つのセクションから構成されている。第1セクションはFFIについての情報(Identifying Information)、第2セクションは宣誓についての選択(Options for COPA)、第3セクションは宣誓(Certification)となっている。

1) FFIについての情報

FATCA責任者は、FATCAポータルサイトに登録したFATCA責任者の氏名、住所、その他の情報を確認し、それらの情報が最新でない場合には、更新することが求められている。また、FFIの事業内容について簡潔に記載する。

2) 宣誓についての選択

FATCA責任者は既存口座のデューデリジェンスについて、以下の3つの選択肢から1つ選択することが求められている。

i 既存口座のデューデリジェンスで求められる要件を満たしていることを宣誓する
ii 宣誓時点で、既存口座のデューデリジェンスで求められる要件を満たすことができないと判断する
iii 既存口座のデューデリジェンスで求められる要件を満たしていることの宣誓が不要と判断する

FATCA責任者が、上記ii又はiiiを選択した場合には、その説明を記載する。

3) 宣誓

内容は、FATCAステータスにより異なっている。参加FFI(報告モデル2 FFIを含む)、連結コンプライアンスグループ、スポンサー事業体については、以下の事項を含んでいる。

i 既存個人高額口座の本人確認を完了した
ii 既存個人高額口座の本人確認手続において、必要な書類がなく、FATCAステータスの特定ができなかった際に、非協力口座又は報告モデル2 FFIの場合には、不同意米国人口座として報告対象とした
iii 既存個人高額口座以外の既存口座の本人確認を完了した
iv 既存個人高額口座以外の既存口座の本人確認手続において、必要な書類がなく、FATCAステータスの特定ができなかった際に、非協力口座又は報告モデル2 FFIの場合には、不同意米国人口座として報告対象とした
v 一定の調査を行った上で、FFIの知り得る限り、宣誓対象期間(2011年8月6日からFFI契約の有効日から2年を経過した日)において、口座保有者がFATCAを回避するための公式又は非公式の一切のほう助を行っていない

FATCA責任者はこれらの宣誓ができない場合には、追加の質問への回答と、今後宣誓を行うための是正策を講じるかどうかについて等の質問を受けることとなる。
登録みなし遵守FFIであるローカルFFIと制限ファンドについては、以下の事項を含んでいる。

i 米国人口座及び不参加FFIを特定するために既存口座の本人確認を完了した
ii 米国人口座及び不参加FFIである口座保有者が特定された場合には、当該口座保口座を閉鎖又は他の金融機関に移管した、あるいはIRSへ報告する

(2) 定期的宣誓

定期的宣誓に関しては、以下の12の宣誓案が公表された。

① Participating Foreign Financial Institution (Including Reporting Model 2 FFIs)6
② Consolidated Compliance Group7
③ Registered Deemed-Compliance FFIs – Local FFI8
④ Registered Deemed-Compliance FFIs – Non-reporting Member of PFFI9
⑤ Registered Deemed-Compliance FFIs – Qualified Collective Investment Vehicle10
⑥ Registered Deemed-Compliance FFIs – Qualified Credit Card Issuer or Servicer11
⑦ Registered Deemed-Compliance FFIs – Restricted Funds12
⑧ Sponsoring Entity of Sponsored FFI13
⑨ Sponsoring Entity of Sponsored Direct Reporting NFFEs14
⑩ Sponsoring Entity of Sponsored FFIs and Sponsored Direct Reporting NFFEs15
⑪ Trustee Documented Trusts16
⑫ Direct Reporting NFFEs17

6 参加FFI(報告モデル2 FFIを含む):FATCAに関する協定がない国のFFI及び日本、香港、スイス等のモデル2協定締結国のFFIが該当。日本の金融機関で最も一般的なFATCAステータス。

7 連結コンプライアンスグループ:連結コンプライアンスグループを構築している場合に該当。拡大関連者グループでリード、メンバーとして登録されていても、連結コンプライアンスプログラムを構築していないのであれば該当しない。日本では、一部の金融グループで採用されている。

8 登録みなし遵守FFI – ローカルFFI:財務省規則1.1471-5(f)(1)(i)(A)に規定される登録みなし遵守FFI。日米当局間声明のSmall Financial Institutions with Local Client Base(地域顧客基盤を有する小規模金融機関)として登録している日本の証券会社、地方銀行、信用金庫等も該当。

9 登録みなし遵守FFI – 参加FFIグループの報告免除FFI:財務省規則1.1471-5(f)(1)(i)(B)に規定される登録みなし遵守FFI。日本では稀。

10 登録みなし遵守FFI – 適格集合投資ビークル:財務省規則1.1471-5(f)(1)(i)(C)に規定される登録みなし遵守FFI。日米当局間声明のCollective Investment Vehicle(集団投資ビークル)として登録している日本の有限責任投資事業組合、SPC、証券投資信託は、該当する可能性はあるが、現時点では未確認。

11 登録みなし遵守FFI – 適格クレジットカード発行者及びサービス会社:財務省規則1.1471-5(f)(1)(i)(E)に規定される登録みなし遵守FFI。プリペイド式クレジットカードを発行するカード会社等で、登録みなし遵守FFIとしてFATCAの登録を行っている場合には該当する可能性あり。日本では稀。

12 登録みなし遵守FFI – 制限ファンド:財務省規則1.1471-5(f)(1)(i)(D)に規定される登録みなし遵守FFI。日本では稀。

13 スポンサー付FFIのスポンサー事業体: FATCA上のFFIに該当するSPC、有限責任投資事業組合、証券投資信託等のファンド(スポンサー付投資事業体)について、FATCA対応を行うことを合意し、スポンサー事業体として登録している場合に該当。日本でも多数の金融機関がスポンサー付FFIのスポンサー事業体として登録している。

14 スポンサー付直接報告NFFEのスポンサー事業体:FATCA上のNFFEに該当する資産管理会社等について、FATCA対応を行うことを合意し、スポンサー事業体として登録している場合に該当。日本では稀。

15 スポンサー付FFI及び直接報告NFFEのスポンサー事業体:FATCA上のFFIに該当するファンド及びNFFEに該当する資産管理会社等について、FATCA対応を行うことを合意し、スポンサー事業体として登録している場合に該当。

16 受託者開示信託:FATCA上の登録を行う受託者が、信託との間でFATCA対応を行うことを合意している信託。日本では稀。

17 直接報告NFFE:財務省規則1.1472-1(c)(3)に規定され、支配者に米国人等がいた場合には、自身で報告を行うことや、FATCAポータルサイトで登録する等一定の要件をみなすNFFE。日本では稀。

定期的宣誓についてもCOPA同様、3つのセクションから構成されている。第1セクションは、FFIについての情報(Identifying Information)、第2セクションでは、宣誓についての選択(Options for Periodic Certification)、第3セクションは宣誓(Certification)となっている。

1) FFIについての情報

FATCA責任者は、FATCAポータルサイトに登録したFATCA責任者の氏名、住所、その他の情報を確認し、それらの情報が最新でない場合には、更新することが求められている。また、FFIの事業内容について簡潔に記載する。

いくつかの宣誓案においては、宣誓対象期間に合併や買収によりFATCA上の金融口座を取得した場合には、その内容を記載することが求められている。

2) 宣誓についての選択

FATCA責任者が以下の3つの選択肢から1つ選択することが求められている。

i コンプライアンスについての定期的宣誓を行う
ii 宣誓時点で、コンプライアンスについての定期的宣誓を行うことが出来ない
iii 宣誓対象期間について、定期的宣誓を行うことが求められていない

FATCA責任者が、上記ii又はiiiを選択した場合には、その説明を記載する。

3) 宣誓

宣誓内容は、FATCAステータスにより異なっている。宣誓案では、イエス・ノー形式の質問が複数含まれており、回答に応じ、次の質問に回答するようになっている。以下に、(2)定期的宣誓_12の宣誓案より日本の金融機関でも該当するケースが多い、3つのFATCAステータスの場合について、主な内容を参考までに記載する。

Participating Foreign Financial Institution(Including Reporting Model 2 FFIs)

有効な内部統制がある場合の宣誓と問題がある場合の限定付宣誓に分けて記載されているが、ここでは有効な内部統制がある場合の宣誓内容の一例を記載する。

  • 重大な不履行があったか
  • 契約不履行があったか
  • 宣誓時点で有効なFATCAコンプライアンスプログラムを構築しているか
  • FATCAコンプライアンスプログラムの有効性の確認と、宣誓対象期間についてFFI契約の要件を満たしていたことの確認のために定期的検証を実施したか
  • 意図的若しくは組織的に米国人口座を報告しなかったか
  • 意図的若しくは組織的にパススルー支払いの源泉徴収を行わなかったか
  • 意図的若しくは組織的に源泉税の納付を行わなかったか
  • 意図的若しくは組織的に不同意口座を報告しなかったか
  • 規制当局によりAML(マネーロンダリング防止)手続上要求される口座所有者の適切な本人確認を実施しなかったことにより、刑法/民法上の罰則もしくは措置が科されたか
  • 参加FFIが、そのFFI契約遵守に関連する潜在的かつ将来的な租税債務のために、財務諸表上において納税引当金又は税金費用の積立を行っている

③ Registered Deemed-Compliant FFIs – Local FFI

  • 財務省規則又はFATCAに関する協定(日米当局間声明)で規定されている、要件を満たしているか

Sponsoring Entity of Sponsored FFI

①の参加FFI・報告モデル2 FFIの定期的宣誓の内容と重複する部分が多くあるが、ここではスポンサー事業体において特に重要となる宣誓内容について記載する。

  • 各スポンサー付事業体とスポンサーシップ契約を締結しているか
  • スポンサー事業体としての要件を満たしているか
  • 各スポンサー付事業体はスポンサー付事業体としての要件を満たしているか
  • 各スポンサー付事業体の登録を行わなかったことがあるか

おわりに

FATCAポータルサイトで登録されている日本のFFIはすでに2万件に達している。それらのFFIが宣誓の対象となるが、十分なコンプライアンスプログラムを構築し、宣誓対象期間における検証を実施した上での宣誓が求められており、多くのFFIにおいて、宣誓に向けた対応が遅れている状況にある。そのような中、宣誓期限の延長がようやく公表されたのは朗報といえる。ただし、定期的検証の実施を含む宣誓準備には一定の時間を要することから、準備が遅れている場合には、早急な対応が求められる。

特にスポンサー事業体としての登録がある場合には、自身のFFIとしての宣誓・検証とは別に、スポンサー事業体としての宣誓・検証が必要となる。また、以前から課題として認識されていたが、対象となるスポンサー付事業体との間で、スポンサーシップ契約の締結が必要となることが、宣誓案において確認されている。未対応の場合には宣誓ができないということになるので、こちらについても早期の対応が必要となる。

デロイト トーマツ税理士法人では、今回公表された宣誓案の和訳や、最終的な宣誓の書式の和訳、宣誓回答案やポータル上での宣誓作業手順書を用意することを予定しており、宣誓を行う金融機関に対し全面的サポートを行う。また、既に多数の金融機関に対して、FATCA外部検証の実施や内部検証のサポートを実施しており、今でも多数のお問い合わせをいただいている。

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