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新QI契約案を含むNotice 2016-42の概要

米国税務 QI/FATCA関連情報/2016年9月5日

外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act:FATCA)の開始に合わせ2014年6月30日から有効となっている現在のQI契約(歳入手続2014-39に含まれる)は、2016年12月31日に失効する。このため、米国内国歳入庁(Internal Revenue Service:IRS)は通達2016-42において、2017年1月以降有効となる新QI契約案を公表した。(米国税務 QI/FATCA関連情報/2016年9月5日)

はじめに

外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act:以下「FATCA」)の開始に合わせ2014年6月30日から有効となっている現在のQI契約(歳入手続2014-39に含まれる。以下「2014年QI契約」)は、2016年12月31日に失効する。このため、米国内国歳入庁(Internal Revenue Service:以下「IRS」)は通達2016-42(以下「本通達」)において、2017年1月以降有効となる新QI契約案(以下「2017年QI契約案」)を公表した。本通達における変更は、修正を経て本年後半の歳入手続で最終版となり、2017年1月1日以降に発効するQI契約に適用される。本通達における重要点は、以下のとおり。

1. QI契約の締結・更新について

2. コンプライアンス手続について

3. 租税条約適用のための手続の変更

4. 適格デリバティブディーラー(Qualified Derivatives Dealer:以下「QDD」)に関する規定の整備

以下で、これらの概要を記す。

1. QI契約の締結・更新について

外国金融機関(Foreign Financial Institution:以下「FFI」)、米国金融機関および米国決済機関の外国支店、外国決済機関、ならびに一定のその他の外国事業体(Non-Financial Foreign Entity:以下「NFFE」)がQI契約を締結する資格を有する。属領金融機関および不参加FFIは、QI契約の締結を申請することができない。更なる適格要件は、参加FFIにおけるFFI契約の遵守など、外国(法)人のステータスによって定まる。一定の事業体は、QDD制度への参加のみを目的として、QI契約を締結することができる。

新たにQI契約締結を希望する者(一定のNFFEおよび外国中央銀行を除く)は、まず、FATCAポータルサイトにおいて、参加FFI、登録みなし遵守FFI、登録みなし遵守モデル1 IGA FFI、直接報告NFFE、または直接報告NFFEのスポンサー事業体としてのFATCAステータスに加えて、グローバル仲介人識別番号(Global Intermediary Identification Number:以下「GIIN」)を取得済みでなければならない。その後、QIとなるために、様式14345「適格仲介人・源泉徴収外国パートナーシップ・源泉徴収外国信託ステータス申請書」を提出し、QI契約を遵守するための適切なリソースおよび手続が存在することを立証しなければならない。QI申請が承認された場合、IRSは承認通知およびQI-EIN(QI Employer Identification Number)を付与する。新たなQI契約は3年間有効となり、承認された場合、以下のとおり発効する。

  • 3月1日以前にされた場合、同年1月1日付
  • 3月1日より後に締結され、申請者がまだ報告対象となる支払を受け取っていない場合、同年1月1日付
  • 3月1日より後に締結され、申請者が報告対象となる支払を受け取っている場合、承認月の1日付

既存のQIは、FFI、直接報告NFFE、または直接報告NFFEのスポンサー事業体である場合、FATCAポータルサイトを通じてそのQI契約を更新しなければならない。既存のQIが株主の代理でのQIとしての役割を果たしておらず、スポンサー事業体でもないNFFEである場合、FATCAポータルサイトでの手続ができないため、外国仲介人プログラムに更新申請を提出してQI契約を更新しなければならない。既存のQIがQDDとしての役割を果たすことも希望する場合、様式14345で義務付けられるすべてのQDD関連情報を含む補足文書を提出しなければならない。既存QIによる契約更新はすべて、2017年3月1日より前に行う必要がある。

2. コンプライアンス手続について

(1)  内部統制の宣誓 (Certification of Internal Control)

QI責任者(Responsible Officer:以下「RO」)は、定期検証を実施した上で、定期的に内部統制の宣誓を行わなければならない。2014年QI契約に含まれるコンプライアンス手続の影響に関し提起された懸念に対応するため、2017年QI契約案では、ROが当該内部統制の宣誓を行う目的で、定期検証の結果に加えて、合理的な手続、過程、または検証に依拠することを認めている。また、ROは、外部の検証人を使用するか、または内部の検証人を使用するか、およびそれらのスコープをどのようにすべきかを決定することができる。宣誓を行う上で、ROは、何に依拠したかを文書化し、当該文書を、QI契約が有効な期間維持しなければならない。

(2) 時期 (Timing)

QIは、宣誓対象期間の翌暦年の7月1日までに宣誓を行わなければならない。最初の宣誓対象期間は、2014年QI契約およびそれに優先する歳入手続が有効である3年目の暦年に終了する期間である。したがって、2014年6月30日が発効日である2014年QI契約を締結しているQIにおいて、最初の宣誓対象期間は2017年12月31日に終了するものとし、2018年7月1日までに宣誓の実施を義務付けられる。

(3) 定期検証 (Periodic Review)

QIは、内部統制の宣誓を行う際に、QI契約に基づく本人確認、源泉徴収、報告、およびQDD租税債務(該当する場合)の義務に関する一定の事実情報(factual information)を報告しなければならない。この事実情報については、2017年QI契約案 Appendix Iに規定されており、これらの情報の一部は、定期検証の一環として口座および取引のテストを通じて収集される。IRSは、「監査人(Auditor)」を「検証人(Reviewer)」に置き換え、定期検証を客観的に実施するための十分な独立性が存在する限り、定期検証を内部または外部の検証人が実施するようROが準備することができると定めることで、定期検証において財務監査またはその他の監査証明契約の基準を満たす必要がないことを明確化した。さらに、検証におけるQIの柔軟性を向上させるため、IRSは段階的な検証計画を公表せず、代わりに各QIが検証の目的を充足するための段階的な計画を作成することを求めている。

なお、事実情報の一部において、QIは、宣誓の時点および宣誓対象期間に有効なQIコンプライアンスプログラムを構築していることが求められているので、未構築の場合には早急な対応が必要となるので留意されたい。

(4) サンプリング (Sampling)

定期検証の対象とする口座について、2017年QI契約案 Appendix IIにおいて一定のサンプリング方法を規定している。50以上のQI対象口座を有するQIは、少なくとも50の口座を検証しなければならない。一方で、QIの有するQI対象口座が50未満の場合、そのすべてを検証しなければならない。検証担当者は、サンプリング方法を記録し、サンプルを再構成できなければならない。

(5) 免除 (Waiver)

一定の状況において、QIは定期検証の免除を申請することができるが、承認された場合であっても、定期的な宣誓とともに一部の事実情報の提出を義務付けられる。検証免除の申請が認められるために、QIは、以下のすべての要件を満たす必要がある。

  • QIが、FFIであり、QDDを選択していない
  • QIに関する連結コンプライアンスプログラム(Consolidated Compliance Program)の一員でない
  • 宣誓対象期間内の各暦年について、報告対象金額が500万ドル(5,000,000 USD)を超えていない
  • 宣誓対象期間内の各暦年について、期限内に様式1042、1042-S、945、1099および8966を提出済みである
  • 2017年QI契約案のセクション10.02および10.03に基づきすべての定期的な宣誓および定期検証に加えて、FATCAに従い義務付けられるすべての宣誓を完了している

QIは、ROが内部統制の定期的な宣誓を行う時点で免除申請を行うこととなる。IRSが免除を承認しなかった場合、QIは、定期検証実施のため不承認の日から6カ月間の延長を受けることができる。

(6) 時期 (Timing)

宣誓期間の最終年度に定期検証を実施することの困難さ(例:すべてのQIが同時に定期検証を実施することによるリソースの制約)に関するコメントに対応して、2017年QI契約案では、QIが誓約対象期間のどの年度(2015年、2016年、2017年)に定期検証を行うか選択可能としている。ただし、QIがQDDとしての役割も果たす場合、最初の定期検証は2017年に限定されており、選択は不可となっている。

3. 租税条約適用のための手続の変更

財務省およびIRSは、源泉徴収義務者が受益者による租税条約の恩典の申請に関する一定の情報および宣誓を収集することを義務付けるよう、内国歳入法第3章に基づく財務省規則を修正する予定である。これに沿って、2016年4月に発表された様式W-8BEN-Eは、該当する条約の恩典制限(Limitation on Benefits Article:以下「LOB」)規定に関する受益者の宣誓を含めるよう改訂された。同様に様式1042-Sは、対応するLOBコードを報告する欄を含めるよう改訂されている。

このため、2017年QI契約案では、口座所有者の条約に基づく恩典の申請を裏付ける目的で、QIが事業体からLOB情報を収集するよう義務付ける(すなわち、改訂後の様式W-8BEN-E、または証拠書類および租税条約表明文書)。租税条約に基づく軽減源泉税率を申請する事業体口座所有者の本人確認のために証拠書類を使用するQIは、より詳細なLOB情報を含めた租税条約表明文書を収集しなければならない。この情報収集の期限は、以下のとおり口座のステータスによって定まる。

  • QIが2017年1月1日以降に事業体口座所有者のための口座を開設する、または本人確認書類を取得する場合、QIは新たなLOB情報を収集しなければならない
  • 口座が証拠書類により本人確認された既存口座の場合、QIは、2019年1月1日までにLOB情報を収集しなければならない(この日付より前に、QIが訂正済みの情報を取得することを義務付けられる状況の変化がある場合を除く)
  • 口座が様式W-8により本人確認された既存口座の場合、当該様式は、その通常の有効期間まで依拠することができる(この日付より前に、QIが訂正済みの情報を取得することを義務付けられる状況の変化がある場合を除く)

(1) 認識基準 (Standards of Knowledge)

2017年QI契約案では、新たにQIはLOBの申請に関して、事実の認識に従うことを求めている。加えて、条約に基づく恩典の申請の検証に関して、口座所有者(個人と事業体の両方)が、存在しない、または有効でない条約、よってIRSが維持管理する米国が租税条約を締結している国のリストに含まれない国の居住者について、条約に基づく恩典の申請があった場合、QIは条約に基づく恩典の申請が信頼性または正確性に欠けると知り得るものとみなされる。このルールの適用は、以下のとおり口座のステータスによって定まる。

  • 有効な本人確認書類をQIが既に所有している既存口座について、原則的に状況の変化の発生時のみ適用される
  • 既存事業体口座について、義務付けられた書面のLOB表明文書をQIが取得した際にも適用される
  • すべての新規口座について、口座開設時に適用される

4. 適格デリバティブディーラー(QDD)に関する規定の整備

2017年QI契約案には、2015年9月に公表された暫定規則および規則案で発表され、一定のQIが特定の要件および義務に従いQDDとしての役割を果たすことを認める新たな規定が含まれる。

本通達および2017年QI契約案では、2015年9月17日付の暫定規則§1.871-15T(q)および§1.1441-1T(e)(6)で公表されたとおり、871条(m)に基づくみなし配当支払に適用される新たなQDD制度を施行するための実質的なガイダンスおよび運用手順も規定する。QDD制度は、QIが仲介人ではなく契約当事者として871条(m)取引に関する支払を受け取るか支払う場合に適用され、QDDであるQIはそれらの支払に対する第一義的源泉徴収義務、報告義務、みなし配当支払の支払金額に対する受取金額の超過分の納税義務等を負うこととなる。なお、QDD制度の導入によって適格証券貸付業者制度(QSL制度)は廃止されるため、QDD制度に置き換えられる。

おわりに

今回公表されたものは、現時点では案でしかないが、年内に、最終化され2017年から対応が求められる。2014年QI契約ではなかった、検証の免除申請が公表されたのは、多くの証券会社にとって朗報といえよう。ただし、現時点でまだQIコンプライアンスプログラムの構築が未了の金融機関が存在しており、それらの金融機関は、現状のルールどおりであれば、免除申請が認められない可能性がある。免除申請の対象とならない、金融機関についても、QIコンプライアンスプログラムの構築が未了の場合には、検証の際およびQI責任者の宣誓の際に問題を生じる可能性があるので、早期の対応が求められる。

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