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米国税制改正案「Tax Cuts and Jobs Act」の現状

米国税務:2017年12月12日

法人税の大幅減税を含め多岐にわたる改正が検討されているが、本ニュースレターでは、日系企業が特に注目している2つの改正案について説明する。(米国税務:2017年12月12日)

米国連邦議会下院が米国時間11月16日、上院は12月2日にそれぞれ異なる税制改正案を可決し、昨年から続く改正手続は最終段階に入ってきた。下院案可決前の時点では年内の法律成立を予想していた専門家は少数派であったが、年内、場合によってはクリスマス前に法律が成立する可能性も十分考えられる状況になってきた。法人税の大幅減税を含め多岐にわたる改正が検討されているが、ここでは日系企業が特に注目している2つの改正案について説明する。

1. 上院の「Base Erosion Minimum Tax(税源侵食税)」及び下院の「Excise Tax(物品税)」

国外関連者への支払額に20%を課税するという下院の物品税への対案として、上院ではより影響が限定的な税源侵食税が可決されている。税源侵食税は下記の計算で算出され、法人税率が20%になることを想定した場合、国外関連者への支払額が課税所得額を超える場合(税額控除を適用している場合にはそれ以下であっても)には特に留意が必要になると思われる。

① 

(通常課税所得 + 国外関連者への支払額(減価償却資産購入額は含むが、棚卸資産及び源泉税課税済みの支払額は含まず))x 10%(2026年以降は12.5%)

② 

通常課税所得 x 法人税率 - 税額控除(2025年度まではR&D控除は含まず)

 

税源侵食税 = ① - ②

なお、上院案の可決に先立ち、下院では国外関連者への支払に対する20%の物品税を可決しており、こちらは選択により外国税額控除が認められるものの、上院の税源侵食税と比べ税額、対象法人ともにより大きな影響が予想される。下院の物品税は売上原価に含まれる支払額も対象とした衝撃的な内容であり、他方、取引先関連外国法人が米国でPE課税を選択することで米国法人への課税が回避できる等、非常に斬新なアイデアも取り込まれている。ただし、本稿執筆時点においては、一部の専門家は同下院案が最終法制化される可能性を高くないとみているようである。

2. 全世界課税方式からテリトリアル課税方式への変更とみなし配当課税

国外子会社の利益への課税方法について、米国は全世界課税方式を採用するG‐7で唯一の国となっている。OECD加盟国を例にとっても、主要加盟国のほぼすべてがテリトリアル課税方式を採用している中、米国もかねてより自国が採用している全世界課税方式が時代遅れの課税方法であることを認識していた。インバージョン等の租税回避対策や米国への資金還流奨励も背景に、今回の税制改正では上院、下院ともにテリトリアル課税方式への変更をサポートしており、同方式が最終法律化することは既定路線となっている。

全世界課税とテリトリアル課税の違いを一言にまとめれば、国外子会社の利益に対する米国での課税有無となる。現行の全世界課税方式の下では、米国法人が外国子会社から配当を受け取った時点において米国で課税を受けるため、米国企業の多くは外国子会社での再投資を理由に配当の実施を抑えていた。今後テリトリアル課税方式に変更後は、一部例外を除き、10%以上保有する外国子会社からの配当は米国で免税となるため、この点については産業界もおおむね歓迎しているようである。

一方で、テリトリアル課税方式に変更するに当たり、外国子会社に留保される累積未配当利益について一律課税を行うという追加課税条項も含まれている。共和党は2004年のブッシュ政権時代にも外国子会社配当について一部配当免税を導入したが、実際に配当が行われなければ課税もされなかったため、想定には程遠い資金しか米国に還流されなかった。今回は強制的に課税されるため、米国へ多額の資金還流が予想される。具体的には、特定の外国子会社の1986年以降の累積国外未配当利益について、上院案では14.49%(外国子会社の総資産に占める現金及び流動資産の割合について)と7.49%(同それ以外の割合について)、下院案では各々14%と7%で課税を受ける。両院案ともに間接外国税額控除は認められるものの、状況次第で課税額は多大となり、8年間の分割納税方法が用意されているが、納税資金を含め多額の資金が米国に還流し、米国内投資が活性化することも期待されている。なお、未配当利益の確定基準日には過去の日付も含まれているため、残念ながら今後の配当による課税対象額の軽減は見込めない。

多くの米国大企業は繰延税金の見直しを喫緊の課題と認識し、既に作業に着手しているところも多いようである。見直し作業自体が時間を要するものだが、中でも、国外未配当利益に係る影響額試算には米国税務上の未配当利益(E&P)計算等が必要となり、過去E&P計算を行っていなかった場合など、多大な時間を要する場合も考えられる。本ニュースレター執筆時点では税制改正案が年末までに法制化される可能性も十分あるため、2017年12月期の財務諸表については、できる限り前倒しに対応されることが推奨される。

3. おわりに

デロイト トーマツ税理士法人では、米国にて豊富な経験を有する米国税務の専門家が多数在籍しており、日本において、米国投資や米国での事業展開についてのアドバイスや米国での連邦・州税の申告書作成サービスを行っています。今回の、税制改革についても、米上下両院の法案一本化への協議を踏まえ詳細な分析を行っており、2018年2月に東京、大阪において米国デロイトの専門家も招き、米国税制改革についてのセミナーの開催を予定しています。セミナーの参加方法等については近日中にホームページほかにて掲載を予定していますので、ご興味のある方はぜひ参加をご検討ください。

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