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米国税制改正:連邦源泉徴収税制の改正

米国税務:2018年2月6日

2017年米国税制改革法(P.L. 115-97:以下「税制改革法」)は、2017年12月22日にトランプ大統領の署名により成立した。本税制改革法により、2018年1月1日以降の支払については、一部源泉徴収税率が変更されており、日本の金融機関、投資家等にも影響があることから、ここでは米国源泉徴収への主な影響について概要を記す。

1. 背景

一般的には、以下のようなケースで、米国源泉徴収が義務付けられる。

  • 支払人(Payor)は、米国人または米国人と推定される受取人(Payee)の本人確認ができない場合、または米国内国歳入庁(Internal Revenue Service:以下「IRS」)からの要請がある場合に、バックアップ源泉徴収が必要となる
  • 源泉徴収義務者(Withholding Agent)は、米国非居住者・非居住法人(Foreign Person)に対して所得の支払いを行う場合に、源泉徴収が必要となる
  • パートナーシップ(Partnership)は、米国事業活動に実質的に関連する所得(Effectively Connected Income:以下「ECI」)が発生した際、源泉徴収が必要となる
  • 源泉徴収義務者は、米国不動産持分またはパートナーシップ持分の譲渡があるときに源泉徴収が必要となる

源泉徴収義務と源泉徴収税率は、所得・受取人の種類や受取人より提出された本人確認書類など多くの要因によって決定される。受取人の本人確認書類については、一般的に、米国人が様式W-9、米国非居住者・非居住法人が様式W-8を使用する。源泉徴収の対象となるいかなる所得の管理、受取、保管、譲渡または支払を行う場合には、源泉徴収義務者に該当する。

2. 源泉徴収税率の変更

(1) バックアップ源泉徴収

利子、配当、サービス、ロイヤルティー、総収益等の源泉徴収の対象となる支払を、米国人または米国人と推定される者に支払を行う者は、米国納税者番号(US TIN)を記載したW-9を受領できない場合、またはIRSから要請がある場合には、バックアップ源泉徴収の実施が義務付けられている。バックアップ源泉徴収の税率は、個人所得税率と連動しており、税制改正により、従来の28%から2018年1月1日以降の支払については24%に変更となった。

(2) 米国非居住者・非居住法人の源泉徴収

米国非居住者・非居住法人に対する支払については、一般的に内国歳入法第3章及び第4章(FATCA)に基づき、定期定額所得(FDAP所得)が源泉徴収の対象となる。

有効な本人確認書類(通常は様式W-8シリーズ)が提出されていない場合に、源泉徴収義務者は、一般的に当該支払いのうち30%を源泉徴収しなければならない。有効な本人確認書類が提出されている場合には、適用される租税条約または免税規定(例:ポートフォリオ利子)に基づき、税率が軽減される場合がある。

非居住者・非居住法人の源泉徴収税率の30%は税制改革法による変更はない。

(3) 実質関連所得の源泉徴収

ECIがあるパートナーシップは、米国非居住者・非居住法人であるパートナーに配賦可能な実質関連所得について源泉徴収が義務付けられている。

実質関連所得についての税率は、所得の種類によって決定された最高税率が一般的に適用される。なお、受取人が法人であるか否かは問わない。税制改革法によって、以下のとおり税率は変更された。

事業体の種類

外国法人受取人

外国非法人受取人
(個人、複合信託)

2018年1月1日より前の税率

経常利益

35%

39.6%

長期キャピタルゲイン

35%

20%

セクション1250所得

35%

25%

2018年1月1日以降の税率

経常利益

21%

37%

長期キャピタルゲイン

21%

20%

セクション1250所得

21%

25%

 

3. 源泉徴収義務

(1) 外国人によるパートナーシップの譲渡

税制改革法により、新たに内国歳入法第864(c)(8)(以下:「第864(c)(8)」)及び内国歳入法第1446(f)(以下、「第1446(f)」)が追加された。

第864(c)(8)には、米国非居住者・非居住法人がパートナーシップ持分を売却したときの損益が、ある一定の制限を超えない範囲で実質的に関連しているとされる扱いが定められている。新たな第1446(f)には、パートナーシップ持分の譲渡による利益が第864(c)(8)に基づき実質関連所得とされる場合に、外国納税者及び本人確認書類が有効ではない米国納税者が当該持分を売却または譲渡したときの源泉徴収要件の調整項目が定められている。非外国人である旨の宣誓供述書の提出を受けており、偽証罪の制裁のもと、米国納税者番号及び譲渡人が外国人ではない旨が表明されている場合には、源泉徴収は不要である。

源泉徴収は被譲渡人(買収者)が行う必要がある。被譲渡人が必要額の源泉徴収を行わなかったときは、パートナーシップが、被譲渡人が源泉徴収を行わなかった額(当該金額に適用される利息を加算)と同額の税金額を、被譲渡人に対する分配金から差し引いて源泉徴収する必要があるとされている。

上記のようなパートナーシップ持分の譲渡に対して適用される源泉徴収税率は、2018年1月1日から10%となる。売却による利益の額に関係なく、譲渡によって認識される額(すなわち、実質的な総収益)に対して源泉徴収が必要となる。2017年12月29日に公表された内国歳入庁通知2018-08によると、更なるガイダンスが公表されるまで、上場パートナーシップの持分を売却または譲渡する際の源泉徴収は延期とされた。しかしながら、当該通知は非上場パートナーシップ持分には適用されない。したがって、当該事業体からの分配金に対しては、関連する源泉徴収が適用される。

源泉徴収の報告方法については、いまだ明らかにされていないことから、今後、ガイダンスがIRSから公表されることが見込まれている。その間に、納税者は今回の変更による影響を査定し、あらゆる譲渡に対しての対応策を計画することをお勧めする。

おわりに

日本の金融機関で、適格仲介人(QI)契約を締結している場合には、米国投資を行う顧客に対する源泉税率が変更となるケースがあるので、留意されたい。また、米国パートナーシップや米国不動産等へ投資を行っている場合も、実質関連所得の税率が変更となっていることから、適切な税率が適用されているか確認されることをお勧めする。

デロイト トーマツ税理士法人では、米国にて豊富な経験を有する米国税務の専門家が多数在籍しており、日本において、米国投資や米国での事業展開についてのアドバイスや米国での連邦・州税の申告書作成サービスを行っている。今回の税制改革についても詳細な分析を行っており、米国、日本の双方で万全のサポート体制を確立している。

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