ナレッジ

スポンサー付事業体の登録期限の延期等を含むIRS通知2015-66を公表

米国税務 QI/FATCA関連情報/2015年9月30日

2015年9月18日、米国内国歳入庁(IRS)は外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に関するいくつかの緩和措置を含むIRS通知2015-66を公表した。緩和措置の概要は、日本の金融機関にとっても非常に重要な内容が含まれている。(米国税務 QI/FATCA関連情報/2015年9月30日)

緩和処置の概要

(1) 米国源泉の利子または配当を生み出す資産の償還と売却、および外国パススルーペイメントに対する源泉徴収に関する経過措置を2年間延長
(2) 制限支店および制限FFIに関する経過措置を1年間延長
(3) スポンサー付事業体のIRS登録期限を1年間延長
(4) 担保資産に基づいて発生する支払に対する源泉徴収義務の緩和措置
(5) モデル1協定締結国との政府間情報交換に関する緩和措置

IRS通知2015-66は下記のハイパーリンクから入手可能である。

IRS通知2015-66 (IRSウェブサイト(英語、PDF))

1. 源泉徴収に関する追加経過措置

外国金融機関(Foreign Financial Institution:以下「FFI」)は非協力的口座所有者および不参加FFIへ源泉徴収の対象となる支払(Withholdable Payment)を行う場合、原則として30%の源泉徴収義務を負う。ただし、日本の金融機関については、日米共同声明に基づき、非協力的口座所有者への源泉徴収は免除される。また、現行の経過措置により、以下の支払は2016年12月31日までは源泉徴収の対象となる支払には含まれない。

(1) 米国源泉の利子または配当を生み出す資産の償還と売却
(2) 外国パススルーペイメント

IRS通知2015-66では当該経過措置を2年間延長すると公表した。したがって、日本の金融機関は2018年12月31日までは上記の支払を不参加FFIに行う場合でも源泉徴収義務は免除されることとなった。

2. 制限FFIおよび制限支店に関する追加経過措置

あるFFIの拡大関連者グループに属するFFIがその管轄区域の法によってFATCA遵守が禁止される場合、当該FFIが制限FFIとなることで、もう一方のFFIは不参加FFIとみなされずFATCA遵守が可能となる。また、あるFFIがFATCA遵守が禁止される管轄区域に支店を有する場合、当該支店を制限支店とすることで、当該FFIはFATCA遵守が可能となる。

現行の制度では制限FFIおよび制限支店は2015年12月31日までにFATCA遵守することが求められていたが、IRS通知2015-66では対応期限が1年間延長され、2016年12月31日までとなった。2015年12月31日以降はすべての制限FFIおよび制限支店のオンラインFATCAアカウントのステータスが「registration incomplete」となるため、当該制限FFIおよび制限支店のステータスを維持する場合には、FATCA登録システム上で再登録が必要となる。

3. スポンサー付事業体のIRS登録期限に関する追加経過措置

現行の制度ではスポンサー付事業体のIRS登録は2015年12月31日までに完了することが求められていたが、IRS通知2015-66において、IRS登録期限が1年間延長され、2016年12月31日となった。スポンサー付事業体のIRS登録機能は向こう数カ月で実装され、それに伴ってFATCA登録システムユーザーガイドも更新される予定である。

IRS登録期限の延長に伴い、スポンサー付事業体の本人確認を行うFFIは、2016年12月31日まではスポンサー事業体のグローバル仲介人番号(Global Intermediary Identification Number:以下「GIIN」)に依拠することが可能となった。2017年1月1日以降、米国源泉所得の支払者は以下のいずれかの方法でスポンサー付事業体のGIINを取得する必要がある。また、取得したGIINを90日以内にIRSが公表するFFIリストで照合する。

(1) スポンサー付事業体のGIINを使用した源泉徴収証明書(様式W-8)を徴求する
(2) 口頭または書面(電子メールを含む)でスポンサー付事業体のGIINを取得する。ただし、既にスポンサー事業体のGIINを含む源泉徴収証明書を徴求している場合に限り、さらに取得記録の保管が求められる

4. 担保資産に関する緩和措置

現行の制度では源泉徴収の対象となる支払には一定の条件を満たす債務(適用除外債務)に基づく支払、および適用外債務のために差し出された担保資産に関する支払は含まれない。担保資産が適用除外債務および適用除外ではない債務の両方のために差し出されたものである場合、適用除外債務のために差し出された担保資産部分を両債務の価値で案分することで判定しなければならない(案分ルール)。

現行の経過措置においては2016年12月31日までは債務が適用除外債務かどうかに限らず、すべての担保資産に関する支払は源泉徴収の対象となる支払からは除外されていた。

IRS通知2015-66ではFFIの担保資産管理の事務負荷軽減のための緩和措置を発表した。FFIは上記の案分ルールを使用する代わりに、担保資産をすべて適用除外債務ではない債務に関する担保として取扱い、すべての担保資産に関する支払を源泉徴収の対象となる支払として取り扱うことが可能となる。また、従来の案分ルールを適用することも可能である。

また、現行の制度では、適用除外債務を担保として差し出した場合、当該担保に関する担保権者から債務者への支払も適用除外債務に該当する。一方、当該担保権者が当該担保を第三者に再担保として差し出した場合、当該担保権者から当該債務者への支払はみなし支払として取り扱われ、適用除外債務ではなくなる。

IRS通知2015-66では、上記のみなし支払に関しても適用除外債務として取り扱われることとなる。この緩和措置によって、FFIは担保が再担保されたかどうか管理する必要がなくなり、担保管理の事務負担が軽減されることとなった。

5. モデル1協定締結国との政府間情報交換に関する緩和措置

現在、112の国・地域が協定締結国またはみなし協定締結国(現時点では米国政府とFATCAに関する政府間協定の締結には至っていないものの、協定の内容に既に大筋合意しており、政府間協定締結国とみなされる国・地域)として取り扱われている。しかし、多くのモデル1協定締結国またはモデル1みなし協定締結国においては国内の法律が施行されていない状況である。したがって、モデル1政府間協定で規定される2014年度を対象年度とする政府間情報交換を交換期限である2015年9月30日までに行うことは難しいのが現状である。

IRS通知2015-66では、その場合でも、当該協定締結国またはみなし協定締結国が、政府間協定を発行する堅い決意を示している場合には、当該国・地域に属する金融機関は引き続き政府間協定に基づくFFIとして取り扱われ、また、2014年度を対象年度とする政府間情報交換は2016年9月30日までに、2015年度分と合わせて行うことが認められることとなった。

また、既に政府間協定が発効された国・地域において、2014年度を対象年度とする政府間情報交換の期限内対応が実務的に間に合わない場合、以下の要件を満たすことを条件に政府間情報交換の期限延長が認められる。

(1) 2015年9月30日までに政府間情報交換の実施が間に合わないことを米国当局に通知する
(2) 早急に政府間情報交換を実施するために誠実な努力を行っていることを保証する

ただし、上記の政府間情報交換の期限に関する経過措置はあくまでも政府間に関するものであり、当該国・地域に属するFFIの現地当局への情報報告期限は国内の法律で別途規定されることに留意されたい。

PDF

こちらから記事の全文がダウンロードできます。

(312KB, PDF)

関連サービス

デロイト トーマツ税理士法人 米国税務サービスグループと有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループで協力体制を構築し、的確なFATCA対応サービスを提供します。また、IRS(米国内国歳入庁)と強力なコネクションを持ち、かつ国際税務・米国源泉徴収制度に豊富な経験を有するデロイトのFATCAグローバルチームとの連携により、米国税務およびIRSの最新の情報を入手し、迅速な対応を行います。

お役に立ちましたか?